特集:祝Sagarntino Italian Restaurant 10周年記念 特集 1

2017/09/20

安田氏にインタビューオーナーシェフ

この度、中環で10周年を迎えたサグランティーノのオーナーシェフ安田氏にお話しを伺った

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PPW:まずは、10周年おめでとうございます。率直なご感想をお願いいたします。
安田氏:正直、10年も続くとは思いませんでした。10年間お店に足を運んでいただいたお客様に大変感謝しております。

PPW:中環のLKF付近で、レストランを10年続けるという事は、御店の周りのお店が入れ替わっている事からも良く分かるように並大抵の事でないかと存じます。香港で10年続く秘訣はなんでしょうか?
安田氏:今の物件を探すのに半年をかけました。毎日約3時間、自分の足で納得いく場所を探し続けました。レストラン経営学で最も有名な言葉に「Location、Location、Location」というのがあります。経営の成否の80%は場所で決まるということを学びました。ここでいいかと妥協することがありましたが、目を閉じてふっと来ていただくお客様の層を想像してみるとやはり納得のいく場所でないというケースが多々ありました。

探しはじめてから半年後、不動産会社の方からの推薦もあってLKFという場所周辺の飲食店舗とその客層をチェックするようになりました。自分の勘ではありましたがこの周辺に店を出すのが今まで自分がやってきたものが出せるのではないかと数日間で確証しました。

この10年で家賃の値上がりが激しく周辺のいろいろなお店が開いたり閉じたりしてきましたが、続いているお店で共通していることが1つだけあります。そのお店に行かないと絶対食べられないおいしい1つのものを持っていることです。自分の店でそれがどれにあてはまるかは月末の売り上げを見れば一目瞭然です。これはお客様が決めることなのでその絶対的に他にはない1つの商品を持てたことに本当に感謝しております。

PPW:10年で変わったことはなんでしょうか?(環境、ご自身)また、逆に変わらないものはなんでしょうか?
安田氏:変わったことは、店の家賃が倍になったこととメニュー品目が倍になったこと。前者は自分の意図的なものではなく止む無く変わったことで、後者は自分が意図的に変えていったものです。家賃のことは話出すとキリがないので割愛しますが、メニューについてはかなり努力をしました。開店当初は前菜からデザートを含めてまでも30品目足らずでしたが、現在はランチのメニューも含めると100品目あります。これは自分が3年以内に100品目にする目標を掲げていたので目標通りだと思います。なぜ、100品目にこだわったのか?リピーター客を飽きさせないのが最大の理由です。開店前に香港内の自分の店の価格帯のお店はほぼ全て食べ歩きました。クオリティーと価格はほぼ似たり寄ったりだったので品数に目をつけました。そこで100という数字が見えてきたのです。「Sagrantinoに行ったら絶対あるよ!」とお客様に言ってもらいたかったのと、「もう全部食べたし飽きた」と言ってもらいたくなかったことが100品目という数字に現れました。

変わらないことは、美味しいと言ってもらいたい自分の気持ちです。この10年間小さなことではありますが、やり続けてきたことがあります。それが《本日のおすすめの一品》です。メニューを試行錯誤しているときから100品目を作り上げてから以降も続けてきました。そのおかげで今年そのレシピ本を出版することまでできました。誰に言われることもなくただ黙々と続けてこれたのは本当に料理が好きなだけでなく、お客様を喜ばせたいというもとから持った本性だと思います。これは親に感謝しなくてはなりません。

