クールジャパン特集6・仕掛け人インタビュー

2014/02/10

海外でも愛用したい!世界に広めたい!

「メイドインジャパン」を広める仕掛け人にインタビュー

ニーズとシーズのヒントを探れ!

これから海外に日本製品を広めていきたいと考えている人もいるだろう。
そのヒントを探るべく、香港・華南地区に日本製品を持ち込み、成功させた人にインタビューした。

シェフ、富裕層、学生向けのイベントを開催して「フロム福岡空港の魚貝類」の魅力を発信

渡邉大輔さんが福岡県で水産局に勤めていた時代は、魚場をめぐって争う漁師のけんかの仲裁も仕事のひとつだった。気性の荒い漁師に相手にしてもらうために金髪に染めヤンキー風のスタイルで勤務していたことや、漁師の生活を知るために漁村で寝泊りしたこともある。そして、「漁業者の所得を向上を図るためにはどうしたらいいか」と考えて着目したのが、販路としての海外だった。若い漁師や寿司屋の店主と「福岡お魚応援団」を立ち上げて、県産魚介類の魅力を発信する活動をスタート。アメリカのニューヨークのレストランで県産魚を使ったイベントも実施したこともある。

香港事務所では、「福岡県で朝水揚げされた魚貝類が夕方には香港のレストランで味わうことができる」という地の利を活かして、県産魚貝類の販売に注力する。富裕層を対象にクルーザーで県産魚貝類が味わえるイベントを実施したり、一流ホテルのシェフを福岡に招き本場の牡蠣を味わってもらったり、香港の大学生向けに県産魚を使った手巻寿司講座を開催したり…。シェフのニーズに合せた牡蠣をシングルシートという養殖法により提供し「絶妙な味わい」との評価も得ている。福岡県産牡蠣を取り扱う香港の一流レストランも増えており、香港に輸入される福岡産牡蠣は一昨年のゼロから昨年は1.5トンに、本年度は3トンとなる見通しだ。

渡邉さんは「福岡のおいしいものをいっぱい食べてもらうこと」をライフワークに掲げる。どこへでも身軽に飛び出していくフットワークの軽さは「趣味と仕事をセットにしているから」と笑う。フロム福岡空港の魚貝類拡販作戦の向こうに見据えるのは、福岡県の魅力を発信し、産地製品のブランディング化により、観光客を誘致することだ。2013年10月には香港と福岡間を就航しているドラゴン航空機の大型化が実現した。香港からより多くの観光客を運べるようになった。「いずれLCC(格安航空会社)を就航させたいですね」と話す。

福岡県香港事務所 所長 渡邊大輔

 

手巻き寿司講座

 

 

福岡県香港事務所
住所:Rm. 2509, 25/F.,
Bank of America Tower,
12 Harcourt Rd., Admiralty

 

中国製造の大豆加工食品を現地の人にも!苦戦した納豆は地道な活動が結実

香川県にあるホワイトフーズは、豆腐、油揚げなど伝統的な大豆加工食品等の食品メーカーとしてグローバルに事業を展開する。西尾食品はホワイトフーズが2002年に、製造拠点として珠海保税区に出資し設立した子会社だ。ホワイトフーズでは、当初香川県内の工場で製品を生産していた。しかし、全て手作業で丁寧に生産していたため、人件費等のコストがかかりすぎて競争力低下するという課題に直面。そこで、より人件費の安い海外で大量生産してコスト削減を図るため、経済特区である珠海へ進出した。1993年、まず珠海市内に西尾(珠海)豆製品を設立。この会社では油揚げ加工品(巾着、しのだ巻、味付油揚げ等)を主に生産していた。そして生産規模が徐々に増えて生産が追いつかなくなり、設立した会社が西尾食品だった。ここでは油揚げ加工品に加えて、納豆、その他冷凍食品等を製造する。順調に生産数量が増え2社合わせた従業員は最大1300人までに増えた。現在、両社は西尾食品として統合されている。

西尾食品では、中国で製造を開始した巾着類、味付油揚げ、納豆などについて、中国国内での販売も開始した。総経理の松原一之さんは「納豆の販売は簡単なものではなかった。日本人でも嫌いな人がいるのだから、今まで納豆を見たことも食べたこともない中国の人にとっては『食べて』というのが大変ハードルの高いものだった」と当時を振り返る。最初にスーパー店頭の試食コーナーで宣伝活動を行った。また、同社社員が「納豆は何か」「ネギを加えてご飯と混ぜて食べるとおいしい」など、納豆を紹介するパンフレット等を作成し、たくさん配布した。地道な活動の結果、少しずつ販売数量が増えていった。販売開始時に比べて現在3倍の数量の納豆(年間57万組:1組は3パック)が販売されている。「弊社で生産している納豆は匂いひかえめなので浸透しやすかったのかもしれない」と松原さんはにっこり。

しかし、同社の製品はまだ7割近くが日本への輸出だ。「現在日本円が安く中国から輸出する製品については価格を引き上げることが難しい。これからの展望としては中国国内での販売を増やすことだと考えている。そのために、中国における食品の安全管理制度でQS認証をより多く取得し、さらに多品種の製品を生産、販売できるようにしていくことが今後の課題となる」と松原さんは語る。

珠海保税区西尾食品 総経理 松原一之さん

 

 

 

 

 

日本健康素食

 

 

 

「楽しんで食べてもらいたい」その思いで日本の食文化を香港へ

コーズウェイベイ(銅鑼湾)で鰻、寿司料理を提供する湖舟。同店の大将の袖山さんは、父親も板前だったこともあり、4歳のときには既に「旨いものを作る人になりたい」と思っていたそう。

14歳で寿司屋で働き始め、初めて休みをもらったのが16歳のとき。「どこに行っていいのかわからず、街を歩いていたら小林旭のマドロスさんの映画にのめり込み、いつかは自分も船乗りになりたいな。と思った」と。23歳でチャンスに巡り会い、司厨長(船舶内の料理長)として船に乗る。が、ケガをして司厨長を退職。一時は長距離トラックの運転手として働いた後、遠回りもしながら縁あって来港、現在に至る。

大将自ら毎日旬の食材を仕入れている同店の人気の秘訣は、寿司飯にもある。私たちが目にする多くの寿司飯は、白色の中、同店の寿司飯は赤酢を使用している。そのため、褐色である。関東の赤酢と関西の千鳥酢、大将お気に入りのあら塩によって同店の寿司飯が作られている。しかし、赤酢は、コストが高く、シャリ切り(酢とご飯を混ぜること)も難しい。「最初に教わったのが赤酢を使用した寿司飯だった。まだ切れないのか。と怒られながらやっていたよ。」とのこと。

「楽しんで食べてもらいたい」という思いで自身も楽しんで作ることを心がけているそうだ。当時3歳の子が14歳になっても食べにきてくれるほど、愛され続けている大将の料理。「自分の店だけど、お客さんあっての店。だからお客さんの店だ。」と話す大将。それが長く愛され続けている秘訣なのかもしれない。

すし鰻 湖舟 大将 袖山富士男さん

Pocket
LINEで送る