旬な人 カラオケスナックPockeyマネジャー「エリナさん」
飾らない人柄と笑顔に魅せられて
オープン数ヶ月でリピーター続出
エリナ(磯邊恵利奈)さん
我々日本人だけでなく、今や全世界の人から愛されるスナック菓子ポッキー。その可愛らしさからヒントを得て、名づけられたカラオケスナック「Pockey」は、「ポッキーの日」である昨年11月11日に尖沙咀にてオープンし、現在3ヶ月が経つ。このカラオケスナック、私たちのイメージする、ハスキーボイスのママがいて昭和レトロを感じさせるようなお店ではないことは断言できる。なぜならカウンターの中でロンドンジンのカクテルを作るマネジャーのひとり、若干27歳のエリナさんがいるからだ。
どこか強い芯のようなものを感じる人
インタビューの日、現れたのは黒のパンツスーツに身を包み、キリリとした印象の中にも柔らかさを併せもつ女性だった。
磯邊恵利奈(以下、エリナ)さんは、ある人事のため昨年7月に来港した。それが後に日系飲食店の社員として、カラオケスナック「Pockey」の立ち会げメンバーのひとりに大抜擢された。1週間のホテル隔離を終えたその日が、エリナさん27歳の誕生日だったというから、終了時の心境はより一層晴れ晴れしく、足取りは軽く、心躍ったに違いない。
まだまだ若いエリナさんだが、心の奥に何か強い芯のようなものを感じた。それは何か、話を伺う中で徐々に見えてきたこの穏やかな強さは、どうやら彼女の学生時代のエピソードからうかがい知ることができる。
14歳だったエリナさんはイギリスにバレエ留学へ行くことになる。それ以降、中学から大学までをバーミンガムやケンブリッジで過ごすことに。親から離れ、異国の地、それも日本から十時間以上かかる遠い場所で心細くなかったのか聞くと、「親の勧めもありましたし、バレエを本気で学びたい気持ちと海外で暮らす好奇心にはあらがえなかったですね」と当時を振り返る。こうして少女は自分で選んだ道を進んでいくこととなる。
直面した壁にも希望は失わなかった
しかし、大好きなバレエに打ち込む日々が続く中、現実はそんなエリナさんに厳しい試練を用意していた。バレリーナのかなめである足首を怪我してしまったのだ。何軒も病院をまわったが、結局治療法は見つからず、高校に上がろうとしているエリナさんは人生で初めてと言える挫折「バレエをあきらめる」ことを経験した。「それまでの私には、バレエがない人生は考えられませんでした。しかしイギリスという土地が好きだったこと、運よく現地の高校へ進学できるという好条件も重なり、そのまま大学までイギリスで生活を続けました」と、明るく話すエリナさん。
大学卒業後は日本に帰国し、大手飲食店に入社。この時も将来は海外で働くことができる業種を基準に選んだそうだ。その後、コロナの情勢も加わり、また中学から親元を離れ育った背景もあり、岡山の実家で過ごすこと2年。そして、ようやくコロナも落ち着いてきた2022年、エリナさんの心には「海外で働きたい」という強い思いがまた湧いてきたという。「学生時代からアルバイトなどで飲食業や接客業にたずさわってきました。人と接し、お客様の役に立てることが楽しいですね」。転職活動をする中、いろいろな縁が形となり、具体的な赴任の話が持ち上がってから、いざ香港の地を踏むまで、あっという間だったというエリナさん。さすがの決断力と行動力である。
豊富な種類のジン入手のため奔走する
着任後はオープンに向けて突き進む日々が続く。27歳という若さで、新店の立ち上げメンバーの1人に抜擢された。プレッシャーもあった。だからこそわからないことはしっかりと調べ、ひとつずつ納得しながら準備にあたった。同店の特徴はロンドンでトレンドとなっているジンを多く取り扱うところだ。豊富な種類さゆえ、サプライヤー探しから入手経路の組み立てなど、エリナさん自らが様々なツテを頼り走り回って構築したもの。「当店はジンの聖地と言われるロンドンから半分以上を輸入しています。そのほか、なかなか手に入らないめずらしいブランドのものなど、飲み比べしていただくことも楽しいですよ」。かくいうエリナさん自身もジンが大好きだという。
オープンから3ヶ月、当初の不安を少しずつ和らげてくれたのがリピートしてくれるお客の存在だそうだ。ソフトオープン時から足繁く通うお客に「エリナさんに会いにまた来たよ」と言われた一言が、今でも忘れられないという。またスナックというと高額なイメージがあるが、同店はミニマムHKD300~/3時間とコストパフォーマンスもよくなおかつボトルキープもできるので、気軽に通うことができる点も魅力的だ。
誰もが足を運べる放課後のようなひとときを
最後にエリナさんに同店をひとことで表現してもらうと「放課後のような空間です。ここには男女、国籍、年齢に関係なくどなたでも来ていただける、そんな居心地のよさを感じていただきたいです」と話す。また、隠れヒット商品として愛されているメニュー「焼きそばパン」は、幼い頃日本のアニメで見ていたという香港人の来店客からも大好評を受けているそうだ。そんな同店でレンタルできる学生服を着て、焼きそばパンを頬張ればなつかしいあの頃を思い出すかもしれない。そうそう、同店のお通しは無論POCKYであることは想像に難くない。
エリナさん
1995年岡山県生まれ。幼少期よりバレエに打ち込み、14歳で留学のため渡英。大学卒業後は世界展開する飲食業に従事するなど、海外で働くことを視野に経験を積んできた。22年に来港し、「Pockey」のマネジャーとなる。
Pockey
16/F., Soho Tower, 25 Hart Ave., TST
(852)5336-8036