中国法律コラム52 「中国の定年退職制度について」

2020/10/01

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 日本では、定年退職年齢は、法律で定められておらず、会社は定年退職に関する事項を法律の範囲内で自ら規定できることとなっています。しかし、こちら中国では、労働者の退職年齢は法律により全国一律に定められています。今月号のコラムでは、中国の定年退職についてポイントを解説します。

 

一、退職時の経済補償金について

 中国の労働法では、労働者が法定年齢に達したとき、労働契約は自動的に終了になるとされています。なお、定年退職を事由に労働契約を終了するとき、使用者は経済補償金を支給する必要はありません。中国では、日本のような退職金制度は一般的ではないため、通常、日本の退職金制度のように、日頃から積立され退職時に支給される金員はありません。

 

二、中国の定年退職年齢

 前述のとおり、中国において定年退職年齢は法に定められており、男子は満60歳、女子は満50歳、女子労働者が幹部身分である場合は満55歳とされています。本規定は、明確なように感じられますが、実務においては、後述の点が争点となり、紛争が生じることが多々あります。

 

三、女子労働者の定年退職年齢について

 女子労働者の場合、男子労働者とは異なり、幹部身分と非幹部身分(中国語は「工人」)とで、定年退職年齢が異なるため、定年退職が50歳なのか、55歳なのかを争点に紛争が生じるケースが多々あります。それでは、女子労働者が幹部身分なのか、非幹部身分なのかはどのように判断すべきでしょうか?

 この問題について、広東省労働および社会保障庁は「粤労薪[1999]114号文書」を公布し、女子労働者の定年退職について規定をしています。当該規定は、次のように解釈することができます。

 女子労働者の現在の職位が幹部と認められる職位であれば(例:主任、課長、部長、マネージャーなど)、定年退職年齢は55歳と、ワーカーなど一般的な職位であれば、非幹部身分として定年退職年齢は50歳と判断できる。

 ただし、どのような職位を幹部身分、非幹部身分と判断するかは、具体的に明確にされているわけではないため、判断が難しい職位もあります。

 実務対応としましては、女子労働者が満50歳になる時点で、まずは、社会保険の継続納付が可能かどうかを確認します。社会保険局のシステム上、満50歳で納付ができなくなる非幹部身分であった場合、まずは本人の意思を確認します。

 本人が50歳での退職に同意する場合、50歳で定年退職をしてもらいます。本人が50歳での定年退職に応じない場合は、労働契約から労務契約へ切り替えることも検討できます。労働契約を労務契約に切り替えることができれば、今後、会社が本人との労務契約を解除しようと思った場合、即日解除も可能であり、また、経済補償金の支払も不要であるため、会社にとって大変メリットがあります。

 自分は幹部身分であると主張し、労働契約から労務契約への切り替えに同意せず、55歳までの継続雇用を求める労働者に対しては、会社は慎重に対応する必要があります。会社が一方的に定年退職として処理し、紛争となった場合、本人が法的手段で争い、幹部身分であることを立証した場合には、不当解雇と認定されますので、賠償金支払の法的リスクに直面することになります。

以 上

 

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ddd広東盛唐法律事務所
SHENG TANG LAW FIRM
法律顧問

大嶽徳洋  Roy Odake

行政書士
東京商工会議所認定
ビジネス法務エグゼクティブ
Tel:(86)755-8328-3652
E-mail:odake@yamatolaw.com

中国の法律事務所で10年以上の実務経験を有しています。
得意分野は、労働法・会社法・契約法です。
法律関係でお悩みのことがありましたら、お気軽にご連絡ください。

九州出身、趣味は卓球です。
深圳市で日本人卓球クラブの代表を勤めております。
卓球が好きな方は、ぜひお気軽にお声掛けください。
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