尹弁護士が解説!中国法務速報 Vol.20

2020/04/29

賃借物件が譲渡された場合の注意点

賃借物件の譲渡

 借主(賃借人)が賃借している建物(賃借物件)を、貸主(賃貸人)が第三者に譲渡した場合、借主は引き続き賃借物件を使用し続けることができるのでしょうか。

 賃借人は、賃貸借期間内において、賃借物件を購入した第三者に対しても賃貸借契約に基づく賃借権を主張できるのが原則です。つまり、借主は賃貸借契約の期間内は賃借物件を使い続けることができます。

 ただし、以下の場合または当事者間に別途約定がある場合(例えば、賃貸借契約で賃借物件の譲渡により契約が終了すると約定した場合など)、借主は賃借権を主張することはできず、賃借物件を使い続けることができなくなります。

 

・ 賃貸借以前に既に抵当権が設定され、抵当権の行使により建物の所有権が移転した場合
・ 賃貸借以前に既に人民法院により差押えられていた場合

 

 このように、建物を賃借する際には、当該建物に抵当権が設定されていないか、差押えがなされていないか、十分注意する必要があります。

 

賃借人による賃借物件の優先購入権

 中国では、賃借物件が譲渡されることになった場合、賃借人に優先購入権があります。

 具体的には、借主が賃借している建物を貸主が譲渡しようとする場合、貸主は借主に通知しなくてはなりません。そして、通知を受けた借主は、同等の条件でその建物を優先的に購入することができるのです。

 ただし、以下の場合には、賃借人は賃借物件の優先購入権を主張することはできません。

 

① 建物の共有者が優先購入権を行使した場合
② 貸主が建物を近親者(配偶者、父母、子供、兄弟、姉妹、祖父母、外祖父母、孫及び外孫を含む)に売却した場合
③ 貸主が借主への通知義務を履行した後、借主が15日以内に明確な買取の意思表示をしなかった場合
④ 第三者が善意により賃借物件を購入し、かつ既に登記手続きを済ませている場合

 

 上記事由のうち、①は、賃借物件が共有になっているときに、共有者の間で優先購入権の行使により持分が移転する場合を指します。

 ②は、賃借物件を近親者に譲渡する場合です。これらの場合、賃借人は、共有者や近親者に優先して自らが賃借物件を譲り受けることを主張できません。

 ③は、賃借人が賃貸人から賃借物件譲渡の通知を受けたケースです。この場合、賃借人が15日以内に購入権を行使する意思を明確に表示しない限り、優先購入権を主張できなくなります。15日間は、賃借物件を購入するか否か決断するには非常に短い期間といえます。そのため、賃借物件譲渡の通知を受けた場合の対応方法について、予め考えておくと良いでしょう

 


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Profile Photo尹秀鍾 Yin Xiuzhong
慶應義塾大学法学(商法)博士。東京と北京の大手渉外法律事務所での執務経験を経て、2014年に深センで広東深秀律師事務所を開設。2020年春に広東卓建律師事務所深セン本部にパートナーとして加入。華南地域の外国系企業を中心に幅広い法務サービスを提供。主な業務領域は、外商投資、M&A、労働法務、事業再編と撤退、模倣品対策、紛争解決など。

 

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