中国法律コラム25「従業員が重病を患った場合の対応について」広東盛唐法律事務所

2018/01/22

今回のニュースレターでは、従業員が重度の傷病を患った場合の対応方法についてご紹介します。今回ご紹介するのは、職業病などの業務に起因する病気ではなく、業務に起因しない傷病のケースです。また、深セン市のケースを例に挙げておりますが、その他の地域でも大差ないとお考え下さい

一、治療費の負担について
従業員が業務外の傷病に罹患した場合、原則として労災と認定されることはありません。つまり、社会保険制度に基づき、一部の治療費は社会保険から補助が受けられますが、社会保険で賄えない部分は、個人の負担となります。会社は、すでに社会保険料を納付するという義務を負っていますので、治療費を負担する必要はなく、従業員の自己負担となります。

二、医療期間について
従業員は、業務外の傷病に罹患し、会社を休んで療養しなければならない場合、本人の勤続年数の長短に基づき3~24ヶ月の医療期間休暇を取得することができます。この医療期間において、会社は従業員を解雇することができなくなります。また、医療期間において、従業員は労働を提供することができませんが、会社は医療期間の賃金を支給しなければなりません。

深圳市におきましては、この医療期間の賃金は本人賃金の60%以上、かつ、最低賃金(2,130元)の80%以上とされています。

三、労働契約を解除する場合の要件
従業員が重病に罹患し、労働を提供することができなくなり、会社が本人を解雇したいと考える場合、1.協議合意により労働契約を解除する、若しくは②医療期間満了後に経済補償金を支払って解雇する方法を検討することができます。

1.協議合意により労働契約を解除する
まず、従業員と協議により合意をすることができれば、労働契約は随時解除することができます。この際、一定の金員を支給しなければ、従業員側が同意をしないものと考えられますが、その金額は後述の経済補償金や医療補助費、並びに医療期間に受けることがきるはずであった医療期間賃金の総額などを参考に交渉できると考えます。

2.医療期間満了後に経済補償金を支払って労働契約を解除する
労働契約法44条1項によりますと、病気に罹患した従業員が医療期間満了後も元の職務に復帰できず、会社が手配するその他の職務にも従事できない場合、会社は経済補償金を支払って、労働契約を解除することができます。その場合の経済補償金の基準はN+1となります(勤続年数1ヶ月につき1ヶ月分の平均月給+1か月前通知)。なお、労働契約違反及び解除における経済補償弁法などの関連規定によりますと、会社が前述の規定により、医療期間満了後に労働契約を解除する場合に、従業員が重度の傷病により労働能力を喪失したと認定されたときは、6~12ヶ月分の賃金相当額の医療補助費を支払わなければならないことがあります。

四、従業員が死亡した場合の補償について
深圳市の社会保険局の政策によりますと、基本養老保険の納付期間が累計で6ヶ月を超えている従業員が業務外の傷病により死亡した場合、その遺族は葬儀補助金及び弔慰金を受給することができます。

葬儀補助金は、深圳市の前年度従業員平均月給の3倍です。

弔慰金は、死亡した従業員の扶養家族が1人の場合は深セン市の前年度従業員平均月給の6倍、2人の場合は9倍、3人以上の場合は12倍となります。

従業員が業務外の傷病により死亡した場合においては、会社は遺族に対して何らかの補償をする必要はありません。しかし、実務におきましては、従業員の遺族が会社に押しかけて、様々な補償を要求することが多くあります。そのような場合は、遺族が過激な行動を起こすことを予防するために、弁護士を立てて交渉する、社内で募金活動を行い遺族に寄付する、労働組合経費から一定金額の寄付をする、会社も道義的見地から一定金額の金員を何らかの名義で支給する、政府部門に協力を依頼するなどの対策を講じることが賢明と考えます。

今回のコラムは以上です。なにかご質問などございましたら、小生のメールにご連絡いただければ幸甚です。どうぞよろしくお願いします。

 

盛唐法律事務所

広東盛唐法律事務所
SHENG TANG LAW FIRM
法律顧問
大嶽 徳洋 Roy Odake
行政書士試験合格
東京商工会議所認定
ビジネス法務エキスパート
Tel: (86)755-8328-3652
E-mail: odake@yamatolaw.com

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