中国法律コラム 21「新法令の紹介」広東盛唐法律事務所

2017/09/25

今回は、製造業に関係が深いと思われる新法令を紹介させていただきます。

一、「中華人民共和国中小企業促進法」
2017年9月1日、全国人民代表大会常務委員会は「中小企業促進法」を改正・公布しました。今回の改正の主な内容は次のとおりです。
1.財政の優遇政策が強化されました。「中央財政は予算において中小企業科目を設け、中小企業発展専門資金を準備する。当該基金は、中小企業の公共サービス及び融資サービスの確立に重点的に使用される。」と規定されました。
2.融資に関する政策が完備され、金融機関が十分に機能し、高効率かつ公平に中小企業にサービスを提供できるよう規定がなされました。
3.国家機関、事業単位及び大企業は、中小企業に対する代金の支払を遅滞してはならないことなど権利・利益の保護に関する章が追加されました。
4.法律の有効な執行を保障するために、管理・監督・検査に関する章が追加されました。
前述の内容から、中国政府が中小企業の発展のために、中小企業によりよい経営環境を与えることに注力しはじめたことがわかります。

二、「建設プロジェクト環境保護管理条例」
国務院は「建設プロジェクト環境保護管理条例」を改正・公布しました。今回の改正の内容は主に次のとおりです。
1.環境評価の手続きが簡素化され、途中及び事後の監督管理が強化されました。建設プロジェクトの操業開始前の試生産などの規定が削除され、新たに建設プロジェクト竣工後の環境保護検収の手続き及び要求などの内容が追加されました。
2.罰金の金額が引き上げられるなど、処罰が厳格化されました。
3.情報公開及び公衆の参加に関する内容が強化されました。環境保護部門が環境影響評価文書のウェブ上での審査認可、届出、情報公開をすることが規定され、環境保護部門は適時に一般公衆に対して違法者のリストなどを公表することなどが規定されました。
中国政府は環境保護に関する問題を重視しており、環境保護に関する法令を多く制定し、環境保護に関する法律の執行を強化しています。今後は、生産経営にかかる環境保護問題をより重視しなければならなくなると考えます。

三、《労働紛争事件審理の難解問題に関する広東省高級人民法院の回答》
2017年8月1日、労働紛争事件における審理の統一的な審理基準を設けるため、広東省高級法院はこの法解釈を公布しました。主な内容は次のとおりです。

Q1:労働者が過失により使用者に損害を与えた場合に、使用者は労働契約を解除し、労働者に損害賠償を請求することができるか?
A1:労働者が労働関係の存続期間において故意又は重過失により使用者に経済損害を与えた場合、使用者は労働契約を解除のうえ、労働者に損害賠償を請求することができる。

Q2:労務派遣において、労働者は派遣元と派遣先に対して残業代の支払いにつき連帯責任を負うよう要求することができるか?
A2:残業代、歩合給などは派遣元がこれの支払に責任を負うものであるが、基本給と残業代の区別が明確にできない場合に、労働者が派遣先と派遣元が連帯して労働報酬を支払うよう求めた場合は、これを認容する。

Q3:企業移転時の労働契約の履行はどのようになるか?
A3:企業が自身の発展のために移転を計画する場合、「労働契約の締結時に根拠となった客観的状況に重大な変化があった」場合に該当し、使用者は労働者と労働契約の内容変更について協議しなければならない。労働契約の内容変更について合意できない場合に、労働者が労働契約の解除及び経済補償金の支払を求めたときは、これを認容する。但し、企業の移転が労働者に明確な影響を与えず、かつ、使用者が合理的な措置(通勤バス、交通手当の支給など)を講じた場合は、労働者が労働契約の解除を求める理由が十分ではないため、使用者は労働契約解除の経済補償金を支払う義務を有さない。

Q4:従業員が病気又は業務外の事故により死亡した場合、遺族は救済一時金(又は直系親族扶養生活補助費)を主張しうるか?
A4:従業員が病気又は業務外の事故により死亡した場合、その遺族が「広東省企業従業員休暇待遇死亡弔慰待遇暫定規定」に基づき葬儀補助費、直系親族扶養救済一時金(又は直系親族扶養生活補助費)を主張した場合は、これを認容する。

盛唐法律事務所
広東盛唐法律事務所
SHENG TANG LAW FIRM
法律顧問
大嶽 徳洋 Roy Odake
行政書士試験合格
東京商工会議所認定
ビジネス法務エキスパート
Tel: (86)755-8328-3652
E-mail: odake@yamatolaw.com

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