ECO特集~人と環境について考える~ Part 2

2018/10/10

香港の水資源について東京と香港の資源を比較しながら考えてみる

 

限られた私たちの水の未来について

一般家庭での水の使用について

Capture_P09 eco_663 v2-01_1一口に水と言っても、飲料水において2都市は全く異なった文化を持つ。例えば東京では公共トイレや駅まで屋内外でどこでも蛇口を開栓すると飲用可能な水を確保することができる。東京都水道局は飲料水を濾過、供給するために様々な取り組みを行っている。東京都の水資源の約80%を占める利根川水系の河川水を浄化する全ての浄化プラントに高度な水処理システムを導入し、安全な水道水を供給している。

香港水務署(以下、WSD)のホームページによると、香港の原水は完全に精製されてから香港市民へ届けられる。香港の水処理技術は世界最高水準である。水を口にする前に沸騰させる必要はあるものの、その水質は飲料水に関するWHOのガイドラインに完全に準拠する直接的消費に適したレベルである。WSDは随時、供給システムと処理プロセス全体の水質をモニタリングして、ホームページでは水に関する最新データを公開している。

IWA(International Water Association)の統計および経済面「2018年の家庭における特定水使用量」の報告書によると、東京は26位(226.6L/日)、香港は30位(213.3L/日)となっている。

東京都水道局の調査によると、東京の平均水使用量は1日1人当たり約230L。最も使用量が多いのは「トイレ(約64L)」、「風呂・シャワー(55L)」、「炊事(53L)」の順に続く。水の需要は経済成長と人口増加に伴って増加しており、今年から2027年の間にかけて最高600万㎥/日に達することが予想されている。節水を意識する日本人は多く、蛇口用の節水装置や水を再利用して衣類を洗ったり、庭に水を供給する器具を使用する人たちもいる。

日本と比較して香港の平均水使用量は1日1人当たり約130L。香港水務署による今年の小規模調査によると、節水対策を実施している一般家庭では、「まとめて洗濯機を回す(44.7%)」、「シャワー時間を短くする(44.4%)」、「歯磨きや手洗い、ひげ剃りの間は蛇口を締める(38.4%)」等の対策を講じており、平均して調査対象の世帯は2項目以上の節水措置を実施していた。

 

 

日本と香港における水の産業利用について

日本は世界中から多くの農作物や工業製品、繊維製品、木材等の多品目を輸入している。輸出国では日本への輸出のために農産物だけでも約50億㎥の水が使用されている。食品と工業品等を合わせると世界で約400億㎥の水が使用されているという。2017年の香港の淡水消費量は933MCMですべての貯水池の総貯蔵容量の1.6倍であった。2016年と比べて僅かに0.3%減少した。

WSDが数年間に渡って水の需要を満たすために、水の供給を積極的に調整、管理してきたことで地域社会の水に対する意識は向上している。結果として近年、経済成長および人口の増加にも関わらず、年間の水の需要は約950MCMに維持された。

香港において真水は主に国内セクター、サービス業、産業用で使用されているが、国内セクターが最大の顧客層を構成しており、2017年3月末現在で香港内の顧客アカウントは約250万となっている。これは現時点ですべての顧客の9割に相当する。

消費量については、2017年の真水消費量のうち国内セクターによるものは54%で、サービス業と産業に関しては2017年3月末現在、約238,000の顧客が存在している。2007年から2017年の間に工業部門の真水消費量は24.7%減少したが、サービス業の消費は期を通じて安定している。

※L = リットル、㎥ = 立法メートル、MCM = millon cubic meter = 100万㎥

 

 

水資源と水資源施設

Capture_P09 eco_663 v2-01_2香港の水源について

WSDは香港市民に水を提供する政府の1部門である。自然湖や河川、実質的な地下水源が無いため、香港は水の供給に関して常に苦慮してきた。年間降水量は平均で2398.5mmだが、2017~18年の飲料水の平均消費量は1日あたり27,200万㎥と、需要を満たすのに十分な数字ではない。

香港の水処理は、まず生水に化学薬品を投与し、水中の比較的大きな粒子や不純物を取り除くために清澄化装置にかける。その後、細かい粒子を濾過するフィルターに通して、消毒した後に消費者へ供給する仕組みになっている。その過程で少量の残留塩素がパイプを通過する水の細菌増殖を抑える役目を果たす。尚、水には歯科保護のためにフッ化物が添加される。

香港の主な水源は3つある。1つ目は降雨による自然採集、2つ目は広東省から来る東江の水、3つ目はトイレの洗浄用の海水である。

2017年時点で総使用量の12%を供給しているのが自然の貯水池だ。水資源の不足により、船灣(PloverCove)には香港で初めて海の貯水池が建設された。1967年に完成した初期計画では、ダムによる堰き止めと吐露港の入り口を排水して造られ、1億7000万㎥の貯水量を有していたが、1973年にダムの整備によって貯水量は2億3000万㎥に増加した。1978年に完成した糧船湾の施設も同様だが、より大きなスキームにより2億8100万㎥の貯水量を有する。香港の貯水池における総貯蔵容量は、5億8,600万㎥だという。

