冬のローカルグルメ特集

2021/12/22

スクリーンショット (139)初めて香港で冬を過ごされた方の中には「暖かいと聞いていたのに、けっこう寒い日もあるね」と、意外に思われた方も多いのでは。
そう、亜熱帯気候の香港・華南にも短いながらも「冬」はあるのだ。そしてこの時期特に美味しい、体を温めてくれる食べ物も数多く存在!
この特集で貴方なりの「冬の味覚」を見つけてみては。

日本でもお馴染み 打邊爐/火鍋
打邊爐(ダァピンロー)みんなで囲めば温かい!スクリーンショット (86)
中国では1000年以上の歴史を持つといわれる「火鍋」。
現代の「火鍋」は、種類だけで100種類以上あり、なかでも広東省の海鮮鍋、蘇州地域の菊鍋、湘西の犬肉鍋、重慶の毛肚鍋、上海の什錦鍋などが有名。
また、地域ごとの食文化も現しており、例えば台湾の客家人は、主に新年の7日目に鍋を食べる風習があり、具材には、セロリ、ニンニク、ネギ、パクチー、ニラ、魚、肉の7品目が欠かせないなど、一口に「火鍋」と言ってもその内容は多種多様。スクリーンショット (71)スクリーンショット (73)
そんな中、今香港のどこかしらでも火鍋がグツグツと湯気をたてているといっても過言ではないだろう。ネットで検索すれば、いつでも火鍋レストランを見つけるのに苦労することはない。とは言え、やはり寒い季節の火鍋は格別だ。

香港人が「打邊爐」と呼ぶ火鍋を好む理由は二つある。
ひとつは人とのコミュニケーションに最適な食事スタイルだということ。人々は会社の同僚達、友人、家族や親戚達など、大勢で一つの鍋を囲み、思い思いに鍋をつつき、飲み、語り、笑う。あまり近しくなかった人同士も、一緒に「打邊爐」すれば打ち解けた関係になれることだろう。
もうひとつは「健康的な食事」と認識されている、ということ。鍋料理は揚げ物料理に比べヘルシーで、具材の旨味や栄養素はスープに溶けてさらに美味しくなる。サラダではさほど量を摂れない野菜類も、火鍋なら様々な種類をたくさん食べられるというもの。ふだん野菜不足に陥りやすい香港での食生活ではありがたい存在だ。
基本的には日本の鍋料理と似ている火鍋だが、香港のレストランで食べる火鍋はそのバリエーションの多さに驚かされる。スクリーンショット (72)
スープは魚、鶏や豚骨ベースのもの、薬膳スープ、サテー味、四川風の麻辣味などから自由に選べるタイプの店が多く、真ん中を仕切った鍋(鴛鴦鍋)で2種類の味を同時に楽しめる火鍋レストランが主流だ。具材は日本の鍋とは比べものにならないくらい多種多様。牛、羊、豚、鶏などの肉類や魚介類はもちろん、野菜も日本では鍋の具材としては馴染みの薄いクレソンやレタスなど種類豊富。そしてフィッシュボールや餃子・雲呑、豆腐や湯葉の揚げたもの、魚皮、ソーセージやランチョンミートなど、香港独特といえる具材も一般的だ。「なんでもござれのごった煮」のようだが、これはこれで意外な美味しさを発見できることも多い。
つけだれや調味料は各自で調合できる店も多い。醤油・ラー油・酢などをベースに、ネギ・ニンニク・唐辛子・パクチー・生姜・クコの実などをお好みで組み合わせ、自分だけの「オリジナルつけだれ」のレシピを開発してみるのも楽しいだろう。

ニュースタイル火鍋
上記のように冬には欠かせない「火鍋」、自宅でも作れるように「火鍋スープの素」などレトルトパックが市場に数多く出回っているが、近年では水のみを用意すれば他に調理器具など一切不要の「インスタント火鍋」というものが大人気。火鍋レストランで有名な「海底撈」が開発し(自煮火鍋と呼ばれる)、今では様々なメーカーがこぞって販売しており、日本でも楽天市場などで購入可能なほど、市民権を得てきている。スクリーンショット (74)
作り方は至極簡単、一つずつ包装されている具材を全て容器に移し、セットした加熱パックに水を加えその上に具材を移した容器で蓋をする。
およそ15分ほどで舌が火傷するほどアツアツの火鍋の完成!
メーカーにより様々な味のインスタント火鍋が販売されているが、共通して加熱パックが相当熱くなり、湯気でも火傷する恐れがあるため作るときは充分注意いただきたい。
香港内大手スーパーでだいたい一つHKD50~70というお手軽な価格で手に入れることができる。

