特集:香港の原風景 東涌・大澳 3

2016/10/12

漁村ならではの特産品  自家製「廣東鹹魚」&「蝦醬」

鹹魚 鹹魚

大澳をぶらぶら歩いていると、至る所に魚が干されているのを目にする。魚を塩漬けにしたあとに発酵させてから天日干しにして作られる「廣東鹹魚」は、中国の広東省が発祥の伝統的な中華料理で、日本と同じく米を主食としている中国南部においては非常にメジャーな「おかず」のひとつだ。材料は魚と塩だけ、そして干す場所さえあれば設備も必要なく、保存もきくということで、「貧乏人の食べ物」なんて不名誉なニックネームがついている。よく使われる魚はイシモチ(黄花魚)やコノシロ(曹白)。そのまま煮たり炒めたりして食べることもできるが、くさやのように臭いがきついため、水で戻した後に刻んでから、白菜やナスなどの野菜と一緒に炒めるのがオススメ。鹹魚が優秀な調味料にもなり、絶妙な塩加減と旨みが白いご飯にも、ビールにもピッタリな一品ができあがる。また、鹹魚と並び是非試してもらいたいのが蝦醬だ。こちらは海老やオキアミを発酵させペースト状にした調味料。旨みがぎゅっと凝縮しており、スープや炒め物などに使うとしっかりと味がきまってくれるので重宝する。どの店も一家総出、という感じで蝦醬を作っており、海辺に並んだいくつもの大きなざるの上の蝦醬と、その脇で日よけの傘をかぶり作業をする人たちの風景は大澳の名物だ。お店によっても塩味の濃さや風味が違うので、買う時には吟味して買おう。家で作る中華料理が一気に本格的な味になる「廣東鹹魚」と「蝦醬」。是非お土産にいかが?

蝦醬 蝦醬

 

 

大澳の歴史と文化がここに結集

文化室

「大澳郷事委員會歴史文化室」には古い釣り具や漁具、ランプや食器などの生活用品、当時の衣装などが展示され、何世紀にもわたる「漁村・大澳」の歴史と伝統的な漁民の暮らしが紹介されている。展示物の全ては大澳の地域住民から寄贈されたものだ。

大澳郷事委員会によって建てられたこの展示室は、高床式の家「棚屋」を見物に訪れる観光客に大澳の歴史と文化を紹介することを目的としている。2001年に民間博物館として2年限定の予定でオープンしたが、当時ヘリテージ・プロジェクトを担当していた大澳出身の離島区評議員、ランディ・ユウ氏の「漁村と塩田の村、大澳の伝統的な生活を伝えていくべき」との提言により、2004年、現在の場所に新しく継続的に再オープンした。当初は、かつて塩田で生産された塩を貯蔵していた倉庫を取り壊して新しい展示施設に建て替えられる計画だったが、「大澳の主要生産物である塩に縁のある建物にこそ意味がある」として、取り壊される事なく改装され、現在の展示室として利用されている。

文化室

2007年に政府はランタオ島開発のための一部として大々的な予算をかけ「大澳活性化計画」を発表。しかし再開発は、伝統的なコミュニティが単なる商業的観光スポットになってしまうという点が危惧されていた。政府の都市計画委員会は、「田舎」としての姿を残しつつ「観光地としての魅力を高める」という原則で大澳の町の中心部のゾーニング計画を承認。しかしユウ氏を始め地元の人達は、ローカルの信仰を背後に持つ大澳の歴史と生活・文化を訪問者に正確な情報として提供することで、大澳に対する理解を深めていく方向を望んだ。現在「大澳郷事委員會歴史文化室」は非営利で運営されている。

大澳郷事委員會歴史文化室
住所:5 Wing On St., Tai O, Lantau Island
電話:(852)2985-7229

 

 

知る人ぞ知る老舗精進料理 東方小祇園

料理店

地元の人や大澳(タイオー)にとても詳しい人だけが知という隠れた人気料理店「東方小祇園」。湾仔に本店があり香港で最も古いといわれている老舗の精進料理のお店の大澳店。一般的に精進料理とは、肉や魚を使わずに、野菜や果物や 海草などを用いてつくられた料理のことで元々は仏道修行に専心するため僧のための料理。近年では、健康志向が高まるとともに宗教での料理としてだけではなく、健康に気を使う人々の間でも再び注目を浴びている。大澳店では、精進料理の他にもお肉料理も提供している。人気メニューはシンプルに塩をまぶしてローストした「鹽焗雞」、紫芋をペースト状にして湯葉で巻いて揚げた「酥脆芋卷」、そして野菜、キノコや豆腐、キクラゲなどを炒めて麺に合わせた「羅漢齋炒麵」。

羅漢齋

東方小祇園
住所: Tai O, Lantau Island, Hong Kong.
電話:(852)2985-5459,(852)2985-5732
時間:11:00~19:30

 

 

海辺の街の異色な小さなカフェ  廬Solo Balcony

カフェ

海鮮料理のレストランや蝦醤のお店が並ぶ吉慶街にある「蘇廬」は、ギフトショップが併設されたおしゃれな佇まいのカフェだ。店内は決して広くはないが、店の裏手から「バルコニー」に出ることができ、水上家屋やその後ろに広がる山や海といったどこか懐かしい漁村の風景をゆったりと眺めながら、のんびりした時間を過ごすことができる。

同店の自慢はなんといっても新鮮な豆を焙煎したコーヒー。一杯ごとにサイフォンで丁寧に入れられており、香港の街中で提供されるような高級コーヒーに決して負けていない。また、滑らかな食感と濃厚なチーズの風味がたまらないニューヨークチーズケーキ、グラスに盛られて可愛くサーブされるティラミスと、コーヒーと一緒に楽しみたいデザートメニューもどれも本格派。スイスチキンやブルスケッタ、麺類など軽食も充実していて、それぞれ単品でも注文できるが、ドリンクとのセットメニューにするのがオススメ。フレンドリーな店員の暖かいサービスも嬉しい。大澳散策で小腹が空いたとき、ちょっと一息つける憩いのカフェに立ち寄ってみては?

