ビジネスの翼 第3回

2019/11/13

biz wing 3西麻布のイタリアンレストラン「ダルマット」は、メニューはおまかせのみ、ワインは飲み放題という斬新なコンセプトで超繁盛店となり、現在はグループで4店舗を経営する。
「シェフと経営者」の2つの顔を持つ、オーナーシェフの齊藤誠さんにお客様に愛される人気店の
秘密を中国・香港20年ウィングファットインターナショナル中込直樹が伺った。

中込直樹:齊藤さんは2004年西麻布にイタリアンレストラン「ダルマット」を開店。料理はおまかせコースのみというコンセプトで予約困難な人気店に育て上げられました。
齊藤氏:高級店が並ぶ西麻布で野菜、魚、冷製パスタ、メインなど7皿のコースで4000円という価格設定で始めました。またイタリアのレストランでは各テーブルにハウスワインがおいてあり、お客さんは飲んだ分だけ自己申告するシステムなんです。これをヒントにし1500円でワインの飲み放題を取り入れました。西麻布であえて安い値段設定にしてお客様に気軽に足を運んでもらえる“トラットリア”と呼ばれる食堂的な雰囲気のお店にしたかったんです。周囲のレストランからも話題になり、そこのシェフも食べに来てくれ、彼らの口コミで他のお客様にも足を運んでもらったんです。ただ低価格で飲み放題だと安めの居酒屋のようにお店の雰囲気が荒れてしまう可能性があった。そこで駅からも離れていて大人の街である西麻布に出店したんです。

中込直樹:なるほど、ターゲット層となるお客様を考えて西麻布という場所を選んだのですね。
齊藤氏:そうです。ですからハウスワイン以外にも料理に合わせた高級ワインも揃えています。それにメニューを置かずおまかせコースのみにすることで、食材のロスが出ないので、その日仕入れた新鮮で最高の食材を使うことができるんです。西麻布の舌の肥えたお客様にその価値をわかっていただき、値段の安さにも驚いてもらえ、確実にリピーターになってもらえたのですね。料理人もその日最高の食材を使い切ってお客様に提供でき、翌日はまた新たに最高の食材を使えるという楽しみが生まれる。お客様と料理人の両方が満足するという良い循環が生まれてきました。

コメント 2020-01-06 190135中込直樹:なるほど、おまかせというコンセプトがお客様の高い満足とシェフモチベーションを上げるという相乗効果を生んでいるのですね。齊藤さんはオーナーシェフと経営者という二つの視点をどのように使い分けていますか?
齊藤氏:シェフとしては最高の食材を探し、最高の一皿に仕上げてお客様に味わっていただくというシンプルな感動があります。経営者としてはスタッフに対し、常になぜこの仕事を選んだのか、目標は何かを明確にするように、自ら考えて動くように伝えています。私が先頭に立って周りを引っ張っていく部分もありますが、各スタッフにも任せていき成長してもらう。そうやって私たちの次を担う料理長、マネージャーたちに引き継いでいきたいですね。
中込直樹:日本のイタリアンは海外でも非常に高い評価を受けています。香港はじめアジアのお客様も多いと聞きます。
齊藤氏:海外のお客様の増加に合わせて六本木ヒルズの店舗では、英語と中国語のメニューも用意し、外国人スタッフも雇い、海外のお客様への対応をしています。香港始め海外出店の話も多くいただきますね。将来的には現地の飲食店経営者とタイアップし、ダルマットプロデュースという形で協業できればと考えています。私たちの定番料理からメニュー作り、サービスなど、自分たちの強みを生かして勝負ができれば良いですね。すので、変化にどれだけ対応できるかが重要です。頭が良く強い選手でも、変化についていけないと淘汰されてしまいます。

中込直樹:PPWの読者には現地の飲食店で働く日本人も多くいます。齊藤さんからのメッセージをいただけますでしょうか。
齊藤氏:私も1年間イタリアに行って修業した経験があります。現地では日本では簡単にできたことも上手くできない、という挫折感を味わいました。ただ悔しい経験をたくさんする中で相手を思いやる気持ちが育まれ、各国から来た仲間と交流する中でコミュニケーション能力を磨かれました。「ダルマット」というのはイタリア語で熱狂するという意味です。読者の方も海外で働き、自分が熱狂できる仕事を通じて、人生の糧となる経験をたくさんしていただければと思います。


 

コメント 2020-01-06 190040biz


齊藤誠

(「オッジ ダルマット」オーナーシェフ)1973年、埼玉県生まれ。大学在学中にアルバイトとして入ったイタリア料理店「プリマべーラ」で料理の道に目覚める。イタリアで1年間の修業。2004年、西麻布に「ダルマット」を、2008年には「オッジ・ダルマット」をオープン。現在はグループで4店舗を経営する。

nakagomi san

中込 直樹

Wing Fat International Creative Ltd (ウィングファット・インターナショナル) 代表取締役。製造拠点(3ヵ国4工場)を 中心にキャラクターライセンスを使用したマーケティング、企画製造を手掛ける傍ら、プロサッカー選手・本田 圭祐氏とタイアップ事業等、多方面で活躍。山梨県南アルプス市出身。

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