若手女性作家がアートで表現する「医学」の世界

2016/08/09

章燕紫章燕紫中国の現代アート界を牽引する作家の一人である章燕紫(Zhang Yanzi)。現在拠点を置いている北京での活動のほかにも、世界的に有名な香港のアートフェア「アートバーゼル香港」への参加や、イタリア、ナポリでの個展の開催など、中国、香港内だけなく世界へと活躍の場を広げる彼女の個展が、先月より上環(ションワン)にある香港医学博物館で開かれている。香港で所属するギャラリー「Ora-Ora」の10周年と、同博物館の開館20周年を記念して企画された同個展。「なんで医学博物館でアート?」と思わずにはいられない、一見、無関係のように見える両者だが、医学は身体を、そして芸術は心を癒す、どちらも人生に希望を与えてくれる、我々人間にとってかけがえの無いエッセンスなのだ。

今回の作品の中で、博物館に展示されているかつての分娩台からからインスパイアを受けたという「サンクチュアリ」と「scar」は、傷の手当てに使う絆創膏や、ガーゼ包帯などをイメージして作られた素材で分娩台の形が作り上げられており、想像を超える痛みを乗り越えて新しい命を産む女性達への尊敬と賛賞を表現したという。

その他、移動式ベッドの上で横たわる真っ白な翼や、薬のカプセルや漢方薬の原料などをモチーフに描かれた絵画など、場内には興味深い数々の作品が並ぶ。主催者でもある「Ora-Ora」のオーナーが「彼女の作品を見た一人でも多くの訪問者に、豊かな香港の医療文化に興味を持って欲しい」という願いをこめて企画し、西洋・東洋両方の医学からインスピレーションを受けて生み出された芸術を、通常のギャラリーではなく医学に関わる場所で鑑賞できるというところに価値がある本作品展。見所の多い同博物館常設の展示も同時に見学することで、他ではめったに味わえない不思議な感覚と新しい価値観の扉を是非叩いてみてほしい。章燕紫

本~Essence~
住所:2 Caine Lane, Mid-Levels, Sheung Wan
期間:開催中~8月28日まで
時間:10:00~17:00(火~土); 13:00~17:00(日・祝)
休館日:月曜日
料金:大人 HKD20; 6歳未満・60歳以上・学生・障がい者 HKD10

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