2分で読める武士道 第23回

2022/05/25

2分で読める武士道

 

世界中で注目されている日本人特有の性格や行動の数々。
それらの由来は武士道精神にあった。
しかし、肝心の日本人にその武士道精神が浸透していないのが日本の現状である。

 

筆者が外国生活を通して感じた日本人の違和感を「武士道」や「葉隠」などの武士道関連文献をもとに紐解いていく。

 

 

 

 第23回 プレゼンも授業も最後の一言が肝心

公の場と寝室の中、戦場と畳の上とが別ものになり、いざという時にはにわか仕立てをするから、間に合わないのである。有事への構えも常々にあることである。畳の上で武勇が顕れる者でなければ、戦場へも選び出されない。

プレゼンテーション、試験、試合、発表会などで演者がパフォーマンスを発揮できる時間は限られている。「ステージの上の3分間はステージの下での10年間に相当する」という言葉があるように、私たちの人生では本番と呼ばれる舞台よりも人の目に止まらない練習時間の方が圧倒的に多いのである。
日々の練習、ひいては私生活から常に本番のことを意識しなければ本番で実力を発揮することはできない。
本番では予想だにしないことなど、ありとあらゆることが起こりうる。予想外の状況でこそ、その人の本当の実力が発揮される。「しっかりと準備もしていないのに目標を語る資格はない」とはイチローの有名な言葉である。

 剛勇か臆病かは、平常の時に推測しては当たらない。一段別の時に判るものである。

物事が順調にいっている時には誰もが寛容で調子がいいものである。そのような際にその人となりを判断することは難しい。特に健康、家族、金銭で問題が発生したときに私たちは本性を顕にする傾向がある。

 大難や大変時の時も、一言が肝要である。吉事に恵まれた時も、一言である。その場限り、挨拶程度の話であっても、一言である。その一言が出せるよう工夫しておくべきことである。たった一言によって引き締まるものである。

外国人に「ハロー!」と大きな声で言えるかどうかというところが全てである。私たちは結局目に見えるもの、耳で聞いたことでしか他人を判断することができない。だから言葉が大事なのだ。特にプレゼンテーションや学校の授業では最後の一言が肝心である。「それでは、時間がないので今日はここまで」と「今日のポイントはこの2つ! しっかりと覚えて家に帰ってください」とでは後者の方が生徒への印象は間違いなくいいだろう。終わり方を準備しておくことも忘れてはならない。

ある人のところで談話をしている最中に、僧侶が訪ねてきた。(常朝殿は)上座にいたが、すぐに下座へ移り、一通りの挨拶をした。その後は普段の通りであった。かねてよりご教訓のある礼儀に則ったところである。

教養のある人というのは、ただ単に礼儀やマナーの知識を備えているだけでなく、現場全体を常に観察し、状況に応じて素早く動くことができる人のことを言う。礼儀作法の知識をどのように活用すればよいかを熟知しているのだ。
ちなみにその人に教養があるかどうかを知りたいなら、他の仲間と一緒に火鍋か焼肉にでも誘ってみればいい。座る位置、注文の仕方、具材を煮る、焼く順番などでその人の教養が垣間見えるはずだ。驚くなかれ、自分の好きなものを食べることだけに集中している人は結構いるものである。


profile筆者プロフィール

宮坂 龍一(みやさか りゅういち)
東京都出身。暁星高校、筑波大学体育学群卒業。
香港の会社、人事、芸能、恋愛事情にうるさい。

 

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