ビザのプロ「T&Morris」服部氏（前編）

2017/11/13

私たち日本人が外国で働く上で必要不可欠なものは何だろうか。住居、お金、保険など、人によってさまざまな意見があるだろうが、万人に共通するものは「ビザ」である。昨今、香港の市場変化や多様化する日本人の働き方の中で、ビザを取り巻く環境もまた変化している。一部では、ビザ申請時の申請者のキャリア基準や中国内で始まった在留外国人のランク分け制度による影響なども懸念されており、情報も錯綜している。今回は日を追うごとにニーズが高まるビザ事情を、1992年の創業以降、香港で累計5,000社を超える取引実績を持つビザのプロフェッショナル「T&Morris VISA＋CONSULTINGLTD.」の服部孝吉（こうきち）理事総経理に伺った。

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服部氏いわく「就業ビザ（Working Visa）」の取得には多面的な要因が関係しているそうで、無論、申請者の最低限のキャリア（学歴や職歴）は必要となってくるが、それ以外に香港の就業先での役職および担当業務と申請書に記入する内容との相違、ビザを審査する担当官、雇用主側のオフィス登記ライセンス、現地（香港人）スタッフの雇用人数などが挙げられる。例えば、会社内で同じポジションの日本人を複数名申請する際、一人がスムーズに認可されても、もう一方の認可がなかなか下りない。といったケースもあるようで、「T&Morris」では、長年の経験を生かし、そういった兆候を察知しながらスムーズに取得まで漕ぎ着けられるようサポートしている。

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「ビザエージェントの役割は申請者が審査に通るように100％に近い材料を集め、審査官にアピールする」と話す服部氏。これは、黒を白にするような事ではなく申請者の理解不足や準備不足など、足りない部分を明確にして審査に必要な材料を集め、それを最大限に生かす戦略を練ることに尽きると同氏は考える。万が一、審査が却下された場合２度目からのビザ取得が更に難しくなることが背景にある為、そのリスクを考えると一度目の審査に最大限の注力が重要だ。また、ビザ代理店のミスマッチは避けるべきである。

その点、同社は、長年のノウハウが凝縮されているので申請者側からしてみれば心強い。

昨今、起業を後押しする背景や地域性もあってか、事業主や雇用主として会社経営を行う際に必要な「投資ビザ（Investment Visa）」の代理申請案件も増えているそうで、その際に重要となってくるポイントとして、「ただ、取得を成功させる」といった一過性のものではなく、申請者の将来像や会社の事業展望を取り込んだ対応が必要になってくるという。「就労ビザ」、「投資ビザ」いずれの場合も、「今後どのように事業に携わっていくのか。また、拡大していくのか。といった“ストーリー性”を加えることが肝心。例えば、新規で美容院を立ち上げる際、どうしても美容師としてのキャリアを強調しがちだけれど、それだとなぜ日本人スタリストを採用しなくてはいけないのか？腕の良い香港人スタイリストでもいいのでは？と突っ込まれてしまう。日本人雇用が必要な理由を訴求するには、むしろ店舗運営に携わる上でのマネージメントスキルを優先させ、ゆくゆくは店舗拡大といったビジョンと絡めることが必須」。（服部氏）

また、10月に香港政府より発表された「2017年施政報告」では、法人税率が従来の16.5%から8.25%に引き下げられることもあり（利益200万香港ドル＝約2,800万円まで適用）、進出企業の増加も予想され、「投資ビザ」の申請案件についても連動するのではないか。と服部氏は見込んでいる。　　

（つづく）
※後編は11月24日発行号にて掲載します

［理事総経理服部孝吉］
1995年、立ち上げ間もないT&Morrisに入社。創成期メンバーとして、メーカー、商社、銀行、電子部品関連企業、県人会など幅広い企業・団体をまわり、取引先の獲得およびノウハウを築き、2014年に現役職。長崎県出身、49歳。好奇心旺盛な性格から人との会話が趣味。

T&Morris VISA＋CONSULTING LTD.
1992年創業、累計取引実績5,000社以上。蓄積された豊富な経験をもとに日本人スタッフがさまざまなケースに対応。会社設立や口座開設、税務に関するコンサルティングなど、香港でビジネスをする上で必要不可欠な各種サービスを提供している。