特集:香港DE野菜生活 3

2016/05/25

香港で100%安全、安心な野菜を食べようと思えば、自分で作ってしまうのが最短、最良の方法かも知れない。
でも、畑はどうする? が最大の問題…。

自宅マンションのベランダで野菜栽培を実践する甲谷さんに伺った。  
野菜
「日本では知人の農場の手伝いをしたこともありまして、元々『野菜づくり』は好きでした」と語る甲谷久一さんは、中環(セントラル)の音楽スタジオで各種楽器や音楽理論を教えると同時に、自らも数々のライヴパフォーマンスをこなす、日本人プロ・ミュージシャン。4年前、日当りの良い馬湾(マーワン)のマンションに引っ越したのを機に「ベランダ農場活動」を始めた。
現在、土を入れたプランターではミント、ローズマリー、バジル、水菜、ゴーヤ、オクラ、枝豆、つるむらさき、万能葱、韮、唐辛子、大葉、パセリが、水栽培耕ではブロッコリー、春菊、わさび菜、小松菜、ラディッシュ、スープセロリ、三つ葉、島菜が育っている。また、過去にはモロヘイヤ、チマサンチュ、葉大根(水耕栽培)、ルッコラ、蕪、コリアンダー、菜の花、白菜、カラシ菜、レタスを作ったという。その種類の多さに驚くばかりだ!
いずれも、サラダや野菜料理はもちろんのことぬか漬けにするなど、奥様と二人で食べるくらいなら十分な収穫が得られるという。美味しい手作り野菜がいつでも食べられるなんて羨ましい限り。「やはり、醍醐味は収穫した美味しい野菜を食べられることでしょうね」と水を向けると「いえいえ、『食』は二の次。収穫よりも日々野菜の手入れが楽しみです」と、意外な答えが返って来た。手をかけた野菜が健康に育つ姿を日々愛でることこそが「醍醐味」なのだという。
しかし、栽培の苦労話を伺ってみると、「なるほど…」という気もしてくる。年間を通して気温の高い香港は、当然南方系野菜の栽培に適していそうな気がするが、逆に湿度の高さ故にウドンコ病やアブラムシ、ハダニ、アザミウマ等の病害虫に悩まされることも多いとか。そのため、害虫の駆除などに必要最小限の薬は使わざるをえない。自家栽培といえども「完全無農薬」というわけにはいかないのが現実ようだ。「最初はまず失敗します(笑)」という甲谷さん。水のやり過ぎ等で、植物自体は育っても実をつけないなど、収穫できないこともあったという。また、台風接近の場合はすべてのプランター、水耕栽培の容器を室内に避難させなければならない。「農家の方々のご苦労が分かります」と、文字通り手塩にかけて野菜を育てる甲谷さんの「市販の野菜に比べると味が濃いですよ」という言葉にもうなずける。
香港の住宅事情ではなかなか難しいかも知れないが、「小規模でも何か緑を育ててみたい!」と思わされてしまう、甲谷さんへの取材だった。

棚野菜野菜
甲谷久一(こうや ひさかず)さん

●Mark-1 music centre 代表
●在港歴15年
Mark-1 music centre
電話:(852)9356-9481
メール : centre@mark-1music.com.hk
ウェブ:www.mark-1music.com.hk

野菜盛り安心野菜を美味しく!
ここでは野菜もしゃぶしゃぶの「主役」日本産の旬の野菜を思う存分味わおう!