煲仔飯
スクリーンショット (96)香港庶民が愛する煲仔飯の「煲」とは、小振りの素焼き片手土鍋、秋冬の香港・華南地区の名物料理のひとつだ。
煲仔飯だけでなく、広東の庶民料理では「魚香茄子煲」や「啫啫雞煲」など色々な土鍋料理に使われる。保温性に優れた「煲」を使った料理は熱が冷めにくいのもうれしい。
また、「仔」は小さなものを指す。つまり日本の釡飯のように、一人前の鍋で炊かれるご飯のことだ。「煲仔飯は米を味わう料理」といわれるのもこの調理法と関係がある。釡飯同様、「おこげ(鍋巴)」が味わえるのも直火で炊かれる煲仔飯の特徴だ。
煲仔飯に使われる米は“しっとり”とした食感と“しっかり”とした食感を出すために新米と古米をブレンドしている。この米の上に、排骨(豚の骨付きバラ肉)、鶏肉、牛肉、臘腸(広東ソーセージ)、魚、鰻、カエル肉などの具がのせられ、炭火の爐で炊き上げられる(現在はガス爐も多い)。
出来上がりはおこげが大変香ばしく、甘い醤油だれをかけて、火傷に気をつけながら熱々のうちにいただこう。香ばしい「おこげ」は土鍋ならではの冬の香港名物・煲仔飯、この時期必食のメニューだ。

スクリーンショット (95)冬菇滑鶏煲仔飯
(椎茸と鶏肉の土鍋ご飯)

スクリーンショット (93)臘腸排骨煲仔飯
(広東ソーセージと豚の骨付きバラ肉の土鍋ご飯)

スクリーンショット (94)窩蛋牛肉煲仔飯
(卵と牛挽き肉の土鍋ご飯)

煲仔菜
「煲」を使用した香港式土鍋料理「煲仔菜」は、まさに香港の郷土料理。
前述の通り、冷めにくい土鍋の特性は冬にぴったり。「煲仔飯」同様、香ばしい香りは直火で炊かれる煲仔菜の特徴の一つ。

スクリーンショット (89)柱侯牛腩煲
柱侯醤という調味料を使った、牛バラの煮込み料理。
「柱侯醬」は清朝期が考案した、煮込み用の調味料のことで、大豆、小麦粉、ゴマ、ネギ、ニンニクなどから作られたペースト状の調味料。煮た大根との相性が最高。

スクリーンショット (90)茘芋臘味煲
芋頭と臘味のココナッツミルク風味の鍋料理。
里芋は予め素揚げしておいてからココナッツミルクで煮てスープにする。臘味の旨味とネットリとした里芋の食感が楽しめる一品。

スクリーンショット (91)魚香茄子煲
魚香茄子は、茄子をひき肉と醤油で煮込んだもの。日本でよく見かける「麻婆茄子」に似た四川料理の定番。
揚げ茄子やひき肉を合わせ調味料で炒めており、甘酸っぱさの中にピリッとした辛さが食欲をそそる。

スクリーンショット (92)栗子炆排骨
排骨(骨付きスペアリブ)と栗の土鍋煮込み。
剥いた栗をそのまま使っており、固やわらかい食感が楽しい。コクと香りのバランスがよく、なんとも味わい深い。少し硬めに炊いたご飯との相性は抜群。

羊腩煲
スクリーンショット (88)「火鍋」だけではない!香港では羊のバラ肉を使った下町の味、広東風しゃぶしゃぶ「羊腩煲」も秋冬に欠かせない。その中でも、「黒草羊腩煲」が特に人気。
「黒草羊」は羊肉の中で特に品質が優れているため、高級グルメ食材としても有名で食通達の舌を魅了し続けている。
腹部は脂肪分が多いので煮込み料理に最適な部位だ。ゼラチン質を多く含み、肉の味が濃厚で、じっくり煮込むことによってコラーゲンが溶け出して肉質が非常に柔らかくなる。
スープは羊肉を八角(スターアニス)などの香辛料を使って、時間をかけて調理しており濃厚な味わいで、レタスなどの野菜も一緒に入れるとバランスよく栄養を取ることができる。
コッテリ味に仕上がった羊肉や野菜を、豆腐を醗酵させた中華調味料「腐乳」と組み合わせていただく。個性のあるモノ同士の組み合わせが、絶妙な味わいを作り出す。
東洋医学で、体を温める作用があるといわれている羊肉は冷え性対策のほか、疲労回復の効果がある。食べた後、体が温かくなり、気力も湧いてくるだろう。

