中国法律事情「中国の学生アルバイトと定年その1」高橋孝治

2018/02/06

中国の労働法は現在もまだ日本と大きく異なるものとなっています。今回からしばらく中国の労働法のアルバイトと定年について見ていきましょう。中国の労働法がなぜ日本と大きく異なるのかというと、中国型社会主義の労働システム「単位」制度の流れを汲んでいると思われる条文がいまだに存在するからです。単位制度については本連載第4回(503号2015年9月第1号)でも説明しましたが、かなり前のことになってしまいました。もう一度説明しましょう。

・かつての中国の労働システム「単位」制度
単位制度とは、1950年代から中国で始まった制度で、新規労働者について政府が統一的に就職や配属先を決め、一度就職すれば定年まで解雇などもないという制度です。つまり国が誰がどのように働くかを決め、その通りに働き、それに対し拒否する自由がないという制度です。雇用関係が「契約」ではなく「配給」によって成立していたとも表現できます。

しかし、労働者の向き不向きを考慮していない、解雇などの処分がなく給料も不変なので勤労意欲が湧かないなどの理由で、やがて単位制度の非効率性が指摘されるようになりました。改革開放以降、市場経済制度の導入も手伝って1986年10月から雇用契約による労働制度が始まり、単位制度は終わりを告げました。しかし、雇用関係が契約制度となった現在でも単位制度の名残りがいくつか残存しており、中国独自の制度となっています。

・学生バイトは禁止?
現在の中国では学生のアルバイトが多くいます。しかし実は学生バイトは中国では禁止されているのです。「労働部関于貫徹執行《中華人民共和国労働法》若干問題的意見」第12条という条文に次のように規定されています。「在学生が余暇を利用して、勤務することは就労とはみなさず、労働関係は成立せず、労働契約を締結することもできない。」

つまり、学生と雇用契約(労働契約)を結ぶことができないので、学生を雇用する法的手段はないということになります。なお、この「学生」は昼間学生の人をいい、夜学に通っている人、通信制大学の学生は除くとされています。(続く)

高橋孝治

〈高橋孝治(たかはしこうじ)氏プロフィール〉
中国法研究家、北京和僑会「法律・労務・税務研究会」講師。中国法の研究を志し、都内社労士事務所を退職し渡中。中国政法大学博士課程修了・法学博士。中国法の研究をしつつ、執筆や講演も行っている。行政書士有資格者、特定社労士有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』(労働調査会)。詳しくは「高橋孝治中国」でネットを検索!

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