特集【香港でEcoを考える】1

2016/05/09

トピック金融都市香港は、一大消費都市でもある。
「百万ドル・・・」とも言われるビクトリアピークからの夜景はその象徴であると云えるだろう。
圧巻の「美しさ」を前に「エコロジー」など無粋と云われるかも知れないが、この無数の光はどれだけのエネルギーを費やし、そしてそれはどこから供給されているのだろう…。
早朝の繁華街を歩いたことがあるだろうか?そして目にしたことが?
前夜、煌々とした灯りのもとで繰り広げられた喧騒と宴の跡、ゴミまたゴミが路面を覆い尽くす、この朝の光景を。
なにもこれは一日限りの祭りのあとではない。
毎日毎晩繰り返される「香港の日常」なのだ。
しかし、こうして個々に利潤を追い、虚栄に彩られた快楽を貪ることに潔かったこの都市が、今、変化の兆しを見せ始めている̶。
株価のチェックに余念がなく、環境問題など無縁に見える香港市民の間にも、意識の変化が現れ始めている̶。と言ったら信じられるだろうか。
「美しく、健全な地球を次の世代に引き継ぐこと」が我々の命題だとすれば、このままではそれが難しいのではないか、という危機感が市民の間に芽生え始めたのではないか。
この特集では香港政府の対策、民間団体や個人の活動と意識、企業の取り組みなど、様々な面から「香港におけるエコロジー」に迫ってみた。

避けては通れない、香港の大きな悩み̶

埋立地深刻!香港のゴミ問題
多くの人が問題意識を持っているものの、なかなか解決の糸口を探せずにいる香港のゴミ問題。現在屯門(テュンムン)の「西新界(WENT)埋立地」、将軍澳(ヂョングヮンオウ)の「東南新界(SENT)埋立地」、打鼓嶺(ダーグウレン)の「北東新界(NENT)埋立地」の3つの埋立地が利用されているが、香港では毎日15,000トン(なんと車10,000台相当分!)ものゴミが廃棄されており、これらを3つの埋立地で処理しきれなくなるのも時間の問題ではとの声が上がっている。
溢れるゴミを処理するため、香港政府は計約47.6百万香港ドルをかけて3つの埋立地を合わせて83ヘクタール拡張する計画を発表しているが、この対策を実行したとしても、ゴミ処理が保障されるのは2018年頃までとされており、一時凌ぎにしか成り得ないとの意見も名高い。ゴミを埋め立て処理することについて安全面に不安が残るとの指摘もある。ゴミは通常ゴミ積換場で圧縮されたあと埋立地に輸送され、そこで臭いが漏れないよう土やプラスチックで覆われる。しかし、処理の段階で発生するメタンガスは非常に可燃性が高く、またゴミから流れ出る浸出液は毒が含まれているため健康被害に直結する可能性があるという。
これらのゴミ問題について有力な対策案とされているのがゴミをエネルギーとして再利用する方法である。シンガポールでは香港の1/2の分量に当たる8,338トンのゴミを2014年に焼却処理してエネルギー化させた事例があり、これに倣う方法を政府は模索している。長洲(チョウシュウ)島にゴミ焼却プラントを設立する案が最も有力視されており、環境保護署のスポークスマンは「一日3,000トンのゴミが処理可能で、年間約480百万kWhのエネルギーを生み出すことが可能」としている。しかし、最新の焼却プラントをもってしても香港の一日の廃棄量の20%しか処理ができず、また着工は2023年を予定していることから、ゴミ問題の直接の解決には結びつかないだろうという意見も根強い。
毎日何気なく捨てているゴミ。早急な対策が求められている中、政府の対応に注目が集まっている。

目指せ-40%!
香港政府がゴミの削減に挑戦!
無駄遣いから見直して1人1人の意識改革を。
2022年までに、1人当たりが排出するゴミの量を40%削減しようと政策を掲げる香港政府。昨今、リサイクルできるものはリサイクルをしようと分別用のカラフルなゴミ箱も街中に増えてきているが、最も重要なのは、市民1人1人の心がけだ。無駄遣いや食べ残しを減らして、身近にできることから実施したいところだが、まずは、どのようなゴミ処理をしているのか、香港で分別されているゴミの種類から紹介していこう。