鶏煲
文字通り鶏肉がメインの鍋料理。スクリーンショット (80)
多くの店では辛さの選べるスパイシーな麻辣味の鶏を提供しており、最初はタマネギ・ニンニクの芽・パクチーなどと調理された汁無し鍋が出され、その後スープを足して通常の鍋のようにするスタイルが主流。スープを入れた後は好きな具材を追加トッピングし、一度で二度美味しくいただける。追加トッピングには鶏肉以外にも羊肉や牛肉・ソーセージなどの肉類、レタスや白菜、ジャガイモなどの野菜のように火鍋でお馴染みの食材の他、チーズなど変わり種が注文可能なレストランも。
よくある火鍋に飽きてきたという方は試してみる価値アリ。

蛇羹
こちらも「体を温める」ということで、秋から冬にかけての定番。冬を控えた蛇は脂が乗って旨いのだとか。スクリーンショット (83)
香港の街角で「蛇」の看板はよく見かけるが、「夏場はどうしてるんだろう」と、心配になるほどの冬季限定料理だ。
食べ方は鰻のような蒲焼き、ではなくスープで。とろりとした「蛇羹(セェカン)」が人気だ。
3種類の蛇をミックスした「三蛇羮」と、これに更に2種類の蛇を加えた「五蛇羮」が代表的。蛇料理店では「太史五蛇羮」というメニュー名で提供されていることが多い。スクリーンショット (82)
油で揚げたサクサクのクラッカーのような「薄脆(ボクチョイ)」とレモンの葉を細く刻んだものを薬味として添えていただく。
蛇といえば「ゲテモノ」というイメージもあるが、実際に食べてみると、肉質は鶏肉のようで臭みもなくあっさり。おっかなびっくり初めて挑戦するという人も、一口食べれば「アレッ?! 美味しい!」と思わず声が出てしまうほど。
これを食べれば風邪を引かないともいわれる蛇羹、怖がらないで試してみよう。

燒栗・燒芋
冬になると街のあちこちに現れる昔ながらの甘栗や焼き芋の屋台。香港の冬の風物詩の一つと言っても過言ではない。
日本人にはどこかノスタルジーを感じさせる石焼の香ばしい香りに、ついつい引き寄せられてしまったという人も多いのでは。
神出鬼没にも思えるが、定位置に店を出している所もある。銅鑼湾(コーズウェイベイ)や湾仔(ワンチャイ)、旺角(モンコック)など、繁華街の人通りの多い四つ角などでよく見かける。スクリーンショット (81)
売られている焼き芋は日本のそれのように赤くはなく、まるで乾いた大きな土塊のようにも見えるが、中はたしかにサツマイモ。ただ、日本のものほどの甘さはないかも…。
真っ黒になった細かい砂利をに埋まって焼かれる栗は時折スコップで豪快にかき混ぜられながら、時間をかけて香ばしい焼き栗に。ポンド(磅=約453グラム)単位で売られているので、買う時は「一磅(ヤッポーン)」「半磅(ブンポーン)」と、重さで注文する。スクリーンショット (138)
茶色の小さな紙袋で手渡される焼き栗の温かさは、懐かしさを掻き立てる。
他にも紫いもや銀杏、玉子、ウズラの卵、ピーナッツなども炒ったり茹でたりして販売している屋台もある。
必ずしも「ホクホクして甘くておいしい!」とは限らないが、値段も手頃な、香港に残る「素朴な冬の味覚」だ。

