目から鱗の中国法律事情 Vol.29「中国・契約法のファイナンス・リース契約」第3回

2019/03/06

今まで2回にわたって中国の合同法(契約法)に規定されているファイナンス・リース契約について見てきました。今回は、ファイ ナンス・リース契約の最終回です。

 

ファイナンス・リース契約の賃料

ファイナンス・リース契約の賃料は、当事者同士で別の約定がある場合を除き、当該リース物件の価格にリース会社の合理的利益を加算した額にしなければなりません(合同法第243条)。また、借手は双方の約束に従い賃料を支払わなければなりませんが、リース会社が催告しても合理的期間内に借手が賃料を支払わない場合、リース会社は全ての賃料の請求をすることができ、契約解除をし、リース物件の回収もすることができます(合同法248条)。また、当事者間でリース契約終了後、リース物件の所有権が借手に移動する(契約終了と同時に、借手の持ち物になる)という契約を結び、賃料の大部分を支払っていたにも関わらず、借手に支払能力がなくなりリース会社が当該リース契約を解除し、リース物件を回収した場合、回収したリース物件の価格が未払いの賃料を上回っていた場合には、借手は賃料の部分的返還を請求することができます(合同法第249条)。

 

 

ファイナンス・リース契約の終了

ファイナンス・リース契約は約束していたリース期間の満了で終了します。しかし、リース期間終了後のリース物件の所有者について何ら規定をしておらず、不明確な場合で、さらに契約の補充などもできない場合には、当該リース物件はリース会社の所有物になります(合同法第250条)。

 

 

ファイナンス・リース契約のまとめ

これまで3回にわたって、中国の合同法の条文からファイナンス・リース契約を見てきました。形式上は賃貸借、実質は購入資金の融資という極めて特殊な契約であることがお分かりいただけたかと思います。中国では、非常に特殊かつ複雑な契約であることから、ファイナンス・リースを行うことができるのは、ファイナンス・リース業を専門に行う企業のみとしています(そのため本シリーズでは「貸手」という表現を使わず、「リース会社」と表現してきました)。ファイナンス・リースで備品を確保しようとする場合にはこの点、つまり、当該リース会社がファイナンス・リース業を行うための許可を得ている企業なのかどうかにも気をつけなければなりません。

 

 


高橋孝治〈高橋孝治(たかはしこうじ)氏プロフィール〉
立教大学 アジア地域研究所 特任研究員
中国法研究を志し、都内社労士事務所を退職し渡中。中国政法大学博士課程修了(法学博士)。中国法の研究をしつつ、執筆や講演も行っている。行政書士有資格者、特定社労士有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』(労働調査会)。詳しくは「高橋孝治 中国」でネットを検索!

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