尹弁護士が解説!中国法務速報「広東深秀律師事務所」Vol.8

2019/07/31

職務発明の帰属

中国子会社の従業員が発明をした場合、この発明の特許は会社と従業員どちらのものとなるでしょうか。

従業員が発明をした場合、職務発明であれば特許権は会社に帰属します。一方、職務発明でなければ、特許権は従業員に帰属します。このように、職務発明に該当するかどうかによって、誰が特許権者となるかが変わってきます。

次の(1)、(2)のどちらかに該当すれば職務発明にあたるとされます(特許法第6条第1項)。会社は発明者に「奨励金」を与える必要があり、特許の実施後は合理的な「報酬」を与える必要があります(次回掲載テーマ)。

1)所属する会社の任務遂行として完成された発明(以下の①~③のいずれかに該当するもの)(特許法実施細則第12条第1項)

①本来の職務中に行った発明

②本来の職務以外のものであるが、所属する会社から与えられた任務遂行中に行った発明

③定年退職、旧所属単位からの配置転換後、または労務・人事関係終了後1年以内に行った発明であり、かつ、旧所属単位で担当していた本来の職務、または与えられた任務と関連のある発明

2)主として所属する会社の物質的、技術的条件を利用して完成された発明

「会社の物質的、技術的条件を利用して」とは、会社の資金、設備、部品、原材料または外部に公開していない技術資料などを利用したことをいいます(特許法実施細則第12条第2項)。

このように、中国では職務発明の特許権は会社に帰属し、日本法とは異なります。日本の特許法では、職務発明は従業員に帰属し、会社には従業員の職務発明について通常実施権が発生します。そして、会社と従業員の契約または会社の規則で特許権の承継を定めた場合、会社が特許権を取得します。この場合、会社は職務発明を行った従業員に相当の対価を支払わなくてはなりません。

職務発明の帰属に関する日中の違い

ビジネス1


 

Profile Photo代表弁護士、慶應義塾大学法学(商法)博士。西村あさひ法律事務所(東京本部)、君合律師事務所(北京本部)での執務経験を経て、2014年から深圳で開業、華南地域の外国系企業を中心に法務サービスを提供。主な業務領域は、外国企業の対中国投資、M&A、労働法務、事業の再編と撤退、民・商事訴訟及び仲裁、その他中国企業の対外国投資など。

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