臘味(ラップメイ)
スクリーンショット (97)「臘味」(ラップメイ)は、元々中華料理における伝統的な肉の貯蔵法の一種であった。
冷蔵庫が普及してからは肉の保存方法としての重要性を失ったが、今日では様々な種類の「臘味」が開発され、市場に出回っている。
また、広州には「秋風起、食臘味(秋の風が吹いたら、臘味を食べる)」ということわざがある。「臘味」は秋の空気が乾いた時期に美味しくなるようだ。
中国全土でさまざまな「臘味」スタイルがあるが、香港では広東式が普及している。西洋の文献に記載されているビーフジャーキーなどのドライ製法に似ており、塩、砂糖、ワインなどで乾燥処理前に下準備を行う。2014年、ソーセージ、豚肉、アヒルの「臘味」製造技術は、伝統的な職人技として香港の無形文化遺産に登録された。

スクリーンショット (98)臘腸/膶腸
(ラップチョン/ヨンチョン)
香港で最も一般的なタイプの「臘味」は、臘腸(ラップチョン)と膶腸(ヨンチョン)。
「臘腸」は豚肉を、「膶腸」はアヒルやガチョウのレバーを使用したソーセージ。
濃口醤油、醤油、塩、ロゼワイン(玫瑰露酒)で肉をマリネし腸に詰め、調味料に浸した後、水分が25%以下になるように風通しの良いところで吊るして乾燥させる。
現在では充分な広い場所の確保ができない、気候が読めない、時間がかかるなどが原因で自然の風を用いて乾燥させるということはあまりなく、工場の機械で熱風乾燥処理を行うのが最もポピュラーな方法。肉は35~40°Cの温度で空調された装置に入れられる。温度と持続時間は、処理中の肉の特性にもよるが、約500kgのソーセージであれば、通常3~4日間の熱風乾燥を経て完成。

スクリーンショット (100)臘肉
(ラップユク)
臘肉(ラップユク)は、中国の有名な伝統的な塩漬け肉で、豊かな香り、まろやかな味、豊富な栄養価、そして独特の風味を持つ。
紀元前1500年、中国人は豚バラ肉を塩で硬化させ、歴史上最初の「ベーコン」を作った。その工程を改良し、火を通してみたり天日干しを行うなど試行錯誤した結果、現在ポピュラーとなった臘肉を生み出した。西洋のベーコンのようにそのものを食べるというよりも、香料やアクセントとして使用される。
最高の豚バラ肉は五花肉と呼ばれ、文字通り「5つの花の肉」を意味し、5つの美しい肉と脂肪の層を持つ。脂肪が少ないと肉は乾燥し、脂肪が多すぎると脂っこくなる。
肉屋で注文する際は、保存がきくか(肉と脂肪のバランスが良いか)を確認して購入するのがベスト。
また、通常皮は付いたまま売られている。水に長時間浸すと、風味を損なうことなく柔らかくなり、蒸した後、すぐに食べることができる。
また「臘肉」には「広東臘肉」と「四川臘肉」があり、香港で主に売られているものは前者。砂糖、塩、醤油、白酒、八角(スターアニス)、花椒、シナモンでマリネして乾燥させたものだ。
四川臘肉は、砂糖、塩、料理用ワイン、五香粉でマリネした豚バラ肉を乾燥させ、ヒノキで燻製したもの。

スクリーンショット (99)臘鴨
(ラップアップ)
臘鴨(ラップアップ)は、アヒルの「臘味」。臘腸、膶腸、臘肉と並んで、冬の時期になると肉屋の店先にぶら下がっているのを見かけるであろう。
秋から冬にかけて売られているが、アヒルはより多くのコストがかかり、作成に時間がかかるため、「臘肉」ほど頻繁に食べられるものではない。
作り方は臘肉とよく似ており、調味料で数日間マリネし、涼しく乾いた場所で、天候にもよるが約7~14日間乾燥させる。
「臘鴨」は素晴らしく繊細な食感で、濃厚な鴨肉の風味があり「臘味」の中でも高級な部類に入る。
「臘肉」とは異なり、そのものを食べる主食として用いられる。米と一緒に炊き上げると、素晴らしい香りと旨味がご飯に広がる。
また一口大に切り、蒸してお粥と一緒に食べることも。

