特集:香港の原風景 東涌・大澳 1

2016/10/12

東涌・大澳

今も残る〝香港の原風景〞を探しに東涌大澳へ

英国植民地となり、約150年で急速な発展をとげた香港。極端に平地の少ないこの地域の島々にも太古から続く「海の民」の暮らしがあった。峻険な地形のために香港島、九龍、さらに新界地区よりも開発が遅れ、取り残されたかのような大嶼山(ランタオ島)。香港国際空港の完成を機に大きく変貌する東涌と、いまだに水上家屋「棚屋」が残る大澳に、〝香港の原風景〞を見つけにでかけてみた。

東涌・大澳

 

 

東涌(トンチョン)  Tung Chung
ランタオ島各地への拠点と閑静なベッドタウン
2つの顔を持つ街

東涌

古くは漢王朝の時代の遺跡も発掘されており、その後の南宋時代には、暴動を起こした塩の密輸業者と政府軍との戦いの場ともなったという歴史をもつ東涌(トンチョン)。この街の現代の発展は、香港国際空港の開業に伴い開通したMTR東涌ラインとともにあるといってもいいだろう。香港市街地から同空港への足としてできたMTRのエアポートエキスプレス(機場快線)と東涌ライン(東涌綫)。そして同ラインの終点として1998年に開業したMTR東涌駅。同駅は香港ディズニーランドへのアクセス路線、ディズニー線(迪士尼線)へ接続する欣澳(サニーベイ)駅と共に、ランタオ島にある貴重な鉄道の駅ということで、「島内観光の拠点」という重要な役目を担うこととなり、島内各地へ向かうバスが発着するバスターミナルや、島のシンボルともいえる天壇大仏へのロープウェイ「昂坪360」の駅、更に、香港人にも観光客にも大人気のアウトレットモール「シティーゲート」が次々と登場した。

東涌

街の様子はというと、駅前には政府の公営住宅が建ち、また、駅の北側には低層の高級マンションを皮切りに、東に延びるように高層マンションがずらりと並ぶ。周辺には有名レストランのチェーン店やベーカリー、生活雑貨店なども見られ、今や生活するにも便利な土地だ。緑が豊かでどこかゆったりした時間が流れる住宅街は、香港島や九龍の繁華街のそれとは一線を画し、平日は非常に閑静な環境が広がる。ところが週末になると、大仏に行く観光客、アウトレットモール目当ての買い物客、そしてアウトドアルックに身を包んだハイカーやトレッカーといった実に多くの人々が駅に降り立つ。ロープウェーの駅だけでなく、大澳(ダイオー)や梅窩(ムイオー)愉景湾(ディスカバリーベイ)行きのバス停も大行列。駅の周りは一転、観光地に様変わりする。

未だ一歩街を離れれば、かの時代の面影を残す風景が垣間見れる東涌は、今や眼前に香港の顔である空港を望むなか、日常をゆったりすごす住民と、休日を心躍らせ楽しもうと訪れる旅行客、双方の笑顔があふれる街だ。

東涌

 

大幅な移動時間短縮でマカオが生活圏内に
新たな東涌エリアのランドマーク「夢の架け橋」港珠澳大橋 

架け橋

港珠澳大橋は、現在工事進行中の香港、マカオ、広東省珠海を結ぶ橋。完成すれば、6.7mの海底トンネルを含む、全長35kmの世界最長クラスの海上橋となる。片側3車線(両側6車線)の自動車専用道路で、現在は陸路で3時間、高速フェリーを使っても1時間はかかってしまうマカオへの所要時間が、車で同橋を利用すれば30分程度と大幅な時間短縮となる。香港側の端が香港国際空港のある赤鱲角で、同地にイミグレーションも設置される。そもそもが複雑で難しい工事である上に、建築資材も作業員も足りない状況もあり、発表の都度ずれていた完成予定日も、ここにきていよいよ2017年夏には、という見通し。大仏とカジノを一日で気軽に楽しめる日も近い!

 

 

東涌の変遷を見つめ続けてきた
歴史を今に伝える貴重な砦

東涌 東涌

東涌砲台の原型は南宋王朝の淳熙の時代(1174~1189)、塩の密輸する者との戦いの中で、兵を置く拠点として砦が築かれたものだという。時代は下り清王朝時代には、後にその名を香港に残す張保仔をはじめとする多くの海賊の侵攻をうけ、砦は一時海賊の手に渡る。しかし、張保仔の降伏と同時に清王政府の元にもどり、その後はアヘン貿易と海賊の侵入を阻止するための砲台としての役目を担った。英国植民地となってからは警察署、その後、農村委員会の事務局や公立の学校として利用された後、1979年には香港の法定古墳に指定され、1988年に全面改修されている。

マングローブの湿地を越えて東涌湾を睨んでいたであろう、6門の大砲は今も往時の姿のままだが、その砲身の先には逸東邨の公共マンション群が立ち塞がり、海を見通すことはできない。もしもマンション群がなかったとしても、その先の赤臘角は香港国際空港に姿を変え、正面に撃つべき敵の姿は見えない。背後は険しい山々に守られてはいるが、更に砦はぐるりと堅固な防塁で囲まれ、適の侵入を許さない造りとなっている。

現在はトレッキングやハイキングで東涌を訪れた人がぽつぽつと立ち寄る程度の地味めな観光スポットだが、清朝時代からの雰囲気を強く残す貴重な歴史的遺物の姿と変わりゆく東涌とのギャップが興味深い。