総使用量の52%を占める香港にとって主も大きな水源は、1965年から広東省との提携によって供給されている東江の水である。2017~2018年にかけて6億6400万㎥が供給されたが、東升~香港間の給水システムは、最大で年間11億㎥を提供することができる。

そして3つ目の水源であるトイレ洗浄用の海水が水の総使用量に占める割合は昨年で22%だった。配電幹線、ポンプステーション、サービスリザーバーが個別にネットワークを持つ海水供給システムが導入されており、2017~18年にかけて、1日あたり約756,000㎥の海水が供給された。

香港の水道事業における戦略は、水の需要管理と供給管理の2つの主要な分野に焦点を当てたものだ。前者におけるイニシアチブの1つに、水の保全に関する公的教育を強化したことが挙げられるほか、節水装置の普及促進、水漏れ対策の強化、トイレ洗浄のための海水使用の拡大などが進められている。また供給管理においては水資源の保護を強化し、淡水需要の増大、珠江デルタ地域の水資源争奪などの変化する状況の中でも、気候変動の影響を避けつつ安定した供給を確保するため、海水の淡水化、家庭排水と産業排水のリサイクル、雨水の採取等、脆弱性の低い代替水源の開発が進んでいる。

 

 

持続可能な開発と香港の将来計画

1.水の供給に関する保証

当局は信頼度の高い24時間無休の供給を基準とし、住民への水源を確保するための多面的なアプローチを長年行ってきた。2013年の香港の淡水総需要は9億3,300万c㎥。人口の増加と経済発展に伴い、今後2030年頃には11億㎥に増加することが予測される一方、気候変動の影響も深刻だ。過去10年間の生産量からするとすでに香港の水資源は気候変動の影響を受けつつあるとされ、中国本土の人口増加と極端な干ばつが続けば広東省の各都市で水資源の競争が激化しかねず、香港にとっては大きな課題となるという。

※c㎥=立法センチメートル

 

2.新しい水資源の探索

WSDはすでに将軍澳地区を対象にした、高度逆浸透技術を用いた海水淡水化プラント建設の計画と調査研究を開始している。漸進的な追加設備の拡張を行うことで、計画が実現すれば将来的には域内の全生鮮水需要の5%~10%を供給できる見込みだ。計画と調査研究の範囲は、技術的実現可能性とコスト効果の詳細な評価、実施戦略とプログラムの策定、予備設計、および淡水化プラント建設のための様々な技術影響評価等が含まれ、2015年初めに大部分が完了し、現在最終的な詳細設計が行われている。

また石湖墟下水処理場からの処理排水を、需要の大きい場所でのトイレの水洗等、飲用不可能な用途の再生水に変換する研究も進行中であり、将来的にこの再生水源は、香港の総水需要の約2%を満たすことになるという。WSDは、そうした非飲用用途の水源の技術水準と水質基準を確立し、適切な形での実施を目指している。

 

3.水の保全促進

世界の他主要都市とは異なり、香港の1日1人当たりの平均水と水洗水の使用量はそれぞれ130Lと90Lで、シンガポールやロンドンなどの大都市圏よりもはるかに高い。より高い保全意識と水利用効率とを結びつけるためにも、現在は低学年から水の保全に関する概念と知識を教える教育が実施され、10Lの節水を目指すキャンペーンと、蛇口用の節水装置の無償配布を組み合わせて行われている。制御装置は平均して蛇口からの流量を20%削減し、毎分約2Lの節約を可能にする。小型で設置も簡単なこのツールは当初3万台導入されたが、現在は9万台まで数を伸ばしており、普及次第で全体の水需要を削減する、非常に費用対効果の高いものとなりそうだ。2014年8月以降は住宅局の協力を得て、公共住宅の約25,000世帯に節水装置を導入することにも成功している。

民間部門では給水効率のレビューが実施され、指定の政府機関や飲食業、ホテル、クリーニング工場等、大量の水を消費する場所におけるよりよい水の利用方法が模索されている。すでに10万台の水流制御装置を地域の学校や政府の建物に普及させるプログラムが始まっており、2014年8月には、シャワーと蛇口用の水流制御装置を対象とした、任意の節水効率性表記制度も開始された。

 

4.水の利用効率の向上

水道幹線の3,000kmの交換と補修の15年計画は、2015年に完了する見込みである。計画では資本支出と道路建設工事を削減し、交通混乱を緩和することを目指すテクノロジーベースのスマートウォーターネットワーク戦略が採用され、他国の経験と成果に基づいた、水の損失を減らすための最も効果的で経済的な先端技術が導入される予定になっている。この戦略の下では域内の広いエリアが、水の出入りがある水道網全体の離散的計量セクションから成る区域計測エリア(以下、DMAs)となり、最先端技術でパイプ内の流量、圧力、その他の測定基準等の油圧データを常に監視、分析し、リアルタイムのデータ収集を行う。

簡易な措置で水漏れが改善しない場合、DMAsの円滑な運用を維持するために、機能不全の給水幹線を修理、交換する作業を進めることになる。この戦略の適用によって、単に最新の技術を用いた新たな策を確率するだけでなく、コストの高い地下建設工事等、公衆への混乱を少なくするなどの付随的なメリットにも期待ができるという。

 


公式サイト Water Supplies Departmentより参照
ウェブ:www.wsd.gov.hk

 

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