肉特集 PartⅠ 和牛達人に聞く!『香港における和牛事情』

2020/07/01

和牛達人に聞く!

『香港における和牛事情』

2007年の和牛解禁に伴い、いの一番で香港に進出してきた「和牛達人有限公司」。
その名のとおり、和牛のプロたちが集まる集団だ。香港において圧倒的なシェアを占める。
そこで、香港在住歴23年、2013年より同社に勤めるセールスマネージャーに、香港における和牛事情を伺った。

 

Hysan Place地下2階 スーパーマーケット肉売り場

Hysan Place地下2階スーパーマーケットの肉売り場

 

 

PPW:御社の事業内容について教えてください。

和牛達人:「和牛達人有限公司」は、2007年の和牛解禁と同時に香港に進出しました。当初、我々はメーカーとしての役割を果たしており、まとめて大量に仕入れた和牛を商社に対して販売するといったビジネスをしていました。

 2007年に「但馬屋(香港)有限公司」も同時立ち上げ、しゃぶしゃぶの「牛陣」、焼肉の「本陣」をオープンし、外食部門にも参入しました。「牛陣」「本陣」で使用する肉は全て「和牛達人」が仕入れを行ない、「但馬屋」を通して提供しています。「和牛達人」が輸入部門、「但馬屋」が外食・小売部門を担う、グループ会社とご理解いただくとわかりやすと思います。ただし、「和牛達人」直営の小売店も2店舗あり、銅鑼湾(コーズウェイベイ)のHysan Place(ハイサン・プレイス)地下2階のスーパーマーケットと、九龍(カオルーン)のElements(エレメンツ)2階にある「3hreesixty」、それぞれの肉売り場です。これは、日本から大量に届く和牛を余すところなく、また、早いうちに、皆様にお届けできるよう、小売に関してはグループ内で分担することにしたためです。

 和牛といっても、人気のある部位は決まっていて、サーロイン・デンダーロイン(ヒレ)・リブロース、この3つです。これら全て合わせても、牛1頭の20%にも満ちません。もちろんこの3部位だけを指定して輸入することも可能ですが、そうすると、非常に割高になるため、我々は、残りの80%にあたる部位も含めて輸入しています。あまり一般に知られていない部位でも、「実は、とても美味しい」といったことは往々にしてあります。幸い、外食部門も小売部門もあり、また、サプライヤー(外販)としての役割も担っているため、そういったあらゆるルートを駆使し、消費者の皆様に味わっていただけるような工夫をしています。

 5~6年前で年間400トンの和牛を輸入しており、「和牛達人」が香港に入ってくる和牛の50%のシェアを占めていました。現在でも月に70頭以上の和牛を仕入れており、右肩上がりが続いています。

 また、「和牛達人」という社名どおり、和牛がメインではありますが、10年前から豚肉の輸入も始めました。北海道産の「ゆめの大地」というブランド豚で、四元豚(4品種の豚を交配により掛け合わせて開発した改良品種)の良質なお肉です。実は、消費量は圧倒的に豚の方が多いのですが、そもそもの価格が安いため、売上げは牛の方が多いといった状況です。

 実は、今、この豚肉の消費量が一気に増えています。というのも、火鍋からコロナウイルスに感染したというニュースが報道されてからというもの、消費者が中国産の豚肉を避けるようなりました。また、同じくコロナウイルスの影響で、米国の工場がストップしていることもあり、現在、米国産の豚肉が一切入ってきていません。それもあって、日本産の豚肉に注目が集まっています。

 

PPW:御社の取り扱うお肉には、どのようなこだわりや特長がございますか?

和牛達人:我々が扱うのは、あらゆる質の和牛です。その中から、シェフが望む質と値段に見合ったものを提案することが何よりも重要だと思っています。ビジネスなので、値段を気にしないなんてことはありませんから。質がよい、これだけではなかなか納得していただけません。サーロイン・テンダーロイン(ヒレ)・リブロース以外にも魅力的な部位や、シェフの希望に合った部位はたくさん存在しますし、弊社はどの部位でも安定した供給が可能なので、そのあたりの情報提供を行ない、メニューに取り入れていただいています。コンサルティングというと大袈裟ですが、洋服屋へ行って、「これが似合いますよ~」「ぜひ試着してみてくださいね~」といったようなやり取りを行なっていますね。取引先は、日本食レストランだけでなく、中華にイタリアンにと幅広いので、料理の知識を全てマスターするのは難しいですが、すき焼きは2ミリ、しゃぶしゃぶは1.5ミリなど、素材が最大限に生きる方法は頭の中に入れておくようにしています。

 そして、もう1つ。弊社では、デッドストックを出さないことを何よりも大切にしています。「命を扱っている」「命を戴いている」という意識を持って仕事をしていますね。一般的に馴染みのない部位でも、取引先のシェフの方々にご紹介して、使っていただく。そこから、和牛の新たな魅力が生まれることがあります。もしくは、弊社には外食部門がありますから、そちらで提供するなど、あらゆる工夫をしてデッドストックを出さないようにしています。処分をしない!テーブルに出された肉は残さない!これは絶対です。

