尹弁護士が解説!中国法務速報 Vol.26

2020/08/05

従業員の解雇事由

 中国ではどのような場合に従業員を解雇、又は整理解雇(リストラ)することができるのでしょうか。
 解雇が可能な事由は、以下の通り法律で定められています。また、解雇条件は従業員側の原因により異なります。

 

従業員に過失がある場合
(労働契約法第39条)

a. 試用期間において採用条件に適合しないことが証明された場合

b. 使用者の規則制度に著しく違反した場合

c. 重大な職務怠慢、私利のための不正行為があり、使用者に重大な損害を与えた場合

d. 従業員が同時に他の使用者と労働関係を確立し、当該使用者の業務上の任務の完了に重大な影響を与え、又は使用者から是正を求められたがこれを拒否した場合

e. 労働契約法第26条1項1号に規定する事由により労働契約が無効となった場合

f. 法に従い刑事責任を追及された場合

 労働契約法第39条に基づく解雇条件として、従業員への事前の通知は不要であり、解雇が禁止される事由(女性従業員の妊娠、出産等。以下同じ。)があったとしても解雇できます。また、従業員に経済補償金を支払う必要はありません。

 

従業員に過失がない場合
(労働契約法第40条)

a. 従業員が病を患い、又は労災以外で負傷し、規定の医療期間の満了後も元の業務に従事できず、使用者が別に手配した業務にも従事することができない場合

b. 従業員が業務に不適任であり、研修又は勤務部署の調整を経てもなお業務に不適任である場合

c. 労働契約の締結時拠り所とした客観的状況に重大な変化が生じ、労働契約の履行が不可能になり、使用者と従業員との間で協議を経ても労働契約の内容変更について合意に達することができない場合

 労働契約法第40条に基づく解雇条件として、解雇の30日前に書面で通知するか、又は1ヶ月分の給与を余分に支払う必要があり、解雇が禁止される事由があれば、本条に基づき解雇をすることはできません。また、従業員に経済補償金を支払う必要があります。

 

整理解雇
(労働契約法第41条)

 20人以上の人員削減、又は20人未満でも全従業員の10%以上を占める人員削減を行う必要があり、以下事由のいずれかに該当する場合、整理解雇ができます。

a. 企業破産法の規定により再生(中国語:重整)を行う場合

b. 生産経営に重大な困難が生じた場合

c. 企業の生産転換、重大な技術革新又は経営方式の調整により、労働契約の変更後もなお人員削減の必要がある場合

d. その他、労働契約締結時に拠り所とした客観的経済状況に重大な変化が生じたため、労働契約の履行が不可能となった場合

 整理解雇をするためには30日前までに労働組合又は全従業員に状況を説明し、意見を聴取し、人員削減計画を労働行政部門に届出なければなりません。なお、一定の事情がある従業員は優先的に雇用を継続しなくてはならないので注意が必要です。

 


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Profile Photo尹秀鍾 Yin Xiuzhong
慶應義塾大学法学(商法)博士。東京と北京の大手渉外法律事務所での執務経験を経て、2014年に深センで広東深秀律師事務所を開設。2020年春に広東卓建律師事務所深セン本部にパートナーとして加入。華南地域の外国系企業を中心に幅広い法務サービスを提供。主な業務領域は、外商投資、M&A、労働法務、事業再編と撤退、模倣品対策、紛争解決など。

 

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