PPWビジネス通信 × アナシス Vol.30

2020/06/24

M1

人事労務のアナシスによる誌上相談会

「危機感を醸成したいのだが…」
問い
新型コロナも落ち着きつつありますが、第2波も気になるところ。経済の先行きも見えず、経営的にも厳しい状況だと思うのですが、今ひとつ従業員に危機感を感じられません。どうすればいいでしょう。

黒崎:他のところにも書かせていただいたのですが、「どうしたら危機感を伝えられるのか」というご質問はよくいただきます。「危機感」という言葉はその「伝える」よりも「醸成」するという言葉が良く共に使われ、今回もタイトルにはそれを使わせていただきました。

本当の危機に陥ってから危機感をあおる人を経営者とは言いません。名経営者はうまくいっている時こそ危機意識を共有しているものです。一方で現在のような環境の中でも、本来なら自分から持つべき危機意識を持たない管理職などが会社に存在してしまうことも現実としてよくあります。背景はいろいろあるでしょうが、当地では「沈む船なら乗り換えろ」が生き抜くための術のようにも思えます。もう一つ、「自分は大丈夫」という「自己正当化バイアス」がある場合です。そこへ経営がへたに危機感をあおるメッセージを出して不安を増殖すれば、一刻も早く乗り換えねばという思考が生まれるリスクもあるわけです。

そもそも以前から、また昨年からの香港の動きや新型コロナへの対応で、香港・華南の企業は世界の中でのポジショニングの再考を迫られてきました。本社でさえ当地からの縮小や撤退などを水面下で検討しているケースもあるのであれば、現場のリーダーはどんなメッセージを伝えればいいのでしょうか。

自分だけは大丈夫だろうという根拠のない思い込みも、危機感の醸成にはマイナスです。新型コロナが発生した頃も危機意識にはずいぶんと温度差がありました。身近なところに影響が出始め、「自分ゴト」になっていくプロセスが危機感の醸成には必要なのです。その醸成には「徹底的・客観的な現状把握」と「その状態が継続していくことの未来へのインパクトの認識」が必要です。その二つが現状を変革していく「必要性」を腹落ちさせることになります。現状把握としては、経営は様々な情報開示と従業員との対話を実行していく必要があるでしょう。利益などの数値の社内での公開も、この際考え直しておくべきだと思います。現地法人としては、人件費の考え方が売上・利益の中でどう位置づけられ、賃金・賞与はどういう基準で支給しているのかという原理原則が問われてくるでしょう。ここをトップが理解せずに経営状況を話しても、納得してもらえる情報開示にはなりません。すべて透明化せよという話ではなく、どこまで話すか、そしてその論理の組み立てをしておくべきであるということです。

「現状把握」と「未来へのインパクトの認識」という二つのプロセスは必要なものの、それでも企業が乗り続けるべき船として認識してもらえないのであれば、ただ危機感をあおることと一緒です。私は危機感を伝えることよりも大事なものがあるのだと考えます。それはまず従業員達が何を大切にして働いているのか、そのモチベーションの源泉は何なのかを経営側が認識していくこと。それは賃金だけではないはずです。これだけ先が見えない中で、一緒に働いてくれる従業員達がどんな不安を抱え、どんなことに意味を見いだしているのか。その源泉が分かれば、変革への勇気やパワーとなる可能性があるからです。

危機感とは結局変化を生み出すためのもの。変化には希望と勇気と能力が必要であり、それらを発揮してもらうための環境創造を経営が仕掛けることです。そしてその勇気ある行動や能力の発揮に応えるのは日常の承認と評価です。その結果としての賃金・賞与・昇格といった金銭的報酬とともに、危機を共に乗り越えるという生涯の経験にもなる非金銭的報酬を与えることができます。そこへ経営のメッセージを込めるわけです。

見えない未来に現場ができることは、理念実現の為にやれることをこつこつとやり抜くことと、現場のイノベーションに挑戦することではないでしょうか。それゆえ理念やビジョン、自分たちの仕事の意義を再度語っていくことが、危機感よりも重要だと考えています。乗りこみたい船となるようなビジョンまでは創れなくとも、この時代を共に生きる高揚感を前向きに伝えていくのはいかがでしょうか。

 


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