臘味の旨味が楽しめる代表的な料理
生炒糯米飯
(サンチャウノーマイファン)
スクリーンショット (105)生炒糯米飯(もち米のチャーハン)は、クラシカルな広東料理のチャーハンのひとつ。
基本的には、臘味、椎茸、干しエビ、ホタテ、ピーナッツが材料。もち米はお腹を保温してくれる(暖胃)ため、冬場に重宝される。
リゾットのように生米から調理する方法であり、非常に時間と労力を要する。もち米を一晩漬けて中華鍋に入れて炒めるところから始まり、その後ソースを少しずつ加えて炊き、完全に炊き上がるまでゆっくりと加熱する。この方法により米の形が崩れず、歯ごたえがあり、べたつきが少なくなり、且つ米全体に「臘味」、干しエビ、ホタテの旨味がいっぱいに広がる。しかし残念ながら現在ほとんどのレストランでは時間短縮のため通常のチャーハンと同じように通常通り炊き上げた米を炒めていることが多いようだ。

糯米鶏
(ノーマイガーイ)スクリーンショット (102)スクリーンショット (101)
もち米の蒸し物に粘り気のあるご飯を詰めた点心の定番。
もち米の蒸し物に「臘腸」、鶏肉、豚腹の塩漬け、きのこをトッピングし、乾燥した蓮の葉で包んで蒸す。蒸し終えたばかりのものを開封すると、たちまち広がる香りがたまらなく魅力的な料理。一般的に一個単体がかなり大きいので、珍珠雞(ジャンジュガーイ)と呼ばれている小さめのものも売られている。

臘腸卷
(ラップチョンバン)
スクリーンショット (103)「臘腸卷」は、昔ながらの人気料理の一つである、伝統的な点心料理。ふわふわのパン(または饅頭)で作られ、パンの中に「臘腸」の風味と塩味がよくマッチしている。
パンを「臘腸」にコイル状に巻き付けており、パン屋で見かけるソーセージドッグのような見た目で大変食べやすい。
そして蒸しの過程で、パンは「臘腸」から油を吸収して旨味をたっぷりと含む。

 

蘿蔔糕
(ローポーガオ)スクリーンショット (104)
「蘿蔔糕(大根餅)」は、広東レストランで一年中提供される伝統的な点心。
大根(菜頭)という言葉は、「幸運」(好彩頭)と同音異義語のため旧正月に香港の食卓で愛されている定番食だ。
主な材料は大根と米粉。伝統的なものは、干しエビ、干し椎茸、そして「臘味」を用いて調理されている。

 

冬に食べたい!辛い料理レストラン6選

スクリーンショット (106)老川皇
宮保鶏丁
ローカルの人からの人気が高く、伝統的な味と価格も魅力的なお店。
辛いものが好きな人も、それほど得意ではない人も、自分に合った辛さ加減でオーダー可能。物足りないときは辛さのアップグレードも可、「老川皇」の名に恥じないサービスだ。
四川料理の代表的メニューの「宮保鶏丁」は、唐辛子と山椒とナッツの旨味がやわらかな鶏肉とともに絡み合い、唐辛子の持ち味が十分に生かされている。口の中で奏でられる鶏やナッツなどの素材と辛さのハーモニーを楽しもう。
老川皇
住所:G/F., 45 Woosung St., Jordan
電話:(852)2780-9119  時間:12:00~26:00

スクリーンショット (109)Qi
水煮魚
ロマンチックなキャンドルディナーが似合いそうなモダンな内装とは裏腹に、本格激辛四川料理を提供しているお店。
様々な四川レストランを試した人達が声を揃えて同店は最も辛いレストランの1つだというから、辛いもの好きには見逃せない!
同店で必食の「水煮魚」は大きな器にこれでもかと唐辛子を敷きつめ、ラー油に似たチリオイルで煮た白身魚だ。唐辛子、黒胡椒、山椒全ての辛さが混ざり合い、辛さの中にもコクのある甘みも感じられる。冬に食べると一気にカラダが熱くなり、同時に食欲も倍増、一度食べると病みつきに。
Qi – House of Sichuan
住所:Shop 12, 2/F., J Senses, 60 Johnston Rd., Wan Chai
電話:(852)2527-7117
時間:12:00~15:00、18:00~22:00

スクリーンショット (110)川莊
螞蟻上樹
Langham Placeの12階にある四川料理レストラン「川莊」は、黒と赤の内装でお洒落な雰囲気が漂う。本格的な食材を使った豊富なメニューをリーズナブルな価格で提供しており、ローカルの人たちにも人気の店。
オススメは「螞蟻上樹」。中国の四川と重慶地区の伝統料理の一つとして有名で、春雨とひき肉が絡み合い、見事に融合し絶妙なハーモニーを醸し出している。あたかも蟻が木に群がっているように見えたから、というのが由来のユニークな料理だ。
川莊
住所:Shop 12, 12/F., Langham Place, 8 Argyle St., Mong Kok
電話:(852) 2870-2116 時間:12:00~22:00

