目から鱗の中国法律事情 Vol.23「中国の手形小切手の概要 その3」

2018/09/12

前回までで、中国の手形小切手の全体の内容と銀行匡票の説明をしました。今回は銀行承兌匡票、商業承兌匡票について説明します。

 

銀行承兌睡票(銀行引受為替手形)の概要

銀行承兌匡票を使う際には、まず①手形の申請人が手形を作成(振出)し、それを申請人の取引銀行に持って行き、「手形の引き受け」を申請します。②銀行が引き受けをした場合、申請人はその手形で現金の代わりに支払いなどを行います。③手形を受け取った人は、手形を裏書譲渡することもできます。④手形所持人のうち、現金にしようと思った人が自身の取引銀行に手形を呈示し、取立依頼をします。⑤手形を呈示された銀行は、手形申請人の取引銀行に代金の取立を行い、これを受けた銀行は申請人に手形の額面の支払いを求めます。⑥手形の申請人が手形の金額を自身の取引銀行に支払い、取引銀行はこれを手形所持人の取引銀行に回収した旨を伝えます(送金します)。⑦これを受け取った手形所持人の取引銀行が手形所持人に対し、支払いを行います。
銀行承兌雁票の特徴は、手形の申請人や手形の所持人がそれぞれの取引銀行を経由して手続を行うので、取引銀行を持っていない個人は利用することができないという点です。また、手形の呈示が行われ、現金回収が終わってから手形の所持人に支払いをするので、手形の呈示から現金取得までに若干のタイムラグが存在することになります。また銀行承兌匡票には「○月○日に支払いをする」旨が記載されており、その日から10日以内が手形の呈示を行うことのできる期間になります。

 

商業承兌匡票(商業引受為替手形)の概要

銀行承兌匡票と基本的に同じですが、銀行以外の機関が引き受けを行うという点が異なります。つまり商業承兌匡票は、中国の手形小切手の中では数少ない引き受け・承認に銀行が関与しない手形小切手になっています。しかし、現実には商業承兌匡票は中国では例外的存在として取り扱われ、流通数は少なく、利用されたとしてもグループ企業内決済に使われる場合がほとんどだと言われています。(続く)

 

 


高橋孝治〈高橋孝治(たかはしこうじ)氏プロフィール〉
中国法研究家、北京和僑会「法律・労務・税務研究会」講師。中国法の研究を志し、都内社労士事務所を退職し渡中。中国政法大学博士課程修了・法学博士。中国法の研究をしつつ、執筆や講演も行っている。行政書士有資格者、特定社労士有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』(労働調査会)。詳しくは「高橋孝治中国」でネットを検索!

 

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