一貫した保冷輸送を開始「香港ヤマト運輸」

2018/08/15

ラストワンマイルデリバリーの宅急便と
ロジスティクスとの一体化で「一貫保冷輸送」が可能に!

R & D Division General Managerの峰氏(サンシャイン カオルーンベイ カーゴセンターにて)

R & D Division General Managerの峰氏(サンシャイン カオルーンベイ カーゴセンターにて)

YAMATO LOGISTICS(HK)LTDは、6月29日、COLD STORE LICENCEを取得し、カオルーンベイ(九龍湾)のSunshine Kowloon Bay Cargo Centreにて、保冷倉庫の運用を開始。従来のフォワーディング(委託貨物の集貨、入出庫、船積、運送、保険、保管、配達など全ての業務)からデリバリー過程での中間業者の介入をなくし、自社による一貫保冷輸送(※図1参照)が可能となった。

 

※図1

図1

 

新たなコールド・チェーンの構築背景と展望を同社R&D Division General Managerの峰健治氏に伺った。

 

Q1:まず、今回取得されたライセンスについて詳しく教えてください。
A:食物環境衛生署(Food and Environmental Hygiene Department)が発行する「COLD STORE LICENCE」というもので、食品全般を倉庫で24時間以上保冷保管する場合に義務づけられているライセンスです。発行元は同衛生署になりますが、認可を得るプロセスで、屋宇署(Buildings Department)、消防處(Hong Kong Fire Service Department)、地政總署(Lands Department)、城市規劃委員會(Town Planning Board)といった政府機関からの審査を受ける必要もあります。

 

Q2:取得の経緯と認可を得るまでのプロセスを教えてください。
A:2011年2月より香港でも宅急便事業が開始となりましたが、通信販売がまだまだ未発達な香港ではBtoCという日本式宅急便の需要は決して大きくありません。そのため日本食材の配送需要が成長し続けるB2B市場へシフトする必要がありました。特に飲食店向け小口保冷配送を強化するという判断の中で競合相手は現地に根付くローカル企業です。彼らとの差別化は配送品質だけではなく、自社保冷倉庫を有した保冷一貫物流で図ると判断しました。具体的には昨年中旬から検討に入り、現在のCargo Centreに事務所を設置したのが同年の10月。そこからライセンス取得の為に規格に沿ったリノベーションを行い、現在に至ります。

 

Q3:保冷倉庫事業の開始による具体的なメリットとは?

図2

図2

A:当社の強みである日本国内の配送網がより生かせると確信しています。例えば、メロン一つの輸出を日本のメロン農家から香港内の飲食店、スーパーマーケット、個人宅に届くまでの全過程を一貫してヤマトグループが担うことが可能になります。当社の徹底した品質管理(※図2参照)の下、日本国内の集荷からフォワーディング、保管、香港デリバリーまでが可能になったことで、中間業者の介入がなくなり、コスト削減によるユーザーへの価格還元も見込めます。我々が掲げる「価値を提供する物流」が体現できるのではと期待を寄せています。また、保冷倉庫は「九龍湾複合型施設」(図3参照)と位置づけ、「宅急便」+「ロジスティクス」+「保冷倉庫」が同居しています。これにより、倉庫間の移動で生じていた時間ロスや労力、荷物へのダメージを大幅に削減できます。

図3

図3

■ 総床面積:47,899sqf (約4,500㎡)
内訳)宅急便:33,399sqf、ロジスティクス:9,500sqf、保冷倉庫:4,000sqf、事務所等:1,000sqf
■ 機能:デリバリー+ロジスティクス複合型施設(宅急便、宅急便ベース、エアコンルーム、冷蔵倉庫、冷凍倉庫)


 

Q4:今回のプロジェクトで大変だったことはどういった点でしょうか?
A:リノベーションに最も時間と労力を費しました。というのも、我々が此処に移ってきた際、当たり前ですが保冷倉庫在りきで物件を探していたので、立地、面積、状態といった主要条件は満たしていたものの、なんと!ライセンスが過去に取得された形跡がなかったのです…。これが全ての始まりでもあるのですが(笑)そこから我々が規格にあったリノベーション(防火機能の設置、非常口の確保、排水溝の新設など)を一から行いました。費用もさることながら、先述したように食物環境衛生署以外にも複数の政府機関からの立ち入り検査が繰り返し行われ、プロジェクト開始から許可が下りるまで6カ月を要してしまいました。

 

Q5:今後の展望と抱負をお願いします。
A:我々が新設した倉庫は通過型と呼ばれるもので、入ってきた荷物を3日~1週間で出荷していくスタイルです。今回の保冷倉庫がパズルでいうと最も大事なラストピースであり、自社による新たなコールド・チェーンが確立できました。これにより、日本の中小の生産者の力にもなれると信じていますし、アジアのハブである香港の地の利を最大限に生かし、色々なものを香港の皆様にお届けしたいと思います。

 

 


Capture_YAMATO_LOGISTICS

2016年6月にYAMATO INTERNATIONAL LOGISTICS(HK)LTD、ヤマト運輸(香港)株式会社、ヤマトペイメント サービス(香港)株式会社の3社が統合されてYAMATO LOGISTICS(HK)LTDが誕生した。

 

 

 

YAMATO LOGISTICS (HK) LTD.
住所:23/F., AIA Financial Ctr., 712 Prince Edward Rd. East, Kowloon
電話:(852)2262-0666

TA-Q-BIN Office
住所:Unit C, 3/F., First Group Ctr., 14 Wang Tai Rd., Kowloon Bay
電話(ホットライン):(852)2829-2222

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