尖東(チムトン)ラーメン店「一平安」が創業30周年

2014/05/07

香港の元祖ラーメン店「一平安」が創業30周年。ほっとくつろげる、笑顔になれる店づくりは日々進化中。

おいしいラーメンとお酒が楽しめる「RAMEN&BAR」として親しまれている麺屋「一平安」が今年30周年を迎える。
両親の仕事の都合で、香港で暮らしていたラーメン好きの若い女性が、チムトン(尖東)に本格日本ラーメン店の先駆けとして、1号店をオープンしたのが1984年。それから30年を経て、現在は一平安6店舗、グループ店舗を加えると合計11店舗を展開する。創業者で社長の島田逸子さんにお話を伺った。

一平安

■30周年、おめでとうございます。長く多くの方に支持されてきた秘訣はどこにあるのでしょうか。
ありがとうございます。私がポリシーとして大事にしてきたのは、お客様がいちばんということです。どんなにおいしいラーメンを作っても、お客様に満足していただけなければ意味がありません。お客様目線で、ほっとくつろいで笑顔で帰っていただける店づくりにも心を砕いてきました。そうして、お客様にもお店を愛していただいて、相思相愛の関係になることを目指してきたことが長く店を続けてこられた秘訣になるのかもしれません。
その象徴がチムトンの1号店なんです。わかりづらいところにあるのに、よくお客様が来てくださると思います。店では、お客様のニーズに応えるうちに、ラーメンだけでなく、おつまみを食べながら日本酒が飲める、当時の香港ではめずらしい居酒屋スタイルの店になっていました。お酒が好きな日本人の方からは「ここで飲むのがいちばん好き。わが家へ帰ってきたように落ち着く」といわれることも多いですね。30年前にオープンしたとき、10歳だった子どもが40歳になり、今は自分の家族を連れてきてくださるんですよ。
■お店の危機も、お客様や人との輪で乗り越えていらしたと伺いました。
はい、一番大きな危機がチムトン店をオープンして半年位経ったころにありました。店を施工してくれた会社が、政府に必要な届出をしてなかったため営業停止になったんです。施工会社は逃げてどこかへ。店には罰金が科せられるほか、経営者が拘置されることもあると聞いてびっくり。寝耳に水の出来事でした。
母と2人で、政府に顔が聞くという方を訪ねて「助けてください」とお願いしたのですが、店の規模を聞くと「そんな店、閉めたほうがいい」とけんもほろろ。ホトホト困り果ててしまいました。知人の中には「歯ブラシを持って入獄したほうがいい」という方もいたんですよ。
このとき助けてくださったのがお客様でした。私は営業停止の期間も営業時間は店にいました。お客様の中には、閉まっているのをご存知なくて来てくださる方もいますから。そのとき、仕事帰りに寄ってくださった一人のお客様に事情をお話しました。すると、同業者の彼は状況を理解して、店のために手を打ってくれたのです。結局2週間後に店をあけることができました。私も入獄せずにすみました(笑)。奇跡に近いことだったみたいです。
お客様を愛して店づくりをやってきたことは間違いではなかった。お客様も店を愛してくださって、困ったときは助けてくださるのだと思いました。
■そうしたポリシーは幹部社員の方から「逸子さんブランド」と
呼ばれて、一平安だけでなく、息子さんが展開されているラーメン店「ラーメンJo」や東南アジア系のレストランなどグループ店舗でも大事にされているそうですね。
ブランドになって、私の思いがきちんと伝わっているのでしたら、うれしいですね。今は経営者として、人材の育成に力を入れています。その中で、ポイントとなるのが「お客様がいちばん」というポリシー、そして、笑顔と感謝を大切にするということをきちんとスタッフに伝えることです。そのためのマニュアルづくりにも取り組んでいます。
私は店を訪ねたとき、厨房やホールのスタッフ全員に「おはよう」と笑顔で声をかけて回ります。その笑顔がお客様へも広がっていくと信じています。私の性格もあるのかもしれませんが、人はまず長所を見つけて育てるようにしています。そのほうが人を成長させ、仕事に対するモチベーションを高めることができると思っています。

