中国法律事情「中国会社法の外資企業設立規制その1」高橋孝治

2017/12/05

中国で仕事をしている日本人は三資企業という言葉をよく聞くと思います。三資企業とは中外合弁企業、中外合作企業、外資独資企業の三つをいいます。日本企業が中国に会社を立ち上げるときはこの三資企業のいずれかの形態にすることがほとんどです。これらの企業はどのような違いがあるのでしょうか。今回からそれを見ていきましょう。

・中国の会社の基礎知識
日本では会社といえば、株式会社、合名会社、合資会社など会社の責任形態によって区分しています。しかし中国ではこのような区分を行わず、会社の所有形態によって区分を行っています。これは旧来の社会主義型の分類によるものです。すなわち国家が全ての経済活動を掌握するという社会主義的目的の下、私人が運営する会社の規制は厳しく、国家の経営する会社の規制は緩くするという目的があるのです。以下、三資企業を中心にその規制内容を大まかに紹介しましょう。

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・中外合弁企業(「合資経営企業」ともいう)
中外合弁企業とは、外国企業と中国企業が中国の法律に基づいて共同出資により中国国内に会社を設立し共同経営を行い、出資率により利益を配分、経営リスクおよび損失を負担する形態の有限会社をいいます。なお外国企業の出資比率は25%以上でなければなりません(中外合資経営企業法第4条)。

この中外合弁企業を設立する際に許可されない場合があり、5つの場合が列挙されています。①中国の主権を損なう場合、②中国の法律に違反する場合、③中国の国民経済発展の要求に符合しない場合、④環境汚染をもたらす場合、⑤締結された協議、契約、定款が不公平で合弁当事者一方の権益を損なう場合の5つです。

また中外合弁企業の設立は、中国経済の発展および科学技術水準の向上を促進することができ、社会主義現代化建設に有利でなければならない、とも規定されています(中外合資経営企業法実施条例第3条第1項)。また国家外商投資指導方向の規定および外相投資産業指導目録に従い、国家は中外合弁企業の業務の奨励、許可、制限あるいは禁止を行うこともあります。(中外合資経営企業法実施条例第3条第2項)。(続く)

高橋孝治
〈高橋孝治(たかはしこうじ)氏プロフィール〉
中国法研究家、北京和僑会「法律・労務・税務研究会」講師。中国法の研究を志し、都内社労士事務所を退職し渡中。中国政法大学博士課程修了・法学博士。中国法の研究をしつつ、執筆や講演も行っている。行政書士有資格者、特定社労士有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』(労働調査会)。詳しくは「高橋孝治中国」でネットを検索!

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