尹弁護士が解説!中国法務速報 Vol.25

2020/07/15

無固定期間労働契約の締結義務

 中国では固定期間労働契約と無固定期間労働契約がありますが、どのような違いがあるのでしょうか。会社は何時無固定期間労働契約を締結しなくてはならないでしょうか。

 

固定期間労働契約と無固定期間労働契約

 中国で労働契約を更新する場合のリスクとして、無固定期間労働契約の締結義務があります。このリスクを理解するために、まず固定期間労働契約と無固定期間労働契約について説明します。

 固定期間労働契約は、会社が従業員と契約終了日を約定する労働契約であり、契約期間が満了すれば更新されない限り労働契約は終了します。つまり、会社としては「労働契約を更新しない」ことにすれば、特に解雇理由がなくても従業員を退職させることができます。

 他方、無固定期間労働契約は会社と従業員が約定する確定的な終了日のない労働契約です。つまり、期間満了で労働契約が終了することはありません。そのため、従業員を一方的に退職させるには解雇の手続を経る必要があり、解雇できる場合は法律で限定的に定められているため、退職させるのが難しくなるのです。

 

無固定期間労働契約を締結しなくてはならない場合

 以下事由のいずれかに該当し、かつ従業員が労働契約の更新、締結を申し出、又は同意した場合は、従業員が固定期間労働契約の締結を申し出た場合を除き、会社は無固定期間労働契約を締結しなくてはなりません。

 

① 従業員が会社において勤続満10年以上であるとき

② 会社が初めて労働契約制度を実施するか又は国有企業を再編して労働契約を新たに締結する時に、従業員が当該会社の下において、勤続満10年以上であり、かつ法定の定年退職年齢まで残り10年未満であるとき

2回の固定期間労働契約を連続して締結し、かつ従業員が労働契約法に定める関連事由(第39条、第40条1号、2号の規定事由)に該当せず、労働契約を更新するとき

 

 他にも、会社が雇用開始日から満1年を経過しても書面の労働契約を締結しない場合、無固定期間労働契約を締結したものと見なす規定があります。

 また、上記③の法律文言は明確でないため、以下2つの見解があります。

 

見解A:会社は2回目の労働契約更新を拒絶する権利がない(上海を除く地域)

見解B:会社は2回目の労働契約更新を拒絶できるが、更新する場合は無固定期間労働契約になる(上海)

 

 広東を含む華南地域では、見解Aを適用しているため、リスクを避けるという観点からは保守的に見解Aを前提として行動すべきと考えます。見解Aを前提にした場合、使用者にとって、1回目の契約更新をすると期間満了で雇止めにする機会は失われます。そのため、十分に慎重な対応が求められます。

 なお、使用者は無固定期間労働契約の締結義務が生じる時期を考慮して1回目と2回目の労働契約期間を合理的に設定する必要があります。

 


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Profile Photo尹秀鍾 Yin Xiuzhong
慶應義塾大学法学(商法)博士。東京と北京の大手渉外法律事務所での執務経験を経て、2014年に深センで広東深秀律師事務所を開設。2020年春に広東卓建律師事務所深セン本部にパートナーとして加入。華南地域の外国系企業を中心に幅広い法務サービスを提供。主な業務領域は、外商投資、M&A、労働法務、事業再編と撤退、模倣品対策、紛争解決など。

 

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