中国法律コラム50 「勤続年数のリセットについて」

2020/07/22

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 今回は、クライアントから寄せられた興味深い問い合わせについて紹介させていただきます。

小生のクライアントでは、ある従業員が業務上重大な過失を犯し、会社に多大な経済的損害を与えたため、当該従業員に自己都合退職をさせ、当該従業員を再雇用することによって経済補償金の支払いをなくして勤続年数をリセットさせ、会社の経済的損害を埋め合わせる案を検討中でした。

今回は、このようなスキームが中国の労働法令上実行可能かどうかについてご紹介します。

 

一、自己都合退職させた後に再雇用することで、勤続年数をリセットできるか?

1、《深セン市中級人民法院による労働紛争事件の審理における裁判指南》第105条、《深セン経済特区の調和の取れた労働関係促進条例》第24条の規定によると、自己都合退職させて再雇用したとしても、当該従業員の勤続年数をリセットさせるという目的を実現できません。その自己都合退職前の勤続年数は、連続で計算されることになります。つまり、将来的に経済補償金を支給しなければならなくなったとき、一旦自己都合退職する前の勤続年数についても依然として経済補償金を支払う必要があるということです。

 

2、法的根拠:

《深セン市中級人民法院による労働紛争事件の審理における裁判指南》 に関する通告 深中法発〔2015〕13号

105条、使用者が悪意をもって《労働契約法》第14条を回避する以下の行為を行った場合、その行為を無効と認定し、労働者の勤続年数及び固定期間労働契約の締結回数は連続で計算する。

(一) 働者に「勤続年数をリセット」させるため、労働者に辞職を迫ってから再度労働契約を締結した場合。

…略…

《深セン経済特区の調和の取れた労働関係促進条例》〔2019修正〕第24条

使用者と労働者が労働契約を解除又は終了し、6か月以内に労働契約を再度締結した場合、労働者が《中華人民共和国労働契約法》第39条の定めに違反して使用者に労働契約を解除された場合を除き、労働者の本単位における勤続年数は連続で計算しなければならない。

…略…

 

二、著しい規則違反を理由に懲戒解雇した後、再就職を受け入れる場合、勤続年数をリセットできるか?

1、前述の法律規定によりますと、従業員が規則制度への著しい違反により、中国《労働契約法》第39条に基づき懲戒解雇された後に、6か月以内に再度入社するケースにおいては懲戒解雇前の勤続年数は連続で計算しなくてもかまいません。つまり、再就職した後、将来的に当該従業員の経済補償金を計算するに当たり、解雇前の勤続年数については経済補償金を支払う必要がないということです

 

2、法的根拠:

《労働契約法》第39条【使用者による労働契約の解除】

労働者が次の各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合、使用者は、労働契約を解除することができる。

…略…

(二) 使用者の規則制度に著しく違反した場合。

…略…

 

三、まとめ

1、従業員に自己都合退職を求め、その後6ヶ月以内に再雇用する場合、勤続年数はリセットできません。

2、就業規則に著しく違反したことを理由として懲戒解雇し、その後再雇用するケースでは勤続年数をリセットすることができます。具体的な手順は以下の通りです。

(1) 《労働契約解雇通知書》を発行し、当該従業員が業務上重大な過失を犯し、会社に大きな経済的損害を与えたことを理由として、懲戒解雇処分とします。この場合、経済補償金を支払わずに労働契約を解除することができます。この際に、解雇処分を受け入れ、今後異議を申し立てたり、経済補償金や労働契約違法解除の賠償金を請求したりしないことを明確に表明させることがポイントです。

(2) 「業務に励む」、「心を入れ替える」などの文言を盛り込んだ再就職の申請書を提出させ、会社がこれを受け入れ当該従業員を再雇用する形で再雇用します。

以 上

 

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ddd広東盛唐法律事務所
SHENG TANG LAW FIRM
法律顧問

大嶽徳洋  Roy Odake

行政書士
東京商工会議所認定
ビジネス法務エグゼクティブ
Tel:(86)755-8328-3652
E-mail:[email protected]

中国の法律事務所で10年以上の実務経験を有しています。
得意分野は、労働法・会社法・契約法です。
法律関係でお悩みのことがありましたら、お気軽にご連絡ください。

九州出身、趣味は卓球です。
深圳市で日本人卓球クラブの代表を勤めております。
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