■島田さんのアイディアをもとに昨年オープンした和風スイーツ店「VIA TOKYO」は、香港のグルメサイト「オープンライス」の人気ランキングで、6カ月間連続1位を獲得しましたね。
快挙だと聞いて私もびっくりしました。店のアイディアを出したのは私ですが、店名などを考えてカタチにしたのは息子なんですよ。私は以前からおいしいコーヒーが飲めて、あんみつが食べられる店をやりたいと思っていました。オープン前にはコーヒーについて学ぶ3日間の集中講座を缶詰で受けてきたんですよ。息子とゼネラルマネジャーの野崎と一緒に、北海道で焙煎した本格的コーヒーが飲める有名店も訪ねてきました。「VIA TOKYO」では濃厚な北海道の牛乳と、食べた瞬間から味の違いがわかる宇治抹茶を組み合わせたスイーツが人気です。最高級の抹茶を使ったのがよかったのかもしれません。
店づくりでも若い人の感性に期待しています。でも、これまでの経験も踏まえて、味や雰囲気などアドバイスを求められることも多いので、私自身の感性も研ぎ澄ませていかなければいけないと思っています。
よく福岡に行くのですが、この間、知人に「福岡の人は垢ぬけているよね」と言われたとき、私は人を見ないで、食べもの屋ばかりを見ていたことに気づきました。いつもアンテナを張り巡らせてリサーチし、引き出していれておくようにしています。

■30周年に向けて企画されていることはありますか。
はい。社内の打ち合わせでは、私は2つのことを提案しました。ひとつは、一平安の広告でラッピングしたバスを走らせること。宣伝も兼ねて、感謝の気持ちをお伝えできれば、と思っています。もう1つはトラムでの貸切パーティー。以前、日本ではお祭りのときなど、造花や電飾で装飾した路面電車を走らせることがあり、「花電車」と呼ばれていました。花電車のように飾り付けたトラムを走らせて、お世話になった方をお招きしたパーティーができれば、と思っています。

■今後の展開で考えていらっしゃることはありますか。
香港では日系のラーメン店が多くなってきましたので、これまで以上に味がぶれないように、と注意を払っています。パートナーの熊本ラーメンの有名店「ひごもんず」の社長は、以前は年2~3回でしたが、今は2カ月に1回、味のチェックにいらしているんですよ。さらにおいしくなるように少しずつ味も改良しています。でも、店の規模やスタイルが違ってもポリシーは変わりません。
先日香港へ赴任になった娘さんを訪ねて、来港した日本人ご夫婦がお店にいらしたとき、「海外暮らしは心配でしたが、こんな店があることを知って安心しました」とコメントを寄せてくださったそうです。そんなお客様から「おいしかった」「ありがとう」といただく言葉を励みに、逆に、お叱りの声にもきちんと対応しながら、日本流のおもてなしを実行していきたいですね。これでいいとは思っていません。店を日々進化させていくための努力をやめることはないでしょう。

●将軍澳店
住所:SHOP UNIT F23, LEVEL 1, Popcorn, 9 Tong Yin St., Tseung Kwan O
電話:(852)2711-8008
●エナジープラザ店
住所:SHOP BASEMENT 1, Energy Plaza, 92 Granville Rd., TST EAST
電話:(852)2722-4826
●ミラマー店
住所:SHOP 2007, 2/F., Knutsford Steps, 1 Kimberley Rd., TST
電話:(852)2375-5330
●コーズウェイベイ店
住所:4/F., Circle Plaza, 499 Hennessy Rd., CWB
電話:(852)3741-1166
●エレメント店
住所:SHOP 1030, First Level, Elements 1 Austin Rd. West, TST
電話:(852)2196-8208
●九龍湾(テルフォードプラザ)店
住所:SHOP UNITS 413-414, 4/F., Telford Plaza Ii 33 Wai Yip St., Kowloon Bay
電話:(852)2997-3233

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