2018 謹賀新年特集 Part 1

2018/01/10

香港市場を占う―2018年の経済展望

 

2018年、香港市場で勝ち残るカギは「新しい」

1伊藤 亮一(いとう りょういち)
日本貿易振興機構(香港)所長

1986年、日本貿易振興会(現日本貿易振興機構)に入会後、本部では一貫してアジアの調査畑を歩む。
海外はフィリピンに2回駐在経験あり。香港事務所長を2015年8月から務める。

昨年の香港市場の経済から今年の香港の経済見通しについて、日本貿易振興機構(香港)の所長伊藤氏に話を伺った。

1.昨年の香港市場の経済を振り返ってみて、香港はどのような市場だとお感じになられますか?
 香港経済を一言で表すと「トランザクション・ビジネス」。要は「モノ」「カネ」「サービス」を右から左へ流す。その際にどのような付加価値をつけることができるのかが重要です。加えて中国の影響に左右されやすくなっていることを感じた一年でした。

 GDPの構成比で見てみますと、一番大きいウェートを占めているのが「卸・小売・貿易」です。過去数年のトレンドをみましても、小売の状況が良い時は香港経済の状況も良いです。好況時には中国本土からの旅行客が増えています。ところが2015年に中国人の香港への渡航回数制限が出された際には、香港の小売売上に大きな影響が出ました。大手宝飾店が何店舗か閉鎖に追い込まれたのは記憶に新しい所です。

 また、香港はアジアの金融センターと言われます。今までのトレンドは海外から香港にマネーが入り、中国へ流れるケースが多かったのですが、中国から香港を経由して海外へ流れていくマネーがフローベースで見ると大きくなりました。また中国マネーが香港の不動産を買い漁っている状況も報道されています。中国が香港の金融・不動産市場に与える影響が大きくなっています。

2.昨年の香港市場をけん引した主な業種や業態、今後、香港市場のビジネス機会として考えられる業種・業態および事業展開する上で注意するべき点について具体的に教えて下さい。
 香港のGDP構成比の上位4項目は「卸・小売・貿易」、「金融・保険」、「行政・社会サービス」、「不動産・プロフェッショナル・ビジネスサービス」です。どの項目でも留意しなければならないのは、家賃高騰や人件費高止まりの影響です。例えば、日本から進出している日本レストランは増加していますが、閉店している日本レストランも多いのです。閉店している原因の一つとしては、やはり家賃高騰や人材の確保が難しいことが挙げられます。また香港は自由なマーケットですが、逆説的に言えば競争が激しいということですから、競争に勝ち残れない日本レストランも出てきます。現在、香港内の日本レストランは1280店舗あり、国籍の付く料理では中国に次いで第2位です。ただ、日本レストランは飽和状態ともいえる状態ですので、不動産・人件費の「2高」をクリアしたとしても、他店との差別化という次なる課題が待ち構えています。

 香港は常に新しいものを追い求める土地だと言われています。言い方を変えると香港人は飽きっぽいのです。常に新しものを追い求めていくという点において旧態依然としたビジネスモデル、換言すると10年前のビジネスモデルでそのまま生き残れるほど、生易しい市場ではないと思います。常に新しい発想を持ってビジネス展開していかないと、駆逐(くちく)されてしまいます。そのあたりも注意しなければならないポイントだと思います。

 日本から進出している外食産業には中小企業が多く、資金面で厳しい状況に直面します。そのため直接経営に乗り出さず、香港へ商品やノウハウを輸出して香港側のパートナーに販売・提供してもらうケース、つまり輸出やFC展開でリスクを軽減する動きが増えています。

 香港への輸出品目内訳としては、再輸出用の商品を除くと農産物、水産物が多いですね。今まではどちらかというと水産物と加工食品が主流でしたが、最近は牛肉が7位まで上がっていますし、10位台前半には果実類などがランクインしています。地方自治体が物産展や商談会を通じて地方の素晴らしい産品を香港側に紹介している効果が数字に表れ始めているとみています。