スクリーンショット (107)湘肴世家
干鍋肥腸
本格的な湖南料理が味わえると評判の「湘肴世家」は、外装からも本場中国の雰囲気が感じられる店は、カップルや家族での食事はもちろん、接待や宴会等、幅広く利用できる。油麻地を訪れた際は、本格的な湖南料理を味わいに行ってみよう。
名物は「干鍋肥腸」。豚もつと野菜を中辛の山椒で合わせた鍋料理で、湖南料理において最もメジャーな料理の1つ。豚もつと山椒の風味が効いており辛さレベルも高いが、辛い中にまろやかな甘さも共存する、クセになる逸品。
湘肴世家
住所:M/F., Nathan Tower, 518-520 Nathan Rd., Yau Ma Tei
電話:(852) 2986-9932  時間:11:00~14:30、16:30~21:30

スクリーンショット (108)KiKi Noodle Bar
担々麺
日本人にもお馴染みの担々麺は、四川省成都市発祥の麺料理。「担々麺」は雌鳥で取った味わい豊かなスープと、豚ひき肉、唐辛子、ゴマダレのバランスが絶妙な風味を醸し出す。
四川料理を提供する人気レストラン「KiKi Noodle Bar」では、使用している自家製麺が大人気。この上ない歯ざわりを持ち、防腐剤を添加せず、純粋に小麦粉と水だけから作られた高品質の麺が自慢。
KiKi Noodle Bar
住所:Shop 2017, Podium Level Two, ifc Mall, 1 Harbour View St., Central
電話:(852)2114-3426  時間:11:00~22:00

スクリーンショット (111)嫲嫲辣辣
麻婆豆腐
尖沙咀にある「嫲嫲辣辣」は、その名の通り辛い料理が楽しめる。Open Riceでの評価も高く、「麻婆豆腐」から「干鍋料理」、「酸菜魚」とバラエティに富んだ辛い料理がメニューに並び、特に「麻婆豆腐」が絶品。辛味の抑えられた「蓉派」の麻婆豆腐、豆板醤と乾燥した唐辛子を使用しており、香りがよく綺麗な赤色が特徴で、辛いものが苦手な人でも美味しくいただける。
嫲嫲辣辣
住所:Shop J1, G/F., 9 Hau Fook St., TST
電話:(852) 2394-0211  時間:12:00~16:00、18:00~24:30

 

作ってみよう 薬膳スープとホットデザート
香港・華南地区の伝統の一つとして「食事療法としてスープを飲む」ということがある。
健康状況に応じて、季節ごとに異なる種類のスープを飲む。多くの香港・広東人は、スープが熱を取り除き、美しさを養い、健康な身体を作り、病気を予防または治療し、人体の重要な臓器に栄養を与える役割を果たしていると信じている。
広東料理のスープは非常に豊富な種類がある。
比較的乾燥季には、肺を湿らせて健康な血液を作るためのスープ。イライラしがちな人には心を静める冷たいスープ、寒気のする人には熱を生むスープなどなど。他にも女性のための冷え性対策などの類のスープも。
様々なハーブや材料を用いたスープは、肌や身体に適度な水分と栄養を補給すると伝わっている。
そこで今の季節、心も身体も満足させるスープを試してみよう。
また、食後にピッタリの温かいお手軽デザートレシピも紹介。