多くの人は「肉が食べたくて」しゃぶしゃぶを食べに行くのではないだろうか。だが、「野菜を食べたい」と思った時にも是非足を運んで欲しい店がある。それが、「温野菜」だ。日本全国に店舗を展開し、厳選された肉とともに、「しゃぶしゃぶで食べると美味しい野菜」を追求し、生産者と直接話し合いながら作り上げた国産野菜をたっぷり食べられると人気のしゃぶしゃぶ専門店だ。
そんな同店が昨年、満を持して香港に上陸し、現在、尖沙咀(チムサーチョイ)と銅鑼湾(コーズウェイベイ)の2カ所に店舗を構えている。国を変えても野菜へのこだわりは変わらず、ビタミンやミネラルたっぷりの旬の野菜を、日本の店舗と同じく日本の契約農家から空輸し、新鮮なまま提供している。お勧めなのはレタス・味えのき・水菜をはじめ、担当者が香港人の好みに合わせてチョイスした、日本人にもおなじみの野菜の盛合わせ「野菜五品盛合」。こだわりの野菜たちを同店自慢の「選べるだし」にくぐらせて食べると、その優しい甘みがより一層引き立ち、生のままでは味わえない食感や味わいを楽しむことができる。
夏に負けまいとスタミナをつけるために肉に走りがちなそこのあなた!「食」はあくまでバランスが大事。野菜もしっかり摂取して。芯からバテない健康な身体を目指そう!

温野菜
温野菜

〈チムサーチョイ店〉
住所:Shop 37A, 3/F., LCX, Ocean Terminal, Harbour City, 17 Canton Rd., TST
電話:(852)2153-1801
時間:11:30~23:00(月~日)
〈コーズウェイベイ店〉
住所:4/F., Plaza 2000, 8 Canal Rd. East, CWB
電話:(852)3709-8328
時間:12:00~23:00

安心・安全な野菜を育てよう!
ペットボトルを活用した水耕栽培キット
水耕栽培キットLED照明事業や成形事業を手掛ける和歌山県の大洋化学株式会社では、現在主力商品のLED照明を活用した「水耕栽培」に力を入れている。水耕栽培とは、土を必要としない養液栽培のこと。光源や水を元に屋内で育てるため、天候や害虫などの影響を受けにくく、何より農薬を使用しないため安心・安全な野菜を育てることができる。健康意識の高まりを受けて近年急速に研究や企画、開発が進められている栽培方法だ。
大洋化学と他ブランドの水耕栽培方法が異なる点は、光源と養液となる水にある。光源は同社開発のLED照明と太陽光を活用している。太陽光だけでは日照時間や、天候に左右されやすく成長にむらがでる。そこにLED照明を加える事で収穫を調整できる為、年中安定的に野菜を育てることができる。養液は同グループ企業が開発した銀イオン生成器(LinoAg+)から出る銀イオン水を利用している。銀イオン水には抗菌作用がある為、植物の成長を妨げる藻が発生しにくいという。
農家向けに水耕栽培設備を提供している同社では、現在棚状の水耕栽培設備を香港でも提供できるよう企画中だという。「食の安全」の意識が高まりつつある香港では、これまで以上に健康を意識した顧客が多い。安心・安全な水耕栽培への期待は高いという。
また、同社では一般家庭向けに使用済みペットボトルを活用した水耕栽培キットも提供していく予定だ。ペットボトルに専用の蓋をし、そこに種を撒き、野菜を育てることができるもので、エコ意識を育む教材としても注目されているという。野菜の種類は小松菜、リーフレタス、水菜、ルッコラ、中葉春菊、バジルなど。日本で製造されたキットを使用しているため、安全性は保証済み。香港でも家庭内で緑を育てたいという人や、安心して日々の野菜を摂取したいという人達を中心に人気が広まっていきそうだ。一般向けの発売は2016年夏を想定しており、旺角のフラワーマーケットなどでの発売を予定している。
香港でも健康志向の人が増え、安全な食を求める声が上がり始めている。水耕栽培のように農薬を一切使用しない栽培方法は今後ますます広まっていくだろう。

水耕栽培キット水耕栽培キット
大洋化学株式会社

住所:和歌山県御坊市島584番地
電話:(+81)738-22-3551
ウェブ:www.taiyo-chemicals.co.jp
野菜
Rental Farmin Hong Kong

コンクリートジャングル香港ではなかなか土に触れる機会が少ないもの。普段何気なく過ごしていても、ふと緑や土の匂いが懐かしくなったりする人も多いだろう。生き物を育てるということは、他を慈しみ、成長を喜ぶことに繋がる。全てのことが新鮮な子どもや、世の理を理解している大人にとっても必ずや驚きや癒しが待っているはず。さぁ、始めるなら今! 週末は家族でレンタルファームで、植物と触れ合う時間を過ごそう!

