「デザインとマーケティングと香港の話をします」第二回:デジタル時代の外さないクリエイティブ戦略とは

2018/01/29

香港でもこれからのマーケティング戦略の主流はデジタルだ、と言われて久しくなります。顧客とのタッチポイントが変わっているので、誰もが重要性は感じています。連載第一回で書いたように、今日のコミュニケーションはより戦略的にデザインされるべきものです。ところがデジタルマーケティングはなかなか本格化してきませんでした。

その理由をいくつか挙げてみます

 複雑で面倒くさそう。よくわからないので失敗が怖い。
 なんでも早く終わらせたいので、時間がかかる仕事は避けたい。
 マネジメントの理解がない、あるいは成果への期待が大きすぎる。
 香港は狭いし、デジタルでなくてもこのままでなんとかなる。
 Eコマースがなかなか根付かなかったので、理論と実践のけん引役がいない。

というような背景が本格化の邪魔をしていると僕は見ています。デジタルマーケティングには成功への近道はなく、仮説、失敗と成功、修正、行動を繰り返していくことが求められる為、労力も時間もかかります。そのためになかなか着手することができず、なんとなくこんな感じかなという施策を繰り返す、そんなマーケティング戦略をとっている企業が多いと思います。

三つの典型的な「取りあえず」デジタル施策は、

1. グーグルで取りあえず検索キーワード広告を出す。
2. フェイスブックで取りあえず「いいね!」を増やすための広告を出す。
3. インフルエンサーに取りあえず商品の宣伝ムービーを作ってもらう。

と言ったところでしょう。もちろんどれも間違いではありません。うまくやれば良い効果につながります。問題は「とりあえず」やった為に、ブランディングやマーケティング戦略との整合性が無いことにあります。そして、デジタルに対する次のような誤解も「とりあえず」施策を取ることに影響を与えています。

■デジタルならバズる▶狙ってバズることは無く、バズったとしても効果は?
■デジタルならお金がかからない▶手間ヒマが必要。お金はかかります。
■デジタルなら数字がわかる▶いいね!の数だけでは効果はなく、評価の基準や指標を定める事が大事です。
■デジタルなら広告を出すのが簡単▶広告を出してからが勝負です。出稿ではなく運用します。

それでは、どうやってビジネスの目的に照らし、適切で価値のある戦略を作ればいいのでしょうか?4つの要素が互いにシナジーを呼ぶようなプランを立てるということを提案します。

クリエイティブxターゲットxユーザーの態度変容xプラットフォーム

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先ず、ターゲット(年齢や属性)を設定する。次に対象のユーザーは商品に対してどんな態度や状態にあるのか(認知、理解、関心、行動)。そのユーザーはどのプラットフォームで広告に接するのか。これだけでいくつものパターンができてくるはずです。そしてクリエイティブはそれぞれのパターンに適応する形でプランされるべきなのです。包括的で、持続可能なものであるべきです。

十分に練られたプランを導き出すためには、時間をかけていくつものステップを踏んでいくことになります。僕たちのチームが行っている6つのステップを紹介します。ご参考になれば幸いです。

1. 課題を理解し、共有する。
2. 商品、市場の調査やベンチマークを行う。
3. 全体をフレームワークで捉える。
4. マーケティング戦略を設定する。
5. クリエイティブやコミュニケーションをデザインする。
6. 施策を実行し、評価を行う。PDCAを回す。

というものです。

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とりあえず何かを始めてみるということは、今の時代には、大切な姿勢でもあります。一方で、仮説は検証した上で修正していかないと意味がありません。早くテストを行い、早く失敗することをお勧めします。その中で、より良いプラクティスを作っていく事が、勝ちにつながっていく事になるはずです。(続く)

 

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植木 伸彦氏

植木 伸彦氏
1995年、黎明期の上海で日系企業のマーケティング立ち上げを手伝う。1998年にTYA(HK)LTD設立。戦略クリエイティブを核に大手家電、化粧品、食品会社などのブランディング、プロモーション、コミュニケーションプランに携わる。

TYA

 

 

 

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