特集:広東・香港、そして日本の冬の味 1

2017/02/21

特集

春近し…でも、まだ間に合う
食べておこう!広東・香港、そして日本の冬の味

初めて香港で冬を過ごされた方の中には「暖かいと聞いていたのに、けっこう寒い日もあるのね」と、意外に思われた方も多いのでは。そう、亜熱帯・香港にも短いながらも「冬」はあるのだ。そして冬の香港には、体を温めてくれる美味しいものがいっぱいなのだ!寒い夜は日本の冬を思い出す、という貴方、冬らしい香港グルメを食べ逃してしまったという貴方、春は近いとは言え、まだまだ間に合う!この特集で貴方なりの「香港で味わう冬の味覚」を見つけてみては。

 

香港庶民の冬の味覚を賑やかにいただく

香港庶民の冬の味覚
煲仔飯

煲仔飯

おこげの香ばしさがたまらない
冬の夕暮れ時から夜にかけて、油麻地(ヤウマーデイ)の廟街周辺には、冬の夕暮れ時から夜にかけて路上に行列ができる。一軒の店にではなく、数軒の店にそれぞれ行列ができている。長い列は30mにもおよび、MTR油麻地駅入り口にまで届きそうだ。この行列は「煲仔飯(ボーデャイファン)」の人気店へと続いているのだ。もちろん油麻地だけではなく、香港のあちこちでこんな風景が見られ、店先にズラリと並べられた爐で一鍋一鍋炊き上げられる煲仔飯の光景は冬の香港の風物詩ともなっている。

香港庶民が愛する煲仔飯の「煲」とは、小振りの素焼き片手土鍋。煲仔飯だけでなく、広東の庶民料理では「魚香茄子煲」や「啫啫雞煲」など色々な土鍋料理に使われる。保温性に優れた「煲」を使った料理は熱々が冷めにくいのが特長だ。

煲仔飯に使われる米は“しっとり”とした食感と“しっかり”とした食感を出すために新しい米と古い米とをブレンドしている。この米の上に、排骨(豚の骨付きバラ肉)、鶏肉、牛肉、臘腸(広東ソーセージ)、魚、鰻、カエル肉、などの具がのせられ、炭火の爐で炊き上げられる(現在はガス爐も多い)。おこげのにおいも香ばしく、運ばれて来た煲仔飯には甘い醤油だれをかけて、火傷に気をつけながら熱々のうちにいただこう。香ばしい「おこげ」は土鍋ならではの冬の香港名物・煲仔飯、この時期必食のメニューだ。

庶民の名店「紹華小廚」

煲仔飯

筲箕湾(サウケイワン)の愛秩序湾街市内にある紹華小廚は煲仔飯で人気のお店。定番の煲仔飯以外に、毎年新しい食材の組み合わせを考案し他では味わえないオリジナル味の開発に力を注いでいる。今回紹介するのは、数種類のキノコとガチョウのレバーを合わせた「野菌鵝肝煲仔飯」。香り豊かなキノコと濃厚なレバーの味が炭火で炊いた飯にしみて食欲をそそる。お好みで潤腸(豚肉とレバーのサラミ)を加えると更に味わい深い。

紹華小廚
住所:Shop CF3, Oi Tung Market, Aldrich Bay, Shau Kei Wan
電話:(852)8199-8188
時間:18:00~23:00

在住日本人にもお馴染み
火鍋

火鍋 火鍋

打邊爐(ダァピンロー)みんなで囲めば温かい!
中国では1000年以上の歴史を持つといわれる「火鍋(フォーウォー)」。今や24時間、365日、香港のどこかで火鍋がグツグツと湯気をたてているといっても過言ではないだろう。ネットで検索すれば、いつでも火鍋レストランを見つけるのに苦労することはない。とは言え、やはり寒い季節の火鍋は格別だ。

香港人が「打邊爐(ダァピンロー)」と呼ぶ火鍋を好む理由は二つある。ひとつは人とのコミュニケーションに最適な食事スタイルだということ。人々は会社の同僚達、友人、家族や親戚達など、大勢で一つの鍋を囲み、思い思いに鍋をつつき、飲み、語り、笑う。あまり近しくなかった人同士も、一緒に「打邊爐」すれば打ち解けた関係になれることだろう。

火鍋

もうひとつは「健康的な食事」と認識されている、ということ。鍋料理は揚げ物料理に比べヘルシーで、具材の旨味や栄養素はスープに溶けてさらに美味しくなる。サラダではさほど量を摂れない野菜類も、火鍋なら様々な種類をたくさん食べられるというもの。ふだん野菜不足に陥りやすい香港での食生活ではありがたい存在だ。