【ゴミの種類】
◆一般廃棄物(Municipal Solid Waste) :家庭、企業から排出されるゴミ(建設廃棄物、化学廃棄物、医療廃棄物、特殊廃棄物は除く)。主に埋め立てに利用される。
◆食品廃棄物(Food waste):香港における最もメジャーな廃棄物であり、調理過程で出るゴミや食べ残し、期限切れの食品などを含む。悪臭や衛生面で問題が起こりやすい。
◆建設廃棄物(Construction waste):建設や改装、取り壊し、道の建設などで出るゴミ。廃棄物の分別を行った後、埋め立てに利用。
◆化学廃棄物(Chemical waste):健康や環境に影響を及ぼす可能性のある物質を含む。
◆医療廃棄物(Clinical waste):さまざまな医療施設や研究室で排出されるゴミ。環境汚染の危険性があるため、適切な管理が必要。
◆廃食用油(Waste Cooking Oils):業務用厨房で設置されているグリーストラップ装置からの廃棄物や消費期限切れの食用油、 調理過程で排出される食用油を含む。
◆特殊廃棄物(Special wastes):動物の死骸、家畜ゴミ、放射性廃棄物、下水汚泥など。それぞれの専門施設により、適正な処理・処分が必要。

埋立地埋め立てに利用される廃棄物
経済の成長・人口の増加とともに増え続けてきた廃棄物。1986年以降香港では、家庭や企業から排出されたゴミを利用した土地の埋め立てが急速に進められてきた。しかし、その埋め立てで問題視されたのが、使用したゴミの中に含まれていた“すさまじい量の建設廃棄物”である。これを受けて政府は、2006年に建設廃棄物を減らすために事業計画を打ち出したのだが、経済状況や進行中の建設プロジェクトの数により建設廃棄物が変動するのは否めないようだ。
また、土地や資源の問題から限界がある埋め立ては、2020年までに終息するといわれている。街の資産にもなるため、より慎重に考えていかねばならないことから、現在、香港が直面する最重要課題として注目を集めているのである。

廃棄物処理計画とともに…
香港各地にある廃棄物処理施設は、廃棄物処理計画(Waste Disposal Plan)をもとに多額の資金をかけて建設されている。
◆Chemical Waste Treatment Centre
1993年、青衣(チンイー)に誕生した化学廃棄物を受け入れる処理場。2011年8月からは新たに医療廃棄物を受け入れ、政府による監視を実施。排出量に応じてコントロールを行う。
◆Sha Ling Composting Plant
家畜廃棄物を受け入れる施設として1991年にオープン。土壌改良のためのリサイクルを行う。
◆Sludge Treatment Facility
2015年にオープンしたばかりの屯門(テュンムン)にある汚泥処理施設。11ヶ所に設けられた下水処理場からの下水汚泥を処理。
レジ袋

1人1人の意識改革で、ゴミを最小限に!
政府の働きかけにより、ゴミを捨てるのではなくリサイクルしようという動きが急速に高まってきた香港。2014年の段階で、市民1人当たりが1日で排出するゴミの量の平均は、1.35㎏といわれており、そのうち63%が埋め立てに利用されている。ちなみに、東京都民が1日で排出するゴミの量の平均は、770g。香港は2022年までに、800gまで減らす計画を掲げているのだが、果たして日本並みの意識が根付くのだろうか…。

