中国法律コラム29「初回の労働契約終了時の雇い止めについて」広東盛唐法律事務所

2018/06/22

第29回「初回の労働契約終了時の雇い止めについて」

 

採用した従業員のパフォーマンス・勤務態度がよくない、協調性に欠けるなどの理由により、初回の労働契約満了時に労働契約を更新しない(以下「雇い止め」といいます)ことは良くあるケースです。法律上、労働契約を2回連続して締結した場合に従業員が労働契約の更新を提起したとき、会社は原則として労働契約の更新を拒むことはできません。したがいまして、初回の労働契約満了時が、雇い止めの最初で最後のチャンスとも言えます。今回のニュースレターでは、雇い止めの際の注意点について解説させていただきます。

 

(一)従業員に雇い止めを通知するタイミング
1.法律規定
《労働契約法》
第44条(労働契約の終了)
次の各号に掲げる事由のいずれか一に該当する場合、労働契約は終了する。
(1)労働契約期間が満了した場合
…略…
《深セン経済特区調和のとれた労働関係促進条例》
第18条
固定期間労働契約の更新にあたり、使用者及び労働者は労働契約終了の一ヶ月前までに労働契約の更新について協議しなければならない。労働契約の更新について合意できない場合、使用者又は労働者は、労働関係を終了することができる。ただし、無固定期間労働契約を締結すべき場合はこの限りではない。

2.分析意見
(1)全国的に適用される《労働契約法》では、労働契約が期間満了となったとき、労働契約は終了となるとされており、事前に従業員に通知をすることは要求されていません。但し、《深セン経済特区調和のとれた労働関係促進条例》の定め及び昨今の一部の事例によりますと、深セン市の企業の場合、一ヶ月前もって従業員に雇い止めを通知しなければ、労働契約の違法終了と認定されるおそれがあります。
(2)従業員と争いが生じることを避けるために、労働契約が期間終了となる一ヶ月前までに、書面で労働契約を更新しないことを通知するようにすべきです。

 

(二)雇い止め通知時の注意点
1.従業員は、雇い止めされることを知った後、会社にとって不利な行動をとることがありえます。したがいまして、雇い止めを正式に通知した後、従業員が会社の重要な資産、情報、資料などに接触できないようにすべきです。また、従業員が掌握している重要資料、会社の財産、ネットワークの管理権限などを、従業員が引き継ぎを拒んだ場合であっても、スムーズに新しい担当者に移管できるように事前に手配をする必要があります。従業員が引継ぎ業務を拒否する場合、経済補償金を暫時支払わないことができます。なお、従業員が会社の財産又は利益を故意に損害した場合、不法行為に基づく損害賠償請求をすることができます。
2.従業員に雇い止めを通知するとき、まずは面談をすることになります(工会の責任者を同席させることが望ましい)。雇い止めの理由は、能力不足などネガティブな内容を強調せず、従業員のプライドを傷つけないその他の理由で説明することがよいでしょう。また、経済補償金を支払うことも説明します(いわゆる1N基準)。
3.面談時に、従業員に《労働契約終了通知書》に署名をしてもらう必要があります(事前に2通作成し、1通は従業員が、1通は会社が保有する)。従業員が署名を拒否する場合、EMSなどの方法により当該従業員に郵送し、送達の記録を保存するようにします。

 

(三)雇い止めが禁止されているケース
労働契約期間満了時、従業員《労働契約法》が第42条に定める事由の一に該当する場合(労災認定された場合、罹患又は業務外の負傷により医療機関にある場合、いわゆる“三期(”妊娠・出産・授乳)にある女子従業員の場合)、又は工会委員の任期にある場合は、労働契約期間満了時には労働契約を終了することができず、これらの事由が消滅するとき又は任期満了時まで労働契約を延長しなければなりません。
したがいまして、これらの事由に該当する従業員については、これらの事由が消滅したときに雇い止めができるように準備をする必要があります。

今回のコラムの内容、いかがだったでしょうか? コラムに取り上げてほしい内容などございましたら、お気軽にご連絡ください。

 


盛唐法律事務所

広東盛唐法律事務所
SHENG TANG LAW FIRM
法律顧問
大嶽 徳洋 Roy Odake
行政書士試験合格
東京商工会議所認定
ビジネス法務エキスパート
Tel: (86)755-8328-3652
E-mail: odake@yamatolaw.com

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