大館特集 Part 1

2019/06/19

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大館は芸術をテーマにした社会共創

IMG_2965香港のイメージと言えば「国際金融センター」と「ショッピング天国」などが挙げられるが、芸術、クリエイティビティと関連した教育は乏しかった。中環(セントラル)にある新しいランドマーク「大館」は、歴史文化、芸術とレジャーをひとまとめにし、この規定概念を打ち破った。この香港最大の文化財保存・活用プロジェクトは10年という年月と総額38億香港ドルの資金を費やし、史跡をアートスペースとして生まれ変わらせ2018月5月29日にオープンした。今回PPWでは、同プロジェクトを手掛け、現在「大館」を運営する香港ジョッキークラブ(HongKong Jockey Club)の社会業務執行取締役・張亮氏に経緯や展望についてお話を伺った。

大館の運営方針

PPW:「大館」は他の史跡とは違い、芸術関連のイベントを中心にされてますが、どういった経緯があったのでしょうか。

張:まず、中区警察署、中央裁判士署、ビクトリア刑務所の3つの史跡の活用化を決定しました。残してくれた政府に感謝したいです。

2007年、香港ジョッキークラブが非営利で保存と活用の作業を始め、デザインおよび修復作業の方針を決定しました。それ以外にも「大館」を中環のランドマークにするため、新しい建物を2つ建設することにしました。

その新しい建築ならびに「大館」をどう活用すべきかと検討した際、香港ジョッキークラブはコンサルタント数名を集め、香港の史跡と現代芸術の状況を分析してもらったんです。今、香港では現代芸術の発展が進んでいますが、中規模の芸術展示やイベントを開催するスペースが不足していることに気づきました。上記の理由から、「大館」の方向性を決める際に3つのミッションを考えました。

まずは史跡の保存。そして香港に中規模かつ非営利で世界トップレベルの会場を提供すること。最後に市民が楽しめて多様な体験ができる場所を提供する。ということです。

上記の3つを融合した後、バランスを保つことが「大館」の運営には必要不可欠でした。例えば、レジャーとショップを過度に開くことは、史跡としての「大館」を打ち出す場合に不適切になってしまいます。また、今後の収支バランスも検討する必要がありました。これらは政府が香港ジョッキークラブによって大館の運営方針を決めていく際に優先したことです。検討した結果は、建築群の37%は芸術と文化活動用地で、27%は飲食店や売り場にし、残りは公衆用地と住宅施設にしました。

「大館」の歴史をリスペクトしつつ、長期的な発展も持続できるよう、新しいものも必要だと感じます。

IMG_1424芸術共創への願い

PPW:香港社会は短期投資でのリターンが重要視されています。コンサルタントの方々の分析は楽観的で、「大館」にて新しく設けられた建物は現代芸術の宣伝とされていますが、商業的な結果が表れるまでには時間を要しそうですね。そのあたりについてはどう思われますか。

張:それに関しては楽観的です。香港にはアート・バーゼルがあって、商売として現代芸術に興味を持っている人が多く見受けられます。香港ジョッキークラブは非営利なので、私たちは大金を稼ぐことを目指しているのではなく、良い社会を創設するためです。それが我々の初心です。

勿論、コストを維持することも必要です。ジョッキークラブからの経費を無駄使いはできませんので。

芸術の発展において香港では様々な試練がありました。会場の貸金が高すぎて、若手アーティストが作品を展示するスペースが無い、という点です。ですが、香港内の多くの組織が資金を提供し、彼らをサポートしてきました。香港ジョッキークラブ慈善信託基金は、芸術分野において社会共創をし、47年間にわたり「香港芸術節」(香港では有名な芸術イベント)をサポートしてきました。

今年、香港芸術節とジョッキークラブ慈善信託基金は「無限亮」という企画を立て、7つの演出に世界的に有名な障害者アーティストに出演してもらいます。芸術鑑賞を通じて、社会に貢献します。

「大館」には匡智会(知的障害者を支援する組織)が運営するレストランがあり、そこでは知的障害者の方々に働いてもらっています。パブリックスペースで働けることは、知的障害者の方でも尊厳を失わずに生活できるということです。家にお世話になるばかりではなく、自分を生かすことができるようになるのです。健常者でも障害者でも、お互い尊重することはとても大事なことです。芸術を広報することは決して少数の人のためではなく、社会共創を目指しているのです。

PPW:現代芸術は遥か遠くの存在だと思っている人が多いですが、「大館」は芸術を広報することで、それを大衆化させようとしているのでしょうか。

張:現代芸術は確かに多くの人にとって遠いものですが、その中には様々なレベルと組み合わせがあります。そして「大館」では、斬新な作品だとしても、理解しやすいよう展示されています。

展示は一年に6~8回で、香港のアーティストに参加していただいたこともあります。民生と社会問題をテーマにするものもあります。

PPW:「大館」はどのように、香港の若手アーティストをサポートするのですか。

張:用地は限られていますが、アーティストから申請を頂いた後、利用できるスペースを提供しております。

一つ興味深い事例がありました。香港の世界的に有名なアーティストが香港代表として、韓国、パリ、サンフランシスコなどで活動して大きな人気を得たのですが、帰国後にパフォーマンスできる場所がなかったのです。

その際、ジョッキークラブ慈善信託基金が香港芸術発展局と手を組み、「賽馬会芸壇新勢力」を開催しました。そういったアーティストに学校や組織のイベントに出演してもらえれば、地元の皆さんでも彼らのパフォーマンスを鑑賞できます。

若手アーティストたちが抱えている困難が全部解決することはありませんが、作品を発信させる機会とプラットフォームを提供したいです。

 

HKJC Mr Leong CHEUNG文化の継承、未来への発展と展望

PPW:「大館」がオープンしてから一年が経ち、香港の芸術発展に有益な環境を提供してきました。以前までは香港の芸術はビジネスとして主に考えられていました。しかし「大館」は国際的に知名度の高いブランドやアーティストと展示会を開催したことで、中国のメディアをも騒然とさせました。その甲斐もあって、金融、商業以外にも芸術と文化産業の発展に着手したことを世界にも伝えましたね。「大館」の未来発展についてはどうですか。

張:この一年間、実績をたくさん積めたとは言えませんが、 「大館」の運営概念に基づき、歴史文化、芸術、レジャーの3つを一つの場所に集めて、芸術と文化の空間として提供できたことはとても良かったと思います。

そして私たちは教科書を発行しました。小・中学校の教師の 方も製作に参加していただいて、学生たちに使ってもらっています。それに「大館」には教学用のスペースもあり、学生たちは教室だけではなく、現地にも来て勉強してもらいたいです。

最近、私たちは非営利組織「善導会」と史跡教育劇場という体験型教育活動を開催しました。「善導会」は、犯罪者の更生支援に努めており、司法についての知識が豊かです。「大館」は不定期に中央裁判士署で史跡教育劇場を行い、学生たちに容疑者、裁判官と証人に扮してもらい、疑似体験を通じての認識を深めてもらっています。「大館」は、文化使命があり、これからも受け継ぎたいと思います。

後記 

香港は観光事業に注力しており、ショッピングやグルメといった方面で世界的にも有名だ。しかし周辺地域の繁盛に伴い、その優位性も失われつつある。

香港の歴史に着目していけば、新しい発展の可能性があるかもしれない。大館は歴史文化と現代芸術を融合する中型施設だが、前に進んでいる様子はとても輝かしく、貴重な資料の保存や芸術発展に最大限力を尽くしていた。

もし中環に行く機会がありましたら、ぜひ大館へ足を運んでみてください。

 

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