3.香港内での事業展開において日本企業と地場企業を比較した場合、地場企業に負けないネットワーク構築や事業展開をするためにはどのような課題が挙げられるとお考えですか?
 香港企業とパートナーシップを結ぶというのも一つの考え方ですが、香港にはない新しい「モノ」や「サービス」を持っていれば、香港側からアプローチしてきます。つまり香港にはないものを持ち込むということが一つの伴になると思います。逆に日本側は新しいものを常に提案していく形にしていかないと香港の中ではなかなか生き残っていけないのかなと思います。

4.今年3月末までに「日本産食材サポーター店」200店舗を目指しているとおっしゃっていましたが、状況は?また、香港の日本産食材を取り巻くビジネス機会をどのように捉えるべきでしょうか?
 「日本産食材サポーター店」は日本で生産された食材を取り扱うレストランや小売店を認定する制度です。香港では昨年12月15日時点で、649店舗が「日本産食材サポーター店」に認定されました。認定店舗数において香港は世界で一番多く、次いで中国本土(629店舗)となります。香港における認定店舗数のうち、レストランのそれは約160店舗となります。

 香港では多店舗展開しているスーパーマーケットが認定されていますので、世界一の認定店舗数となっていますが、これからはレストランの数を増やしていきたいと思っています。統計上、日本レストランは1280店舗あるとされていますが、日本産食材を扱っていない店もあるのです。日本産食材を使用している日本レストランを数多く認定して、サポーター店制度をブランド化したいと思います。加えて、日本産食材を取り扱う中華レストランや西洋レストランを開拓する、あるいは日本産食材未使用のレストランに取り扱ってもらうようにすることが我々の使命だと思っています。それが実現すれば、日本産食材のすそ野は飛躍的に広がります。

5.昨年の香港市場経済を総括した上で、今年の香港の経済見通しについて具体的に教えてください。
昨年の香港のGDP成長率は3%台後半に伸びると思います。先ほども申し上げました通り、香港経済は中国と密接な関係にあります。香港で買い物する中国人の消費行動は香港の小売売上からみると極めて重要です。その意味で香港に入境する中国人旅行者が引き続き好調かどうかが、香港消費市場を占うポイントになるででしょう。

 外食産業に関しては、日本レストランが閉店しても次から次へと新店がオープンしていますので、日本レストランの絶対的な数字が大きく減少することはないと思います。ただ経営の形態が変化し、日本資本の関与はおそらく少なくなるのではないかと思います。そこはどうしても香港人あるいは香港在住歴の長い日本人が引き継いでいく形になるのではないかと考えています。形態としては、一般的な日本レストランは飽和状態ですので。寿司や酒バーなど専門性に特化した店舗が増えるのではないかと予想します。

日本貿易振興機構(香港)
住所:Room 4001, 40/F., Hopewell Centre, 183 Queenʼs Road East, Wan Chai
電話:(852)2526-4067
ウェブ:https://www.jetro.go.jp/jetro/overseas/cn_hongkong/

香港でのビジネス支援ならインベスト香港へ

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ヴィンセント・タン(Mr. Vincent Tang)
香港特別行政区政府インベスト香港(投資推進局)局長代理
2017年11月、インベスト香港(投資推進局)の局長代理に任命される。インベスト香港の中国本土、台湾、海外の30ヶ所の投資促進事務所とコンサルタントのネットワークの支援・管理部門、グローバルイベントの支援・管理部門及び局内の業務管理部門を統括する。

海外および中国本土企業に香港特別行政区政府の直轄機関が事業の立ち上げ、拡大に至るまで、各種アドバイスや支援サポートを行っているのをご存知だろうか。今回はそのインベスト香港(投資推進局)の局長代理ヴィンセント・タン氏に話を伺った。

1.香港の利点とは
企業が香港を選ぶビジネスメリットについて、タン氏は以下の点を挙げた。
「香港は優秀な教育と医療、エキサイティングな文化を兼ね備えた、アクティブに働くのに最適な場所であり、コンパクトなサイズ、華やかなナイトライフと美しい景観、安定した治安とフレンドリーな国際社会が揃った、外国人にとってアジア有数の暮らしやすい都市です。そして香港は法律やインフラ、税金、資金調達などの面においても、非常に成熟したビジネスの拠点として機能します。アジア諸国に便利な立地も強みの1つです。また中国政府が一帯一路の構想を推めるにつれ、そのインフラストラクチャーのもと、多くの国が中央アジアの新しい市場と結びつき、大きなチャンスが生まれることでしょう。」と語った。