PPW:10年間で一番辛かったことは何でしょうか?また、それをどのように克服されましたか?そして、一番うれしかったことは何でしょうか?
安田氏:辛かったことは、スタッフとの信頼関係が一度崩れたことです。レストラン経営は3つの信頼関係で成り立っていると思います。お客様、スタッフ、業者。この3つの信頼関係がうまくいっていればほぼ経営は安定するのです
が、1つでも崩れるとなかなかうまく回りません。その1つがスタッフとの信頼関係でした。自分の料理に対する理想とサービスに対する理想がスタッフと共有化されていなかったのです。何度となく料理の作り方やサービスのやり方で衝突することがありました。異国の地で異国の人を雇うのだからと自分に言い聞かせてきました。決定的だったのは同じお客様に同じクレームを言われて、それを直そうとする姿勢を全く見せなかったことでした。しばらく考えましたが、自分で城を持った限りは自分のやり方でやる決心をしてスタッフを大幅に
入れ替えました。苦渋の決断でしたが、それが転機となり店全体の雰囲気のみならず停滞していた売り上げも大幅に上昇しました。

うれしかったことは数限りなくあるのですが、一番最初に来ていただいたお客様が今でも月に何度かご来店していただいているということです。10年間途切れることなく。自分は10年前にそのお客様に何をお出ししたかまで鮮明に
覚えております。その“カルボナーラ”をそのお客様は10年経た今でも食べに来ていただいているのです。沢山食べていただいて高いワインを何本も開けていただいたお客様ももちろん経営者的には嬉しいことなのですが、経営者である前に料理人である自分にとっては、好きな料理を愛し続けていただけるお客様がいることほど嬉しいものはないんです。
PPW:今後の展開・目標・抱負をお願いします。
安田氏:1店舗目が成功すると2店舗目はとよく聞かれるのですが、同じ形態のお店をまた持とうとは全く考えていません。ここで出せる味は、ここの店に来ないと味わえないと思っていただきたいのが正直な気持ちです。2号店ができて、「味、違うよね?」とか「サービス悪くない?」とか自分の見えない所で言われることが万一あったとしたら、とても耐えられないのです。自分の性格かもしれません。イタリア時代にローマに行ったときあの有名店「Ristorante Sabatini」にお邪魔しました。生ハムを注文した際、なんと80歳は越えているあのオーナーが自ら手切りでサーブしに来てくれました。日本に支店を出すほどですから片言で「どうぞ」と日本語で出していただいたのです。自分の脳裏にはそれが鮮明に焼きついていて、一生自分も店に立とうと思った瞬間でもあったわけです。2店舗目という発想がないのはそこから来ているかもしれません。

但し、お客様によく言われるのが「食事の後、もう一杯ワインを飲める場所が欲しい」ということです。これは開店以来、沢山のお客様に言われ続けて来たので、昨年から自分でも真剣に考えるようになりました。もう一杯ワインの飲める場所。自分はワインではなく料理が専門なので、せっかくならワインに合うおつまみでお客様にもう1回喜んでもらおうと、最近考えるようになりました。香港の家賃事情にもよりますが、近い将来違う形態で“2店舗目”が実現できたらと考えております。

PPW:御店のお得意さん・弊紙読者・まだ来店された事がない方へ一言お願いします。
安田氏:実は、私は脱サラです。10年程勤めた金融機関を経てこの世界に飛び込みました。最初は不安だらけで、私がこの世界を目指すと言ったときは、周りからも相当馬鹿にされました。ただ、幼少のときから料理が好きでいろいろな場面で料理を提供する場があったのでレストランという目標を持つことには何ら抵抗ありませんでした。ただお店を持つということは、お客様に来てもらわなければ商売として成り立ちません。開店する直前の10年前にある占い師のところに行きました。「今は不安だらけでしょう。顔が暗いですよ。でも、あなたはお客様に助けられる。」とはっきり言われました。そして昨年の夏に全く同じ占い師のところを訪れました。「自信に満ちてますよ。顔が明るい。お客様に感謝しなさい。」と。顔に出ているということが何を隠そう本当にお客様から支えられてきた自信によるものだと思っています。

これからもスタッフ一丸となって皆様に喜ばれるお店を目指してまいりますので宜しくお願いいたします。

PPW:ありがとうございました。

広告デザインで見るSagrantinoとPPWの 歴史

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