 

 

ランタオ島に吹き出しのように繋がる人口島
進化を続けるアジアを代表するハブ空港  香港国際空港 

空港

東涌の以北にある赤鱲角島を平らに削り、更に土地を広げるために埋め立てを行い建設された香港国際空港。その所在地から赤鱲角(チェプラプコック)空港とも呼ばれている。「世界一着陸が難しい空港」といわれ、利用客の増加により手狭になっていた啓徳空港に代わり、中国返還直後の1998年に開業した。充実した設備、そしてターミナル2やコンコースの新設と、旅客数や発着数に応じ、常に便利な空港としてあり続けていることから、イギリスのスカイトラックスにより過去に何度も世界一の空港として発表されているほか、羽田空港、仁川国際空港といった4つの空港と並び5つ星を獲得するなど、開業して20年近く経つ今なお国際的な評価が高い。現在、慢性化している滑走路の混雑を解消するため、第三滑走路の建設がすすめられており、2024年には完成する予定だ。

 

 

「ピンクイルカ」を見るならツアーがオススメ!

ピンクイルカ

© Ken Fung, Hong Kong Dolphinwatch

ツアーなら、指定のホテルに集合するだけで、バスでクルーザー乗り場まで移動し、お菓子とドリンクが用意されたクルーズ内でピンクイルカを鑑賞することができる。マイバス香港では、香港ドルフィンウォッチ運行ツアーの予約が可能。東涌フェリー乗り場から出発後、約二時間のドルフィンウォッチング。お菓子とドリンクをいただきながら、のんびりとピンクイルカの鑑賞をしてみてはいかが?

ピンクイルカとは…、香港・中国南部に広がる珠江デルタに生息するシナウスイロイルカのこと。成長するにつれて、体の色がグレーから白、ピンクへと変化する。残念ながらピンクイルカは年々減少し、絶滅を危ぶまれているが、遭遇した人には、幸運が訪れ、恋人同士や夫婦で遭遇すると生涯そい遂げられるという言い伝えもある。

マイバス香港
〈マイバスデスク:マルコポーロホテルロビー〉
電話:(852)2375-7576(受付時間:9:00~18:00)
ウェブ:www.mybus.com.cn/hongkong

 

 

ココが好きです私の住む街!東桶に住むご夫妻にインタビュー

東涌

大仏への中継点とアウトレット、というイメージが強い東桶。香港の中心部に行くには決して便利とはいえないこの街に住む日本人と香港人のご夫婦に、住宅地としての東桶について聞いてみた!

◆東桶を選んだ理由は?
主人が仕事で空港を利用することが多いので、アクセスの良い場所を探していました。近くの青衣も候補にあがっていましたが、ローカル色が強いと聞いたんです。主人は香港人なので慣れていますが、オーストラリアから移ってくるにあたって、初めての香港での生活に私が少しでも早く馴染めるようにと、他の場所に比べて西洋人が多く住んでいる東桶に住むことに決めました。

◆実際に住んでみてどうですか?
結論からいうと、とっても住みやすいです!スーパー、コンビニ、クリーニングだけじゃなくて、私たちも通えるような病院や綺麗な市民プール、郵便局など一通り生活に必要なものが駅周辺に集まっているので助かってます。緑に囲まれた図書館もお気に入りです。空港が近いわりに飛行機の音もほとんど気になりません。地理的に空気が悪いイメージもあるようなんですけど、香港の他の地域と変わらないか、中心部に比べれば交通量が圧倒的に少ないので、むしろ空気も綺麗なのかな?と感じてます。航空関係の方も多く住んでいると聞きますが、中環(香港駅)もMTRで一本なので、オフィスワーカーの方も沢山住んでるみたいですよ。

東涌

◆普段どんなところで買い物を?
食材、雑貨含めて日常の買い物はアウトレットモールの「Taste」や近くの「Market Place」で済ませています。日本食も充分作ることができる品揃えです。でも義母にとってはどうやら政府の公団の下にあるローカルの街市のほうが便利みたいですね(笑)。週末激混みのアウトレットも空いた時間に思い立っていけるので少しお得感があります!

◆気になる外食事情は?
こちらも駅とその周りだけでかなり充実してます。ローカル系では最近、美味しくて食材も安心できるかな?という茶餐廳を開拓したのと、今は「新華都海鮮酒家」という少し駅から距離がある海鮮料理が有名なお店が気になってます。お店までの足がない人は送迎してくれるとかで、今度二人で行ってみようかなって。あとは、友人と落ち着いて食事やお茶を楽しみたい時にはノボテルホテルのレストランやカフェを利用します。ランチビュッフェは品数も豊富で様々な国の料理が楽しめるのでオススメですよ!

東涌

◆東桶はお二人にとってどんな街ですか?
例えば尖沙咀で遊んだ帰りに、「今家に着いたよー!」って友達からのメールをまだ私は道半ばで読んでたり(笑)、どこに行くのにもある程度の時間が必要なので、不便に感じることはあります。でも駅前には噴水もある広場があって、緑が多くてのんびりしていて、どの建物も比較的広々とスペースが取られていて。町全体にゆったりとした時間が流れているところが好きですね。特に繁華街から帰ってきた時には、ほっとする街です。

information
健さん・那奈さん(仮名・30代)
香港在住1年半のご夫婦。ご主人は香港人で、来港前は二人でオーストラリアに在住。現在、那奈さんは、義理の両親とより良いコミュニケーションをとりたい!と広東語を猛勉強中。

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