2.インベスト香港のサポートサービス
 インベスト香港は海外や中国本土企業の香港進出支援を行う香港特別行政区政府の一部局として、2000年に設立されて以来、海外および中国本土企業の香港進出も積極的に支援しており、香港でビジネスを成功させるための無料のアドバイスや、カスタマイズされたサービスを提供してきた。世界30都市に事務所を構え、日本では東京と大阪に事務所がある。その使命はアジアを代表する国際ビジネスセンターとして香港を強化し、経済的かつ戦略的に重要な海外からの投資を誘致、維持することである。

同局は、プロジェクトの計画段階から事業の立ち上げと拡張まで、下記のように企業を支援するための多様なアドバイスとサービスを無償で提供しているとのこと。
1)香港のビジネス環境に関する最新情報の提供
2)ビザ申請のサポート
3)ネットワーク・イベントおよびサービス・プロバイダの紹介
4)香港での事業開始/拡大に関するPR広報活動の支援

また、所属スタッフは、ビジネス・専門サービス部、消費財・小売部、クリエイティブ産業部、金融サービス部、フィンテック部、情報通信技術部、科学技術産業部、接客サービス・旅行産業部、運輸・工業部といった9つの専門セクターチームによって編成されており、サポート体制は万全だ。

「香港でビジネスを始め、いずれその市場を超えて、急成長するアジア市場に参入する計画のある日本企業を支援する準備も整っています。」と、タン氏は自信を見せた。

3.2017年の概況
 昨年の企業年次調査によれば、香港は引き続きアジアエリアのオペレーション管理をする拠点として企業に好まれていることが分かった。そこにはシンプルな税制と低い税率、情報の自由な流れ、活発な港があること、地理的な位置と、汚職のない政府の存在も寄与しているという。

香港で事業を展開する海外および中国本土企業の数は、国勢調査と統計調査等の結果によると、2017年には8,225社と、前年同期から3%増加。回答した8,225社の企業のうち地域統括本部を置いていたのが1,413社、地域本部を置いていたのがと2239社、現地法人を置いていたのは4473社だった。出身国別に見ると、日本が1,378社で1位、次いで米国、中国本土、英国が続いた。主な事業は、輸出入貿易、卸売業、小売業、ファイナンシングおよび銀行業務、ビジネス&教育サービスなどだった。世界経済の不透明感にもかかわらず、20%の企業は今後の事業に自信があり、今後3年間で、スタッフの増員、ビジネス機能の拡大、または新しいビジネスによって、既存のビジネスを拡大する予定だと答えたといい、香港経済の活況が伺える。

4.“2018Start me up HKフェスティバル”
2013年に開始されたStart me up HKは、香港のスタートアップエコシステムを促進し、起業家コミュニティを海外のスタートアップコミュニティと結びつけるために、同局が主催しているイベント。

間近に迫った1月29日から2月2日まで、香港コンベンションホール&エキシビションセンターにおいて開催が予定されており、会期中は起業家精神や破壊的イノベーションの未来を探り、基調講演、対話形式のハウツーセッション、ハッカソンを開催するほか、フィンテック、ヘルステック、スマートシティテクノロジー、モノのインターネット(IoT)、リテールイノベーションをはじめ様々な分野の事業に精通した創業者や投資家による助言が得られるイベントを展開する。

インタビューの最後、タン氏は、「Start me Upフェスティバルに奮ってご参加下さい!最後になりますが、PPWを読んでいる皆様へ、新年のますますのご多幸をお祈りします。」と語ってくれた。

香港特別行政区政府 インベスト香港(投資推進局
住所:25/F., Fairmont House, 8 Cotton Tree Drive, Central
電話:(852)3107-1000
ウェブ:www.investhk.gov.hk/ja/index.html
メール:[email protected]


 

2018謹賀新年 新春年始号ご挨拶

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

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