 

サーロイン

サーロイン

リブロース

リブロース

 

PPW:香港における和牛の歴史と、ニーズの変化について教えてください。

和牛達人:日本各地に直行便が飛び、また、LCCも増え、手軽に手頃に日本観光ができるようになったことから、一気に訪日香港人が増えました。香港には日本が大好きな人が多く、年に5回も6回も日本に行くという人も少なくありません。それに伴い、ここ数年で、香港内の日本食のレベルが格段に上がったと思います。現地で本物の和食を味わう人たちが増え、日式が通用しなくなってきたというのも大きいでしょう。最近では、香港で独自に日本食レストランを始めたという事例はなかなか耳にしません。飲食店オーナーたちからいただく相談のほとんどが、「日本を訪れた際に、実際に食べて美味しかったから、そのメニューを提供するお店を香港で開きたい」といった内容です。

 和牛の歴史をさかのぼってみると、一番変化したのは価格ではないでしょうか。昔は、それはそれは非常に高かった。和牛といったら、高級店でしか食べられないものでした。それが、今ではとても身近な存在になり、高級店でなくても味わうことのできる存在になりました。2007年当時の和牛の卸価格は、現在の1.7倍もありましたから。解禁に伴い、様々な業者が参入してきたことで、価格競争が始まり、一気に価格が下がりました。世界的に見ても、香港は、かなり安く和牛を手に入れられる場所になっていると思います。手頃になったおかげで、消費量はどんどん増加していますね。

 ちなみに、香港の人たちの食に対するマインドの1つとして、「1つのお店で何でも食べたい」というものがあるので、焼肉やしゃぶしゃぶなど、お肉をメインで取り扱う専門店でなくても、メニューに和牛を取り入れるといった傾向が見られます。これが、香港における和牛消費の更なる拡大を生み出していると思います。

 

DSC03977PPW:焼肉店、しゃぶしゃぶ店などが増加傾向にあると感じます。そのような肉の市場の変化がありましたら、詳しくお聞かせください。

和牛達人:以前は、サシ(赤身の間にある脂肪)が綺麗に入った、見映えのよいお肉しか売れませんでした。つまり、先ほど挙げたサーロイン・テンダーロイン(ヒレ)・リブロースの3部位ですね。ただ、最近は、傾向が変わりつつあり、サシの部分を「脂っこい」と捉える人も増えてきました。もちろん霜降り肉の人気は健在ですが、他の部位への興味も徐々に出てきています。

 というのも、先ほど申し上げたとおり、ここ5年ほどで日本を旅行する香港人が急増し、香港の人たちが日本を知り尽くしてきたと言っても過言ではありません。それに伴い、人々の日本食に対する意識も変化し、「和牛の美味しさは霜降りだけじゃないぞ!」とわかり始めてきたのだと思います。ここ数年で、牛もも肉や牛バラ肉などもよく売れるようになってきました。とはいえ、「ランプ」「シンタマ」「カイノミ」など、まだまだ浸透していない部位はたくさんあります。それでも、「和牛=霜降りのみ」という一辺倒なイメージではなくなってきたかなと思います。

 肉に限らず、香港における日本食全般の流れについてお話しすると、昔は寿司屋ばかりでした。その後、ラーメン屋が続々と進出し、5~6年前から鉄板焼きや牛カツサンドが盛り上がっていますね。今後は、すき焼きが流行りそうです。なぜか1つのカテゴリーごとに入ってくる傾向にあるんですよね。これは、香港人の気質によるものだと思いますが、流行るときは一気に流行る。そして、ブームが落ち着き、主要なお店だけが残り、定着するといったような流れです。

 

DSC03976PPW:今後の展望はございますか?差し支えない範囲で教えていただけますと幸いです。

和牛達人:グループ会社一丸となり、月に100頭以上の和牛を流通させていくという目標に掲げています。今でも多い月には100頭を超えますが、これを安定的に供給できるようにしていきたいですね。そのためにも、わかりやすく人気の部位だけでなく、その他の部位の魅力も伝えていく必要があります。まずは、消費者の皆さんに口にしていただかないと始まらないので、その機会を提供しているレストランに対して、あらゆる部位の魅力を理解してもらうこと、これが大事だと感じています。系列店の「牛陣」や「本陣」でも同じことが言えますね。和牛はどの部位も余すところなく使うことができますから。

 PPW読者の皆様にも、ぜひレストランで和牛を召し上がってみていただきたいです。牛肉は調理の仕方で、食感や風味にものすごく差が出ますので、レストランの方が確実に美味しく召し上がっていただけると思います。もし家庭で調理される場合は、事前に焼き加減などについてしっかり調べることをおすすめします。現在、「和牛達人」直営の小売店(Hysan Place地下2階のスーパーマーケットと、Elements2階の「3hreesixty」の肉売り場)では、2020年7月31日(金)まで50%OFFセールを行なっておりますので、ぜひこの機会にお手に取ってみてください。

 

P08-09 meat 746

和牛達人有限公司(Wagyu Master Ltd.)

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