■Sustainable Ecological Ethical Development Foundation(SEED; 香港有機生活發展基金)
野菜オーガニック野菜の栽培場所を提供している農場「SEED Organic Garden」。管理費には毎日の灌水、旬の種の提供、農場の用具の貸出が含まれている。メンバーシップ登録はウェブから。
料金:
HKD820/ワンシーズン/100sq. ft(前払い)
HKD568/ワンシーズン/100sq. ft(2シーズン前払いなら30%オフの特典あり)
HKD484/ワンシーズン/100sq. ft(4シーズン以上前払いなら40%オフの特典あり)
住所:Ho Pui Tsuen, Pat Heung, Yuen Long
ウェブ:www.seed.org.hk/en/life/plant-yours-take-yours
電話:(852)2488-0602
メール:seed@seed.org.hk

■YMCA Tung Chung Green Organic Farm(東涌緑機田)
野菜東涌初のオーガニック農場「東涌緑機田」。エコロジー活動の一環として農場の一角を一般向けに開放している。
レジャープランティングプラン
料金(月額):HKD250
ゲスト:最大5名まで
※料金には種・若草・肥料の
提供、毎日2回の灌水サービスを含む。
住所:6 Chung Yat St., Tung Chung
ウェブ:www.tc.ymcahk.org.hk/organic_farm/en/leisure_planting_plan.html
電話:(852) 3480-7883
メール:farm@tc.ymcahk.org.hk

■Nature’s Harvest(清新地)
野菜野菜綺 麗な水と緑地が広がる西貢(サイクン)に位置する農場「清新地」。自然との共生を大切にしており、廃棄されるゴミを培養土として再利用するなどエコロジー農業を心がけている。
シティファーマー農地レンタルプログラム
料金:毎四半期HKD1,500
エリア:およそ20ft x 4 ft
サービス:農地・用具の貸出、オーガニック肥料・旬の種の提供、
灌水、技術サポート
住所:D.D. 227 Pak Shui Wun, Sai Kung
ウェブ:www.naturesharvest.com.hk/index.php?option=com_content&view=article&id=38&Itemid=94&lang=zh
電話:(852)2723-3126
メール:choysum@naturesharvest.com.hk

■Smart Organic Farm(大眼仔有機農場)
新界の元朗(ユンロン)地区に位置するオーガニック農園。品質の良い野菜を通して消費者の健康に貢献しようというスローガンを掲げる。
セルフファーミングプラン
料金:100sq.ft/月額HKD300(4ヵ月単位のプラン1月~4月、5月~8月、9月~12月のプラン)
住所:Lot 948, DD 107, Fung Kat Heung, Kam Tin, Yuen Long
ウェブ:http://www.smartorganicfarm.hk/index_english.html
電話:(852)9355-9889 (Kenny Tso)
メール:kwytso@yahoo.com.hk

■The Leisure and Cultural Services Department(社區園圃計劃)
政府が管理する公園内の一部区域を家庭菜園用に貸し出す取り組み。コミュニティ内の緑化活動の促進や、住民同士のコミュニケーションを促す目的で発足した。現在では23の公園でこの取り組みが実施されている。
コミュニティガーデンプログラム
料金:HKD400(18週)
エリア:2.25㎡
ウェブ:www.lcsd.gov.hk/en/green/garden/index.html

※各公園にて毎日8時から18時まで開放中。
水撒きは管理人が手伝うことも可能。
野菜野菜

「食の安全」に真正面から向き合う野菜団体、美味しく野菜を食べて内側から健康になろう!
1946年に創設された「Vegetable Marketing Organization(VMO;蔬菜統營處)」は品質認定された野菜や、オーガニック野菜、水耕栽培野菜など、健康面を意識した地元野菜を広く一般に提供すべく活動している非営利団体。様々な販売ルートやイベントを通して、香港で栽培される野菜の栽培支援を行っている。香港の野菜市場を語る上で欠かせない団体、VMOの歴史や主な活動内容を紹介しよう。

