僕の香妻交際日記 第82回 キミは、日本で二番目に高い山を知っているか?

2023/03/08

P16 HK Wife_7272位じゃダメなんです
私の直属の上司でもあり会社の社長でもあるミスターリンは私が人生で出会ってきた人々の中でもトップ3に入る意識の高さを誇る。ビジネスに関して言えば仕入れ値の1セントの違い、デザインの1ミリのズレ、ミーティングでの1秒の無駄にまでとことんこだわる。その意識の高さは自らの子どもたちにまで及び、テストで98点を取ろうものなら98点取ったことを褒めるよりもあと2点なぜ取れなかったのかを追求する。口癖はShoot for the sky(てっぺん目指そうぜ)、「2位じゃダメなんですか?」という質問に「キミは、日本で二番目に高い山を知っているか?一番じゃなければダメだ」と答えてしまうのがミスターリンなのである。

ディズニーよりもオーシャンパーク
普段のランチにもROI(Return on investment, 投資利益率)を意識してしまうミスターリンは常に1ドルの投資で10ドルの利益を得るように行動している。だからミスターリンは子どもたちを滅多にディズニーには連れて行かない。行くならオーシャンパーク、なぜなら住まいが香港島のリパルスベイなので、オーシャンパークが近いからだ。同じテーマパークなのであれば10分で行ける方を選ぶ、そうすれば1時間かけてディズニーに行くよりも2時間多く遊べるじゃないか、と考えるのがミスターリンなのである。

明日ディズニーに行く
そんな曲がったことが大嫌いなミスターリンが先日ドイツからのお客さんとのミーティング中、先方がトイレ休憩で席を外している最中に突然「明日ディズニーに行くんだ」と彼らしくないことを言ってきた。というのも彼は私がほぼ毎週ディズニーに行っていることを知っているので私に土曜日のディズニーの混み具合を確認したかったのだ。無駄が嫌いなミスターリンのことなのでよっぽど混み合っているようならやはりオーシャンパークに行こうと考えていたらしい。しかし、娘たちはディズニーにもたまには行きたい…とのことで「土曜日のディズニーはそんなに混んでいませんよ」と私は伝えた。

社長とディズニーで遊ぶ
ちなみにその土曜日はたまたま私たちもディズニーに行く予定でそのことを伝えると「じゃあ一緒に行こう」とミスターリンに誘われた。私は普段から比較的彼とは親しい間柄だが、とはいえ会社の社長である。社長とディズニーで遊ぶとなるとどこまではしゃいでいいのか悩むところだ。いつもならキャプテン・アメリカのティーシャツを着て肩にはグルートのぬいぐるみ、頭にはジェラトーニのカチューシャをしてディズニーに行くのだが、そんな格好を社長が見たら果たしてどう思うだろうか。それでも、一応「ディズニーに着いたら落ち合いましょう」と答えた。

社長とアントマンに乗る
結局カチューシャとグルートだけは家に置き、無難にミッキーマウスのティーシャツ姿で社長家族と落ち合った。私の娘はアントマン好きなので、とりあえずアントマンに乗ることになった。社長サイドは社長と娘2人の3人、私の方は妻と娘の3人。アントマンは2人乗りなので、それぞれの家族から1人余る。当然社長と私が余る。1人で乗ることも可能だが、それも少し寂しい。しかし、社長と2人でアントマンでエキサイティングできるとは思えない。妻に小声で相談したところ、「そりゃ社長と一緒に乗った方がいいわよ」と言われたので、私は目をつぶって社長と2人でアントマンに乗り込んだ。

360000点
負けず嫌いな社長ミスターリンは当然アントマンでも勝つ気満々だった。プレイ中は終始無表情で無言を貫き、高得点の的に向かってひたすら射撃を繰り返していた。プレイ終了後、妻や娘たちが「120,000点取った!」「90,000点しか取れなかった」と興奮冷めやらぬ状態でいた。そこにミスターリンがすかさず「俺は360,000点」と水を差し、その興奮の熱を一瞬にして冷ました。そこからはどうやったら高得点を出せるのかの講義が始まったのは言うまでもない。

獅子は兎を狩るにも全力を尽くす

この言葉が誰よりも似合う、それがミスターリンという漢なのだ。


ルーシー龍ルーシー龍(りゅう)

東京都出身。香港歴10年。世の中のオヤジの威厳を取り戻すため愛娘に甘い妻と日々衝突を繰り返しながら子育てに奮闘中。

 

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