基本的には日本の鍋料理と似ている火鍋だが、香港のレストランで食べる火鍋はそのバリエーションの多さに驚かされる。スープは魚、鶏や豚骨ベースのもの、薬膳スープ、サテー味、四川風の麻辣味などから自由に選べるタイプの店が多く、真ん中を仕切った鍋で2種類の味を同時に楽しむこともできる。具材は日本の鍋とは比べものにならないくらい多種多様だ。牛、羊、豚、鶏などの肉類や魚介類はもちろん、野菜も日本では鍋の具材としては馴染みの薄いクレソンやレタスなど種類豊富。そしてフィッシュボールや餃子・雲呑、豆腐や湯葉の揚げたもの、魚皮、ソーセージやランチョンミートなど、香港独特といえる具材も一般的だ。「なんでもござれのごった煮」のようだが、これはこれで意外な美味しさを発見できることも多い。

つけだれや調味料は各自で調合できる店も多いので、自分だけの「オリジナルつけだれ」のレシピを開発してみるのも楽しいだろう。

 

 

ふるさとを想いながら温まる味

寒い日にはみんなで! うどんすき
自然や
こだわりの名物料理で身も心も温まる!

自然や

大阪・堺が発祥といわれる「うどんすき」。今では日本全国で愛されているこの料理は、当然ながら寒い季節に味わいたいメニューだが、ここ香港でも本格うどんすきが楽しめる店がある。

本紙広告でもお馴染みの「自然や」では、鯖の棒鮨や厳選された刺身などを始めとする魚料理、各種揚げ物など、お酒にピッタリの料理の数々が、日本と変わらぬ雰囲気の中で楽しめる。この店の名物「カレーうどん」と並んで、うどんすきは冬の人気メニューの代表格だ。8種類の材料から丁寧に取られた黄金色の出汁でいただく魚介や肉、野菜などの具材はボリュームたっぷりで、仲間や家族と楽しむのに最適だ。日本酒を酌み交わしながら、うどんすきを囲めば、文字通り心も身体もほかほかと温まること間違いない。

自然や

同店にはもう一つオススメしたいメニューがある。「牛タン味噌煮込」だ。日本の仙台は自他ともに認める“牛タン料理の本場”として有名だが、実は同店の大将はこの仙台出身。その大将の牛タン味噌煮込は驚くほどに分厚く、インパクト十分なのだ!しかも数時間煮込まれ、甘辛い味噌味がしっかりしみ込んだ牛タンは、口に入れればとろけるような柔らかさ。濃いめの味はビールにも酒にも、白飯にもと、相手を選ばない美味しさ。「さすが仙台出身の大将のこだわり牛タン」と、思わず唸ってしまう逸品をぜひ味わってみては。

カウンターで一人愉しむのもよし、大勢で賑やかに鍋をつつくもよし、日本が恋しくなったら足を運んでみたい北角(ノースポイント)の名店だ。

自然や 自然や

自然や
住所:36-38, G/F., City Garden Shopping Ctr., North Point( MTRフォートレスヒルB出口から海側へ徒歩4分)
電話:(852)3691-9626 日本語予約:(852)6110-5579
時間:12:00~15:00、18:00~23:00

 

日本の「米」にこだわる 釜飯
玄穂
旬の旨みと香りを土鍋にぎゅっと濃縮

玄穂

日本人の味覚を刺激する「米」と「酒」をコンセプトにした正統派日本食店が、銅鑼湾(コーズウェイベイ)に店を構えて1年を迎えた「玄穂」だ。オーナーシェフの安東伸一氏は、日本有数の高級料亭で修行を積んだのち、在香港日本国総領事館にて公邸料理人を務めた経歴を持つという、政府高官や各国VIPらをもてなしてきた折り紙つきの料理人。伝統的な手法をベースに和食材にも西洋の調理法を取り入れるなど、「美味しさ」への追求は尽きない。味は言うまでもないが、盛り付けの細部にまでプライドが感じ取れ、キラリと光るセンスは、他店舗の料理人からも支持を集めるほどだ。

なかでも、季節の食材とともに炊き上げられる「釡飯」は絶品で、今の時期は北陸で水揚げされ、当日中に香港に空輸される鮮度抜群の赤睦(のどぐろ)を使用した「赤睦(のどぐろ)土鍋ご飯」(HKD358)を提供中。風味豊かな「真鴨米」に赤睦のとろける脂が相まった逸品は、口に含んだ瞬間から香りが鼻に抜けるまで、言葉では表現できないほどの絶妙のハーモニーを奏でる。食感と香ばしさを図ったように鍋底に作られる「おこげ」を楽しみにしているファンも多く、香港ではなかなか出会えない約30種の日本各地の厳選地酒も美味しい料理とムードにいっそう華を添える。

玄穂

カウンター6席、テーブル席2つと落ち着きのある空間は、大切な方へのおもてなしにも重宝する。ディナータイムが終わる遅めの時間からは、安東氏がひと手間掛けた「“インカのめざめ”を使った特製ポテトサラダ」(HKD68)、自家製の「からすみ大根」(HKD168)などのアラカルトと、気軽に日本酒がグラス単位で楽しめるので、二軒目としてもふらりと立ち寄りたい注目店だ。

玄穂

オーナーシェフの安東さん

玄穂
住所:17/F., The L Square, 459-461 Lockhart Rd., CWB
電話:(852)2804-2004
時間:18:00~24:00(ラストオーダー 23:00)

 

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