偉大なる女性画家ベルト・モリゾの生涯

2018/02/20

ベルト・モリゾ(1841年1月14日~1895年3月2日)は印象派の創設画家の1人だが、おそらく女性だったこともあり、ルノワールやマネなどと比較すると、その存在はあまり世に知られていなかった。しかし近年、モリゾの作品の良さが認められ、評論家達の間では19世紀最高の女性アーティストの一人と称されている。

Edouard_Manet_-_Berthe_Morisot_With_a_Bouquet_of_Violets_-_Google_Art_Project

フランスに生まれ、生涯をパリで過ごしたベルト・モリゾは、主に家族や友人達をモデルに絵を描いた。彼女が好んでテーマに選んだのは自然の中に佇む家族の情景などであり、女性特有の感性で描かれる作品達には、男性の視点では見られない繊細さと穏健さを感じ取ることができる。モリゾは、親友であり指導者でもあったエドゥアール・マネの弟と結婚し、38歳になるまで子供を持たず、家族の生活とキャリアのバランスをうまくとっていた。

Berthe_Morisot_Young_Girl_Putting_on_Her_Stockings

Morisot_Lady_at_her_Toilette

モリゾの作品スタイルは一貫して印象派であった。その作品は色彩と光に満ちており、刹那的な陰影を描くことにも長けていた。彼女がその前衛的な手法を使って描いたのは、家族や友人、女性達、そしてお気に入りのエリア、パッシーの光景などで、他の印象派同様、屋外での制作を好んだ彼女は、娘ジュリーの幼年期を描いた膨大な数の作品も残している。

Lucie_Leon_at_the_Piano_by_Berthe_Morisot,_1892,_private_collection

キャリアの前半、彼女は家族と訪れた休暇先で鉛筆やグアッシュ、水彩絵の具を使って小さめな作品を制作することが多かった。これらの画材は持ち運ぶのが容易で、外で皆との時間を楽しみながら制作をすることができたからである。

女性の画家が圧倒的に少なかった当時、男性画家達とは異なり、彼女はヌードを描いたりエロスをテーマにすることはなかった。彼女が自然の誠実なイメージを表現した作品は、それが彼女の女性らしさに起因すると、軽蔑的に評されることもあったという。しかしその光り輝く色彩と筆のタッチは、多くの印象派の画家達が作品に使っていた正統派そのものの技法だった。自然に対する彼女の愛情は、その美しい絵画達にはっきりと表現されている。

キャリアの後半も、モリゾは女性ならではの視点を活かして精力的に制作を続けた。マネやルノワール達が女性を性的な対象として捉えて描く一方、モリゾは女性達の何気ない日常、例えば夕食の支度に勤しむ女性の肖像などを描いた。彼女の描く女性達は控えめながら、男性の視線を意識せずに行動し、自分自身に集中している様子が見て取れる。

彼女はアートを通じて女性らしさの意味を問い、19世紀の女性達の生活を、自らの技法を用いて描き残した。絶妙な筆のストロークとつややかな色合い、繊細な明暗の表現と、師事したコローから学んだ技術による、自然光の描写は高い評価を得ている。社会の常識や慣習に屈せず、自らの芸術的キャリアを追求したモリゾの生き方は、現代の女性の生き方に勇気を与え、賞賛されるべきものだろう。

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