アートギャラリー「AISHONANZUKA」香港仔(アバディーン)

2014/07/29

AISHONANZUKA アート

どうして香港でギャラリーをオープンしたのですか?

日本で画商として6年間ビジネスしてきましたが、マーケットのサイズも見えてきて、つまらなくなってしまいました。ギャラリーに来てくれるお客さんの顔ぶれも変わらないし、その人の予算も知っている。日本では、この先マーケットの拡大も見込めない。そこで、まだ30代初めの若いうちに、思い切って海外へ打って出ようと考えました。パートナーのナンヅカもギャラリーのオーナーです。歳が近いこともあり仲良くなり、ギャラリーの一角を貸してもらったり、一緒にアートフェアに参加したりなどの付き合いがありました。

では、どこでギャラリーをオープンするか。場所を決めるまで1年位かかりました。最初は、ロンドンやニューヨークで、とも考えました。でも、業界の人たちに、すでにマーケットができているそんな場所でギャラリーを運営しても、草が一本も生えていない、猛獣がウヨウヨしている土地にリスが舞い込むようなもので、すぐに食われておしまい、と言われました(笑)。

そこで、目をつけたのがアジア。アジアのアートのハブといったら、香港かシンガポールなんです。香港ではアジア最大のアートフェア「アートバーゼル」が開催されていますし、2年後には香港政府が文化プロジェクトとして、美術館「M+」のオープンを予定しています。この「M+」が強い力を発揮し、香港を取り巻くアートの機運はさらに盛り上がっていくでしょう。アジアのマーケットを作っているのは香港といっても過言ではないと思います。

香港では自分たちの根を下ろして、いいポジションを築くことができると思いました。今、展示中(取材は6月)の田名網敬一さんの作品は絵のピースも大きいですが、香港は日本から近いので、輸送費が安くタックスもかからないこともいいですよね。

オープンに向けてどんな準備をされたのですか?

香港に決めてから、ギャラリーが集まっているエリアをリサーチして物件探しです。セントラル(中環)の家賃は高すぎて話になりませんでした(笑)。リプレゼント(契約)しているアーティストの作品を売ってペイできる場所がアバディーン(香港仔)でした。

ギャラリーの内装は、法律が違うので苦労をしましたが、自分で図面を引きました。でも、その図面をもとに工事の見積もりを依頼すると、あまりにも高くてびっくり。紆余曲折ありましたが、結局、店を巡って材料を買ってきて自分たちで作りました。

ギャラリーには、売れる作品を買い付けて販売するセカンダリーギャラリーと、所属アーティストをプロモーションするプライマリーギャラリーの2種類がありますが、私たちのギャラリーは後者です。香港で初めてオープンした、日系のプライマリーギャラリーになると思います。

 AISHONANZUKA ギャラリー

オープンから1年余。
振り返られていかがですか?

まったくのゼロからのスタートでしたので、手探りで、いろいろな取り組みをやってきました。まずは、ニーズを探るために、トライアルの意味も含めて、1年間、どんな作品を展示していくか、ナンヅカと話し合いました。このギャラリーは、ともに西洋ベースのコンテクスチュエル・アートをテーマとしながらも、ストーリー性が高くインパクトの強い絵を趣向するナンヅカと、社会性の強い作品を趣向する私の二人の個性で運営しているので、展示する作品にも多様性が生まれていると思います。
オープン後は、ギャラリーを知ってもらうことを目標に、アートバーゼルや、アバディーンにあるギャラリーが連携して行ったイベント「アートナイト」に参加して情報発信を行ってきました。

ギャラリーに来てくださるのはヨーロッパ人やアメリカ人。香港人も訪れます。医者など裕福な人が多いですね。購入目的はそれぞれで、みんなが同じテンションで買っているわけではないと思います。田名網さんの作品は1枚1,000万円以上するものもありますから、趣味より投資目的で購入される人がほとんどですね。

10万円くらいから購入できる若いアーティストの作品も扱っています。たとえば、8月は山田周平さん。彼の作品は社会性が高く、長い目で見て、とても面白い作品だと思います。今回、案内のパンフレットに用いた作品は権力者の象徴だったベルサイユ宮殿に1枚のポートレートが掲げられているものです。そのポートレートは虐殺者10人の顔を合わせて作り出したものです。興味深い視点ですが、みんなに支持されて買ってもらえる作品とはいえないでしょう。

これまで、ビジネス的に見ると成功しているとはいえないかもしれません。作品はチョロチョロ売れていますが、赤字かトントンですね。でも、売上が伸びるという前提で向こう5年は香港でやっていると思います。

今後はどんな展開を考えていますか。

やはり着目するのは美術館「M+」です。アートの歴史的な価値などを後世に残すことが美術館の役割ですが、これまでアジアにはこうした美術館はありませんでした。「M+」の準備室では、アジアのアートヒストリーを展示するために作品のコレクションも始めています。アートを買うための予算を6000億円位持っているといわれています。私達は「M+」へ向けて、リプレゼントするアーティストの作品のプレゼンにも力を入れています。「M+」に、アーティストの作品が展示されれば、彼らの歴史的な地位を確立することができるし、買ってくれた人にも喜んでもらえる。それはギャラリーの重要な仕事でもあるのです。

英語は得意ではないので香港に来て苦労していますが、絵のルールがわかっているプロフェッショナルな人には、「西洋のアートコンテクスト」といえば、わかってもらえるので、プレゼンはそんなに難しくはありません。ルールがわかっていない方に説明するより簡単です。「M+」の動向もリサーチし、どういう歴史と結びつけて、どういうストーリーで作品を説明すればいいのかなど戦略を練ってプレゼンしています。よくギャラリーに行くとガランとしていて、係の人が暇そうにパソコンを打っているなんていう風景を見かけるかもしれませんが、画商は意外にやることがいっぱいあって忙しいんですよ(笑)。

売り上げが伸びたら、セントラルでギャラリーをオープンしたいですね。認知度を高めて、サポートしてくれるコレクターとも出会いたいですね。しっかり作品を売っていきたいし、ギャラリーにも気軽にいらしていただければと思っています。

[PROFILE]
アイショウミウラ(三浦愛正)さん大学・大学院で建築を専攻する。大学院で現代美術を学び、卒業制作で、商店街の一角にある古い一軒家をギャラリーに改装したことが、画商になるきっかけとなる。卒業後、そのギャラリー「AISHO MIURA ARTS」を運営。その後、シンジナンヅカ(南塚真史)さんが運営するギャラリーNANZUKAの一角に、自身のギャラリーを移転。そのギャラリーをクローズして、ナンヅカさんとのコラボレーションで、昨年5月に香港にギャラリーをオープンした。画商歴7年。

AISHONANZUKAアートギャラリー
AISHONANZUKA
住所:39, Wong Chuk Hang Rd., Aberdeen
メール:[email protected]
ウェブ:http://www.aishonanzuka.com
これまでに展示されたアーティスト:空山基、菊地良博、亀井徹、小池一馬、横山裕一、佐伯俊男、田名網敬一
■山田周平作品展:8月1日~30日

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