スクリーンショット (112)胡椒豬肚湯
(ウージゥジュートウトーン)
身体の芯から温めるスープを紹介しよう。
この伝統的な「広東風豚の胃と白コショウのスープ」は、大量の焙煎した白コショウを使用した、クラシカルな美味しさ。
白コショウは食欲を刺激するだけでなく、中国医学では身体温暖効果があると考えられている。
また豚の胃には、脾臓や胃を強化するタンパク質が含まれており、まさに「医食同源」を地で行く薬膳スープだ。
調理法
❶豚の胃を洗浄する
豚の胃をきれいにするには、裏返して不純物を取り除き、すすぐ。
豚の胃全体に塩と片粟粉をたっぷりとふりかけ、数回こすり洗いする。
臭いや水が透明になるまで流水で洗い流すこと。※豚の胃を買った際、ぱっと見綺麗に見えることが多いが、裏返して触るとぬるぬるしており、鼻を衝く臭いを放つ。この臭いとぬめりの原因となるのは粘液性の膜であり、臭いを取り除く(洗浄する)目的はこの膜を取り除くことである(ほとんどのスーパーマーケットでは洗浄済みの豚の胃を購入することも可能)。
❷鍋に水を入れ、洗浄した豚の胃、料理酒、ワケギ、生姜スライスを入れ沸騰させ、5分茹でたら一度火を止め、豚の胃を取り出し食べやすい大きさに荒く切り、水気を切る。(スペアリブを用いるのであれば同様に5分間茹でて、水気を切る)
❸カラシナの漬物をすすぎ、大きく切る(塩味や酸味を抑えたい場合は、水に長く浸す)。
❹白コショウを香りが出るまで炒め、すり鉢で軽く潰すか、ティーバッグに入れて麺棒で潰す。
❺②の鍋を火にかけ再沸騰したら、すべての材料を一緒に加え強火で30分一煮立ち、その後弱~中火で1時間コトコト煮込む。
立派な中華スープの完成だ!
スクリーンショット (136)
香港スイーツで温まる!
スクリーンショット (122)薑汁撞奶
(ギョンチャップチョンナイ)
まろやかなミルクの風味の中にピリッと生姜のアクセントが効いた、身体が温まるホットデザート。
材料は牛乳と生姜と砂糖だけ。沸騰した牛乳に砂糖を溶かし、牛乳が90~95℃くらいになったらあらかじめ絞っておいた生姜汁に注いでかき混ぜ、固まるまでちょっと待つだけ。
と、シンプルな作り方なので、家庭でも簡単に作ることができる。
ちなみに寒天やゼラチンを入れていないのに固まる仕組みは、生姜に含まれるプロテアーゼという酵素と牛乳のたんぱく質との化学反応によるもの。
冷え切った身体に染み渡るスイーツだ。

スクリーンショット (123)番薯糖水
(ファンシュトンソイ)
香港で伝統的スイーツといえばこの番薯糖水。
レシピは至ってシンプル、サツマイモを砂糖やしょうがと一緒に長時間グツグツ煮込むだけという、家でもお手軽に作れる一品。
サツマイモは香りも味もリッチな黄色いものを使うのが最も理想的。生姜の量は好みに合わせて調整しよう。加えてデーツも一緒に煮込めば、より自然な甘さと芳醇な香りが楽しめる。
砂糖は東南アジアや中華デザートによく使われる、茶色の分厚いスラブシュガーを使ってみよう。金色の輝きが食欲をそそる、うまみたっぷりのスープを演出してくれる。
特に風邪をひいた時に試して欲しい、甘くて温かいデザートだ。

スクリーンショット (124)薑湯圓
(ギョントーンユウ)
ほんのり甘い生姜風味の温かいスープに白玉のような白い団子が入った「姜湯圓」(湯丸とも表記される)。湯圓の白い団子(圓)は小さいながらも中に甘い餡が入っている。
いくつか種類がある中で、香港で最もポピュラーなものは黒ごま餡の「芝麻湯圓」だろう。黒ごまをふんだんに使った黒い餡は熱々で、これまた身体が温まる。
砕いた落花生が入った「花生湯圓」も人気。落花生の食感と甘さが、生姜の「ちょいピリ」スープと相まって香港の冬の味覚を実感できる。
これらは香港市民に広く親しまれており、夕食タイムが終ったくらいの時間帯には、すでに満員の老舗甜品店の店先に順番待ちの人々が溢れる光景もしばしば見られる。
家で作るなら市販の団子を用いると至って簡単だ。
中くらいの鍋にお湯を沸かし、団子を入れたらくっつかないよう軽く混ぜる。団子を入れると湯の温度は下がるので、再び沸騰したら1/2カップの差し水をする。
この手順を2、3回程度繰り返し、茹で上がったら温かいお湯やシロップに浮かべて召し上がれ。

