尹弁護士が解説!中国法務速報「広東深秀律師事務所」Vol.4

2019/06/05

 ライセンス契約締結の際の注意点③

中国企業に特許やノウハウをライセンスする場合、ライセンス契約締結の際の幾つかの注意点についてご紹介します。また、個々の事案によって必要な条項は異なりますので、締結の際には法律の専門家にご相談ください。

再ライセンスの禁止

ライセンシー(中国企業)が、対象技術(輸入技術)を勝手に第三者に使用させたり、譲渡、質入れしたりすると、ライセンサー(日本企業)はその技術に対するコントロールを失ってしまいます。そのため、再許諾、実施権の譲渡、質入れについて、これを禁止する条項、またはライセンサーの書面による事前の同意を必要とする条項を入れることが必要です。

技術指導の具体的条件

技術資料を提供しただけでは、ライセンシーは対象技術を使いこなせないことも多いです。そのため、契約にライセンサーによる技術指導について規定を置く場合があります。

この場合、技術者の派遣の時期、期間、人数、指導の対価、費用(住居、交通費、通訳、滞在費等)等の条件について明確にする必要があります。これらは、契約書に定めてもよいですし、分量が多ければ指導条件として付属書類とすることもあります。

技術使用料(ライセンスフィー)の計算のための帳簿等の閲覧

技術指導料をライセンシーの売上を基準に定めることもあります(ランニングロイヤリティ方式)。その場合、受け取る技術使用料はライセンシーの売上額に左右されます。

では、ライセンシーの申告する売上が不正である場合はどうすればよいのでしょうか。また、このような不正申告を防ぐために契約書にどんな条文を設けるべきでしょうか。

対処としては、ライセンサーがライセンシーの売上額の申告に疑問を持った場合、ライセンシーに対して会計帳簿を提出させたり、自ら検査できる権限を規定する方法があります。また、ライセンサーが派遣する会計士等による検査を定めることもあります。

契約の登記義務

対象技術が自由類に属する場合、ロイヤリティの送金で注意を要するのが、契約の登記です。対象技術が制限類に属する場合には、許可が必要です。

中国から海外へロイヤリティを送金する場合、ライセンス契約を登記する必要があります。契約書を登記しなければ、海外へ送金することができないのです。そのため、ライセンシーの責任で契約書を登記するという契約条項が必要です。

また、契約内容が変更された場合も登記をする必要がありますので、この場合もライセンシーの登記義務を規定する必要があります。


Profile Photo代表弁護士、慶應義塾大学法学(商法)博士。西村あさひ法律事務所(東京本部)、君合律師事務所(北京本部)での執務経験を経て、2014年から深圳で開業、華南地域の外国系企業を中心に法務サービスを提供。主な業務領域は、外国企業の対中国投資、M&A、労働法務、事業の再編と撤退、民・商事訴訟及び仲裁、その他中国企業の対外国投資など。

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