レジ袋の有料化レジ袋全面有料化から約1年!必要とされる販売側の知識とは…
2015年4月より、街中の店舗でビニール袋(通称:レジ袋)の有料化が義務付けられた。スーパーマーケットやドラッグストアなどでは以前から行われていたが、ここにきて政府がレジ袋に50セント以上を徴収しなければならないと定め、高級ホテルはもちろん、街市や小売業の店舗も全てにおいて義務づけたのだ。
こうした「レジ袋徴収計画」の始まりは、ローカルの非営利団体「Greeners Action」の創設者の1人であるアンガス・ホー氏が考案した「No Plastic Bag Day」による。2006年4月15日に実施した同氏の計画は、ボランティアで行われたが、多くのスーパーマーケットが協力し、買い物袋を忘れた人には50セントを徴収し、寄付にあてるというものだった。やがて毎週行われるようになり、その成功に政府が目をつけたのだという。
2009年以降は、スーパーマーケット約3500店で実施されてきた。それが現在の全面有料化に繋がるのだが、同団体は、13.3%の店舗が認識不足であることを指摘。そして58名の調査団を発足し、違反店に対してHKD2000の罰金請求をした。厳重注意を受けたオーナーのなかには、“このレジ袋がビニールからできているとは思わなかった”という気の抜けた言い訳をしてごまかす人もいたという。
しかし、店側の混乱はこれだけではない。缶詰や調味料などの完全に密封されている食品には、通常のレジ袋50セントが課せられるが、生鮮食品、冷凍食品、パンなどを包むビニール袋やウェディングドレス販売店、ドライクリーニング店は無料になるなど複雑な規則がさらに悩ませていた。
これらの混乱を避けるためには、販売側による十分な知識と消費者のエコに対する強い意識が必要となってくるだろう。
レジ袋

大量廃棄されるペットボトルの行方は!?
日本で再生利用が叫ばれて久しいペットボトルだが、ここ香港ではまだ再生利用のスキームすら成り立っていないのが現状だ。そんな状況を打開すべく立ち上げられた「緑惜地球」は、環境保護署を始めとした政府機関にペットボトルの再生利用のための規制の必要性を訴えかける活動を日々続けているNGO団体。同団体によると、香港では毎日520万本ものペットボトルが廃棄されており、10年前と比較してその数字は2倍にも上っているという。ドイツにおけるペットボトルの再生率は93.6%、スウェーデンは82.7%。同じアジアの国の韓国も80%を記録しており、近代都市の中で香港が唯一遅れをとっている。現在環境保護署がスキーム作成のための調査を行っているというが、ペットボトルの再生利用化の道のりはまだまだ険しそうだ。

緑惜地球(The Green Earth)
フェイスブック:www.facebook.com/greenearthhk/timeline

の研究チーム
の研究チーム香港のエコ意識ってどれくらい?

香港中文大学とオックスフォード大学の研究チーム(Collaborating Centre for Oxford University and CUHK for Disaster and Medical Humanitarian Response (CCOUC))は香港における二酸化炭素の削減意識がどれくらい市民に浸透しているかを把握するための調査結果を公表した。香港が旗振りを行っているプラスチックバックの有料化やシャワー時間を減らして水資源を守ろうとするキャンペーンはどれくらい日常生活に取り入れられているのだろうか?早速見ていこう。
同調査団によると、二酸化炭素削減のための行動として一番多くの市民が「日々実践している」と答えたのは「使い捨てプラスチックバックの削減と簡易包装の徹底」で70.1%だった。「少なくとも週に1回は実践している(19.7%)」、「たまに実践している(5.8%)」と合わせると実に95.6%もの人がプラスチックバックの使用頻度削減を意識していることになる。これは2015年4月から導入されているプラスチックバック有料化のスキームが市民に浸透した表れだと言えるだろう。逆に「シャワー時間の短縮化」は48.8%もの人が「日常に取り入れていないし、考えたこともない」と答えており、まだまだ意識レベルが低いことが分かった。
「ゴミの分別を行っているか?」という問いに対しては「毎日実践している」が50.2%、「週に1回は実践している」が11.5%、「たまに実践している」が6.2%という結果が得られた。日本と比較するとゴミの分別はまだまだ強制力が低いように感じるものの、市民間の意識レベルは意外と高いことが分かった。ちなみに区域別で見るとゴミの分別ワーストナンバー1は湾仔(ワンチャイ)で「日々実践している」人と、「週に1回は実践している」人を合わせても42.8%という低い数字だった。調査団は実態把握のためにはさらなる調査が必要との見解を示している。
日々暮らしていてもなかなかエコの浸透率は分かりづらいもの。詳しい情報はウェブをチェックしよう!
グラフ
グラフ

調査概要
CCOUC災害與人道救援研究所調べ
調査方法:電話調査
調査対象:15歳以上の香港市民

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