広東でしか食せない!? 温まる珍味
螺蛳粉
スクリーンショット (132)おおよそ香港と広東で食べられるものはおおよそ差異はないが、この「螺蛳粉 luó sī fěn」は香港では全くと言っていいほど食べられない料理であろう。
ある統計によると、2020年に全国で一番人気のあった食べ物はタニシ麺(螺蛳粉)である。
タニシ麺は年110億円を売り上げ、蘭州ラーメン、沙県小吃、麻辣湯、黄鶏と一緒に、中国の第五の国民食となった。特に若い人たちに人気があり、海外のファンもたくさんいるようで、アメリカやカナダでは高級中華レストランでも提供されているのだとか。
タニシ麺は広西壮族自治区柳州市発祥のローカルフードの一つで、辛味、酸味、清涼感とともに独特な臭気を持つ。
全国に知られるようになったのは、2012年に放送された人気ドキュメンタリー番組「舌で味わう中国(中国語:舌尖上的中国)」で紹介されたことから徐々に人気に火がついたという。
タニシ麺と呼ぶのは、タニシからとったスープが由来。原則タニシ自体は入っていない。スクリーンショット (125)スクリーンショット (137)
初めて口にする際は辛さと独特の風味に慣れないかもしれない。そのタニシスープに柳州特有のやわらかく滑らかなビーフン、酸笋(筍の漬物)、落花生、揚げ湯葉、きくらげ、若菜などの具材を加えて完成。
タニシ麺の大きな特長のひとつが独特の臭気。しかしこの臭いが原因で有名になり、この「臭い」がなくなったら、まるで炭酸ガスの抜けたコーラのように受け入れられないようだ。形容されているのがトイレや足の臭いだとか。スクリーンショット (129)
名前からしてタニシが発する臭気と思われそうだが、その臭いの正体は「酸笋」という筍の漬け物。筍を15~20日間ほど発酵させ、発酵過程で各種の酸、フェノール、アルコール、アルデヒドなどの物質が発生する。スクリーンショット (130)
広西大学の研究によると、この酸笋の中に54種類の揮発性物質が検出されたとのこと。発酵臭、カビ臭、土臭など、臭豆腐と同様な臭いである。
だがその臭いが美味しいと多くの人を魅了し、この2年間で人気のグルメとなった。
各都市には非常に多くのタニシ麺店があり、年収100億近くの産業となった。
また、柳州には専門の「タニシ麺学院」がある。
柳州は水田が多く、数千年前から現地の人たちはタニシを食べる習慣があった。その後、唐の時代に稲作がはじまり、米粉に加工し麺を作っていた。
タニシ麺の起源は諸説ある。
その一つが、1980年代初期のある日の深夜に、何人かの外来者が柳州に来て、閉店前の屋台にたどり着く。しかし当時定番であった動物の骨からとったスープが時間的にほぼ底を尽いており、タニシスープが一つしか残っていない。屋台の主人はビーフンをタニシスープに入れてひと煮たち、野菜と落花生などの副菜を加えて提供した。これが意外にも好評を呼んだことから屋台の主人は具材などを改善し、今注目されているタニシ麺の原型となったとのこと。
近年、多くの企業がインスタントのタニシ麺を販売するようになり、なんと日本の中国雑貨店などでも販売されているという。
スクリーンショット (126)スクリーンショット (127)驚くことに月餅やポテトチップス、KFCなどのその他の飲食業もタニシ麺を参考に商品開発をしており、KFCはタニシ麺の定食を出し、月餅の商店はタニシ麺の餡の月餅を出すほか、タニシ麺味の鍋やアイスクリームなども近年人気の食品になった。
身体が温まるのはいいが、日本人だと臭いに抵抗のある人は少なくないだろう……。
臭いと辛さ、酸味がそれぞれ強く主張する一品、チャレンジ精神のある方は試してみてはいかがだろうか。

スクリーンショット (133)潮州砂鍋粥
「粥」の名前がついてはいるが注文すると鍋が運ばれてきて、粥と様々な食材を共に土鍋でぐつぐつ煮込んでいただく。
一人用はなく、少なくとも2~3人前からの注文となる。スクリーンショット (134)
食材はお好みで選ぶことができ、レストランにもよるが主に蟹、海老、ホタテやアワビなどの豪華な海産物から野菜、キノコ類など様々な食材をごった煮する、贅沢な「鍋」。
冬場になると広東ではこぞってレストランへ足を運び食べる、寒い時期にぴったりの名菜である。
家族と、友達と、みんなでわいわい砂鍋粥を囲み、心もお腹もほっこり温めよう。

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