歴史
<歴史>
終戦後の1946年、荒廃してしまった地元農業を再び活性化させようと油麻地(ヤウマーテイ)にて発足したのが始まり。植民地開発の一環として1.47百万ドルかけて設立され、歴代の香港総督がVMO代表に就任してきた歴史を持つ。VMOはまず野菜の卸売市場を当時の新興地域であった新界に5つ設置した。その後協同組合の気運が高まる中で徐々に野菜の収集や検量業務を協同組合の団体が受け持つようになり、今日では26つの協同組合がこれらの業務を担っている。2つ残った卸売市場は協同組合を介さずに野菜を販売したい業者などのマーケットの場として今も活用されている。

<主な活動内容>
商品■いつでも安心・安全な野菜を!「Premium Vegetable Section」
持続可能な農業形態の維持と、安心・安全な野菜を安定に供給するため1992年にVMOによって設立された「Premium Vegetable Section(PVS)」は地元農家と、ホテルやレストラン、高齢者住宅、スーパーや配膳業者などハイクオリティな野菜を求める購入者とを繋げる役割を担う団体で、厳格な農薬基準をクリアした野菜のみを消費者に向けて発売している。現在同団体が認可している小売店は181店、野菜卸売系列販売店は25店となり、いつでもどこでも新鮮で安心な野菜が手に入るようになった。同団体の野菜を購入したい場合は「Local Veggie Fresh」というアプリをダウンロードし申し込むか、同団体のホームページにて確認しよう。

商品野菜
■野菜栽培支援「認定農場スキーム(信譽農場計劃)」

香港と広東で活躍する香港人農業経営者を支援する目的でVMOとAFCDが協同で設立した「Accredited Farm Scheme(認定農場スキーム)」は、安全な野菜の安定供給を目的とした団体。農家に対して栽培方法や農薬の適切な使い方などを指導・管理している。認定農場スキームの厳格な農薬検査をパスした野菜は認定された証のロゴが付加される。現在加盟農場が所有する土地は合わせて3,012ヘクタールにも及び、1日あたり平均して58トンもの野菜が市場に供給されている。同スキームをパスした野菜は227店の小売店で
販売されており、消費者に安心・安全な野菜を提供していることで知られている。

野菜■オーガニック野菜栽培農家支援「Organic Farming Conversion Scheme」
VMOではオーガニック野菜を手掛ける農家のサポートも行っている。2000年にオーガニック野菜の栽培支援を行う団体「Organic Farming Conversion Scheme(OFCS)」が設立されて以来、2008年までにオーガニック野菜を手掛ける団体数は2000年の15から110まで増加した。同団体に加盟する農場は漁農自然護理署AFCDが定めるオーガニック野菜の栽培手法を取り入れ、さらにVMOを経由したマーケットにて野菜を販売する必要があり、安全さは折り紙つき。

■水耕栽培野菜「iVeggie」
固形培地を介さずに育成される水耕栽培野菜を今後さらに広めていくためにV M O が立ち上げた「C.E.H.R & D Centre」は水耕栽培に必要な技術や設備について研究及び開発を行っている団体。野菜の販売も行っている同団体では、現在は水菜、フラットキャベツ、ルッコラ、小松菜、オーク・リーフ・レタスの5種類の野菜を「iVeggie」として販売している。農薬を一切使用せずに栽培されており、さらにビタミンやミネラルが豊富で、素材のままシャキシャキといただくサラダにもってこい。既に定期的に食卓に上がっているという家庭も多いようだ。
ますます高まる「食の安全」に先駆的に対応しているVMO。安全な野菜を日常的に身体に取り入れて、体の内側から健康になろう!

ロゴ
Information
Vegetable Marketing Organization(蔬菜統營處)
ウェブ:www.vmo.org/en/index

Agriculture, Fisheries and Conservation Department(AFCD; 漁農自然護理署)
ウェブ:www.afcd.gov.hk/cindex.html

Premium Vegetable Section(PVS)
ウェブ:www.vmo.org/en/index/page_order/item_products

Hong Kong Organic Resource Centre(HKORC)
ウェブ:www.hkorc.org/tc

iVeggie
ウェブ:www.iveggie.com.hk/index.php/en/products

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