2分で読める武士道 第32回「ChatGPTを手に入れた私たちがこれから学ぶべきこと。」

2023/03/22

2分で読める武士道
世界中で注目されている日本人特有の性格や行動の数々。
それらの由来は武士道精神にあった。
しかし、肝心の日本人にその武士道精神が浸透していないのが日本の現状である。

筆者が外国生活を通して感じた日本人の違和感を「武士道」や「葉隠」などの武士道関連文献をもとに紐解いていく。

 

 

 

 

 第32回 ChatGPTを手に入れた私たちがこれから学ぶべきこと。 

誰も彼も、気が短いために大事を成し遂げられず、挫折することがある。いつまでもいつまでもと思っておりさえすれば、気長なようでありながら、かえって早く成し遂げられるものである。好機がおのずと訪れるのである。今から十五年先を考えて見たまえ。想像しただけでも、世の中は変わっていることだろう。未来記などという予言の書物もあるが、(我々に想像できる変化と)さほど変わることはあるまい。今現在御役に立っている者たちは、十五年過ぎれば一人もいなくなる。今若手である者たちが頭角を現すとしても、(その働きは)今の(ご家来衆の)半分にさえ足りないだろう。
(葉隠(上)講談社学術文庫 )

今年に入ってChatGPTがビジネス界、学術界で話題になっている。これまでGoogleで1時間かけて調べ上げたものがChatGPTを使えば10秒で済んでしまうのだから、レポート作成に追われる学生にとっては願ってもないツールが開発されたものである。

ChatGPTが主に活躍するのは調べものや文章の作成なので、プレゼンテーションやレポートの作成にもってこいなのだ。さすがにパワーポイント資料を作成してくれるところまで発達はしていないが、簡単な表なら作成可能なので、比較調査結果をChatGPTに表にしてもらい、その表をコピペすれば簡単にパワーポイント資料ができる。また商品の説明やスローガン、コラム作成も可能で、達人レベルになるとホームページの作成もできてしまうので、社員に対してChatGPTの学習を推奨している企業も少なくない。
しかし、このツールが世界的にここまで話題になると会社だけでなく学校側も黙ってはいない。ただし学校の場合は企業とは逆で学生のChatGPTへの依存を危惧している。たとえば香港でも香港大学を始めとするいくつかの大学ではすでに生徒のChatGPTの使用を全面禁止としたくらいだ。

学校がここまでする理由はChatGPTはデータの信ぴょう性に課題があるからだ。現時点でChatGPTが提供できるほとんどの情報が2021年までのデータとなり、情報によっては2020年止まりのものもある。これによって間違った情報を手に入れ、鵜吞みにし、拡散してしまうということも十分に考えられ、この点が大学での使用制限が議論される一番の要因となっているようだ。

ChatGPTのある生活で私たちがするべきことはただ一つ。毎朝スマホを手に取ってChatGPTに質問をすることである。そして数秒後には答えはすべてスマホ上に映し出されるのだ。こうなるともう私たちが自らの脳みそで学ぶこと、考えることなんて何もないように思えるが、そうは問屋がおろさない。私たちがこれから学ぶべきことはいかに正確にAIに情報をインプットするかというところである。AIは人間よりも圧倒的にアウトプットに優れているが、かれらは自分たちで情報をインプットすることができない。なので、人間が不明確だったり間違った情報をAIにインプットすると永遠に正しい答えは返ってこない。そしてこのことが若者たちの未来を難しくさせる。なぜなら学校の先生も会社の上司もAIへの正しい質問の仕方については教えてくれないからだ。

ChatGPTを正しく使えば一日8時間かかった仕事を4時間で終わらせてくれるのも事実だが、ではこの余った4時間で好きなことができるのかというと…そうはいかない。4時間早く終わったので次の仕事に今から取りかからなければならないのが今の世の中だからだ。つまり、これまで一日一個だった仕事量が一日二個になって私たちの生活はより一層多忙を極めることになるのだ。便利になればなるほど忙しいという世の中の矛盾は今に始まったことではないが、結局のところChatGPTとは救世主なのか、はたまた偽善者なのか。その答えは次の15年でわかるはずだ。


profile筆者プロフィール

宮坂 龍一(みやさか りゅういち)
東京都出身。暁星高校、筑波大学体育学群卒業。
香港の会社、人事、芸能、恋愛事情にうるさい。

 

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