西環(サイワン)特集2・乾物と坂道の街、西營盤

2014/06/26

活気あふれる乾物通りから、旧き香港の跡を訪ねて

乾物と坂道の街、西營盤を歩く

乾物が並べられている

ションワン(上環)に隣接するサイインプン(西營盤)が西環の入り口となる。下町らしい活気と情緒が残る、この界隈を歩いてみよう。

ケネディタウン(堅尼地城)方面行きのトラムに乗って徳輔道西へ。東邊街駅で降りると、鄙びた海鮮乾物の匂いに包まれる。ここは「海味街」と呼ばれる通りで、乾物店が軒を連ねる。この辺りからがサイインプンだ。

道路にせり出すように置かれた大きな竹籠や、道路に敷かれたシートで、海鮮類を干している。乾物店の店頭には、煮干やナマコ、アワビ、ホタテ、スルメ、フカヒレなどの海鮮のほか、シイタケなどの乾物が並べられていた。ホタテの貝柱は、日本人にお土産として人気だ。軒先に吊り下げられているのは、鹹魚(塩漬け魚)と呼ばれる発酵させた干し魚。その昔漁業が盛んだったサイインプンで、鹹魚作りが始まったといわれている。70~80年代は店の軒先で鹹魚を作っていたが、現在香港で売られている鹹魚の70%は海外から輸入されている。鹹魚は蒸した後ほぐしてチャーハンに入れるなど、中国の家庭ではなじみのある食材だという。サイインプンは、山側に続く長い坂道のある通りも印象的な街。海味街にクロスする東邊街、正街、西邊街の3つの通りがある。

正街をのぞくと、通りのはるか先が急な坂になっている。正街に100年以上の歴史を持つ香港スイーツ店「源記甜品専家」がある。豆やクルミ、蓮の実などを使った香港式お汁粉が食べられるお店で、名物の「桑寄生蓮子蛋茶」は桑寄生茶の苦さと蓮の実の甘さのバランスが絶妙。カステラ(雞蛋糕)も甘さ控えめで優しい味だ。

坂道を上っていく途中で、床屋を発見。数席のみに小さな店で、鏡の反対側に壁はなくテラスのよう。初老の理容師が男性の髪を刈り上げていた。香港の街中では美容室は見かけるけれど、床屋を見かけない。こうした髭剃りなどのサービスをしてくれる店は、上海式床屋と呼ばれているそうだ。こうした店の散髪代はHKD30~50だそう。[P06MAPB]床屋の対面に香港スタイルの公衆浴場もある。周辺には歴史的建造物も多い。ローカルの商店が並ぶ通りで、数軒の西洋スタイルの店も見かけた。

坂道を上りきると、香港大学に続く般咸道に出た。この道の向こう側は、ミッドレベルと呼ばれる高級住宅街になる。

小さな蒸籠に百年の歴史が息づいている

蒸籠製作の達人、林さん

飲茶で、きっと見たことがある、竹製の蒸籠(セイロ)。なぜ竹製蒸籠で調理する蒸し料理は美味しいのだろうか。それは蓋の網目から蒸気が適度に抜け、木肌が水蒸気の量を調節するので、水滴が落ちて水っぽくならないためだという。点心を作るとき、これがなければ完璧ではないと言っても過言ではない。

「徳昌森記蒸籠」は老舗の竹製蒸籠店だ。100年前に広州で創立され、1950年代初期に香港にやってきた。飲茶の文化が広州と同様に盛んな香港では、特にセントラル(中環)、ションワン(上環)に茶楼が集中していた。その地域に近い立地で開業。丁寧に手作りされた高品質な蒸籠は茶楼の老闆たちから愛用されるようになった。オーナーの林さんは、見た目は若そうだが、蒸籠製作においては同店の5代目として30年以上の経験を持つ達人だ。今では量産もしているが、手作り品も販売している。店を訪れると、彼が蒸籠を作っている姿を見ることができる。

一見過去の伝統文化となっていきそうな竹製蒸籠だが、近年ますます人気になっているらしい。「今の人は蒸籠のいいところを理解してくれている。買う人が多くなったね。いつもの茶楼のほかに、海外の中華料理レストランからの注文も受けたり、一般人にも提供したり…。家賃が上がっても困ることはないよ」と林さん。取材中も蒸籠を作る手が止まることはなかった。

地下鉄で西環に遊びに行ける日も近い!?MTR西港島線開通事情

MTR西港島線開通事情

「サイワン(西環)へのアクセスは不便」というイメージが定着しているが、その煩わしさが払拭される日が近い将来やってくるかもしれない。

1960年代の地下鉄開通計画では、港島線はションワン(上環)↔チャイワン(柴湾)間だけでなく、西部の「ケネディタウン」を含め、「屈地」と「西營盤」との3つの駅を合わせて開通させる予定だった。ところが1970年代、MTRの経営が赤字に転落。また開通予定だった地域一帯の高齢化が今後加速していくと見られたため、計画は一旦白紙となった。それ以来、政府とMTRの間で幾度となく計画再開の検討がなされたが、なかなか話はまとまらず、立法会で正式にリスタートが可決されたのは2005年だった。計画書ではションワンを出発点に、西營盤、香港大学を経由し、終点はケネディタウンと示されている。工事は2009年に開始され、正街のフードセンターや元デビッド・トレンチ・リハビリテーションなど歴史のあるビルも数多く取り壊された。

計画では2014年の開通予定だったが、今年5月30日付のマスコミ発表で西營盤駅の出入り口の掘削工事が計画通りに進んでいないことが明らかに。このため開通当初だけ未完成の西營盤駅には停車しないことにするか、全線の開通を来年第1四半期に先送りするかの2案が検討されているようだ。また、MTRのチーフエグゼクティブオフィサー・JayWalder氏を紹介しているウィキペディアページがいつの間にか「西港島線の開通は2015年上旬から」と変更されたことを受けマスコミが真偽の程を求めたがはっきりした回答は得られず、現在そのページはまた「2014年下旬」に戻された。

広州の「西營盤」

乾物と玩具の専門店街 一徳路

徳路

地下鉄「海珠広場」駅から西に伸びる通りが、独特な賑わいを見せる「一徳路」。買い物に訪れる人々、荷物の運搬をする人々がひっきりなしに行き交い、活気に満ちている。1920年に城壁が取り壊され一徳路ができた。珠江の埠頭に隣接しているため人の往来が多く、早くから食品市場があったという。その後、「鹹魚商業協会」が作られ干物業が盛んになった。現在の一徳路も乾物や玩具の商店街として有名だ。むき出しの乾物が店頭に並べられ、乾物の放つ独特の匂いが辺りに漂っている。その種類は実に豊富!エビ、ホタテ、アワビ、海水魚などの魚介系乾物から、キクラゲなどのキノコ系乾物、ドライフルーツ、ナッツに至るまで、ありとあらゆる乾物が扱われている。乾物のほかに、中国人好みの造花やインテリア関係のお店、おもちゃを売るお店もたくさんある。

一徳路のもう1つの見どころは、1888年に落成したカトリック教会「聖心大教堂」だ。聖堂が全て花崗岩で作られていることから通称「石室」として親しまれる。パリのノートルダム大聖堂を模したものだと言われている。

見ごたえある歴史的建造物と、軒を連ねるお店、人々のやりとり、それらが織り成す独特の風景を見ているだけでもいい暇つぶしになる。ふらりと一徳路に出かけてみたら新たな発見があるかもしれない!

一徳路 Yīde Lù
アクセス:広州地下鉄2号線「海珠広場」駅B1・B2出口

 

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