Solo Balcony
住所:86 Kat Hing St., G/F, Tai O, Lantau
電話:(852)9153-7453
時間:11:00~18:00

 

 

住民の信仰の深さが感じられる  漁村に点在する寺院

大澳には、多くの寺院「廟」が存在する。古くからこの土地に住む人が生業とする漁業や農業を、嵐などの天災から守りたいという願いがこめられて建てられたものがほとんどで、長い時を経た今も厚い信仰を受けている。

●楊侯古廟/侯王廟

侯王廟 侯王廟

楊侯古廟は宋王朝時代に王朝を象徴する寺院として各地に建立されているが、詳しい建立の時期についてははっきりしていないものが多い。大澳の楊侯古廟の中には、後の清の第4代皇帝、康熙帝が即位して38年目に作られたといわれている記念の鐘が安置されている。

●洪聖古廟
海の守り神として、漁師の安全を祈願して漁村や海沿いに建てられた洪聖古廟。大澳では、当時付近で度々起こっていた嵐に頭を悩ませていた同地の漁師たちが、「海を見守るように岬に廟を建てるとよい」という賢人からのアドバイスを受け、1748年に建立。以来、海は穏やかになったという伝説がある。

●關帝廟
1488年に建てられた關帝廟は、中国の戦の神、そして大澳の「力・忠誠・正義」のシンボルとして大澳で長い歴史を持つ廟。ここで祀られている中国の三国時代に活躍した将軍關帝は、天候も操るといわれており、豊作・豊漁を願う漁師や農民の精神的な支柱となっている。

●天后廟
天后廟は、海の安全を守る女神「天后」を祀っており、1722年に建立された。当時は今のような天気予報技術もなく、漁師たちは日々お参りすることで漁の無事を願っていた。天后は中国に実在していた巫女で、彼女の誕生日には毎年廟の周りに人々が集まり、誕生日祝いながら、健康と安全を祈願する。

 

 

映画でもお馴染みの少林武術を体験できる!

少林

武道の源である少林武術は、今から1500年前に達磨大師が少林寺に禅宗を興して以来、仏法護持の秘法として発展してきた世界で最も古い歴史を誇る、禅と一体となった武術として世界的にも有名。そんな少林武術と文化を香港でも広めようと2006年7月に大澳(ダイオー)に少林拳法道場「少林武術文化中心」がオープンした。山奥に行かずとも香港で中国の代表的な武術が学べるとあって注目を集めている。

同施設には少林拳法を学べる道場と宿泊施設の「少林ホステル」が併設。子供から大人(高齢者含む)まで気軽に武術を学ぶことができる。訓練を通して肉体を鍛えるだけではなく、ストレスの溜まりやすい都市生活での精神の訓練にもとても役に立つという。

ホステルは宿泊、武術のレッスン、ベジタリアンの食事を含む2泊3日または3泊4日のパッケージがおすすめだが、それぞれ別にアレンジすることも可能。週末は喧騒から離れて肉体と精神を鍛えに訪れてみては。

少林

香港少林武術文化中心
住所:Shek Tsai Po, Tai O, Lantau, Hong Kong
電話:(852)2985-9989
ウェブ:http://shaolincc.org.hk/

 

 

一度は泊まってみたい!
白亜のコロニアル建築が眩しいヘリテージホテル
Tai O Heritage Hotel 大澳文物酒店

ホテルホテル

1902年から100年にわたって大澳警察署、哨戒所として使われたコロニアル建築が改修され、2012年からヘリテージ・ホテルとして利用されている。警察署時代の事務室や食堂、当直室など、大小全9室が改装され客室となっている。バルコニーからの海に沈む夕日の眺めは最高だとか。ぜひ宿泊してみたいものだ。小ぢんまりとしたレストラン・カフェ「Tai O Lookout」は一般客も利用できる(PPW543号「癒し特集」でも紹介)。

 

ホテル

Tai O Heritage Hotel
住所: Shek Tsai Po St., Tai O
電話:(852)2985-8383
ウェブ:www.taioheritagehotel.com

 

 

大嶼山で潮干狩り!
プロのお墨付き(?)の貝がわんさか採れる
断然オススメの穴場潮干狩りスポット

潮干狩り

ランタオ島で潮干狩りといえば、島の南側にある貝澳(プイオー)湾や水口(ソイハウ)湾などが有名だ。どちらも東涌経由でバスやタクシーに乗って現地に向かう人が多いが、大澳、東涌にも潮干狩りができる場所があるのをご存知だろうか。特に公営マンション群「逸東邨」の前に広がる東涌湾には、休日ともなれば地元の人を中心に多くの人が貝を掘りにやってくる。中には商売目的なのか本格的に漁をしている人もちらほら。満潮時にはかなり高い位置まで水位があがるので注意が必要だが、帰りも徒歩圏内の東涌駅から地下鉄で座って帰ることができるので楽々だ。

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