サウジアラビア国王と企業経営者のサバイバル

2017/04/11

香港の独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)がご案内するオフショア・海外投資Borderless Management & Investment Ltd.

Borderless

先月46年ぶりにサウジアラビア国王が日本を訪問した。訪問団は王族、閣僚、企業間関係者など総勢約1,000人、40機の飛行機に分乗してやってきた。国王が移動に使う車として1億5,000万円のメルセデス防弾車両や専用のエスカレーター式の搭乗タラップを持ち込んだ他、都内の高級ホテル1,200室、ハイヤー500台を利用しているという。サウジアラビアといえば世界一の原油の埋蔵量を誇る王国。1993年までは憲法も議会もなく、今でも多くの要職はおびただしい人数を誇る王族によって占められている。
自動車をはじめとして世界のあらゆる機械の燃料・エネルギー源となっている石油をもっともたくさん産出する国であるうえに絶対君主制の国なので国王に随行できる人は国の特権階級。一人ひとりが「超」がつく富裕層である。白い民族衣装に身を包んでフェラーリを運転し、ペットは猛獣、自家用機でカジノに繰り出して豪遊というアラブの大富豪はだいたいサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)、クウェート辺りの人である。
投資家集団としても有名で世界中のあらゆる投資案件にオイルマネーを背景としたアラブ人のカネが入っている。ソフトバンクの孫正義氏が創設中の10兆円の資金を擁する「ソフトバンクビジョンファンド」にもサウジアラビアの富裕層が多額の資金を出資している。体制的に支配層階級と庶民の格差は大きいがそれでもガソリンがタダ同然で使え、税金もほとんどないなど一般人もその富の一部を享受している。
だがそんな彼らの国も時計の針を100年戻すと砂漠に部族が点在して暮らす貧しい地域だった。第一次世界大戦前、中東地域のほとんどは弱体化したオスマン帝国の版図の中にあったが、敗色濃厚だったオスマン帝国解体後の中東地域の処遇はイギリスが主導したフサイン=マクマホン協定、サイクス・ピコ協定、バルフォア宣言によって大戦終結後おおいに混乱した。英国はフサイン=マクマホン協定ではこの地域にアラブ人の独立国家を作る、サイクス・ピコ協定ではこの地域を英仏露で分割統治する、バルフォア宣言ではパレスチナ地区にユダヤ人国家を建設するという矛盾した約束をしていたためである。いわゆるイギリスの三枚舌外交と呼ばれるものだ。
オスマン帝国は解体したがすべて参加者を満足させられるアレンジができるわけもなく、大戦後ほとんどの地域は英仏の委任統治領となりアラブ人の独立が達成されたのは紅海に面したアラビア半島の一部の地域であるヒジャーズ王国だけだった。ヒジャーズ王国は英国に乗せられる形でオスマン帝国に対してアラブの反乱を主導したハーシム家(イスラム教創始者ムハンマドの子孫)が王となっていたが、1925年にリヤド(サウジアラビアの首都)の太守イブン・サウードに攻撃されて支配権を奪われる。
この地域の新たな王となったイブン・サウードがアラビア半島の統一とイギリスからの独立を達成し、1932年に成立した国がサウジアラビアである。国土のほとんどが砂漠に覆われ、遊牧とメッカ巡礼などの観光ぐらいしか産業のなかったサウジアラビアは1938年に油田が発見され、第二次世界大戦後の1946年から油田開発が本格化してモータリゼーション普及とともに急速に世界の富を吸い寄せていったのである。

 

逆を言えば厳しい自然環境下で有史以来ずっと貧困地区だった場所に今もっとも必要とされている資源が見つかったという幸運によって70年程度続く長期のバブルの最中にある国だと言っても過言ではない。
バブルはいずれ弾けるのが世の常。原油は埋蔵量に限りがある有限資源。採り続ければいつかは枯渇する。もちろんサウジアラビアをはじめとする主要産油国は早くからそれをわかっていて、「石油輸出国機構(OPEC)」という世界最大のカルテルを作りお互いに生産調整をしながらできるだけ高く原油が売れるように努めてきた。だが昨今、北海油田やメキシコなど非加盟国からの生産増や科学技術の発展によりシェールガスやオイルサンドからのエネルギー採取が可能になったことによりOPECの原油価格の制御も利きにくくなっている。
原油価格は1バレル百数十ドル台から20ドル台まで乱高下するようになった。この価格変動は国の歳入の8割を石油産業に頼っているサウジアラビアには特に深刻な問題であるのは想像に難くない。サウジ国王は日本のあと中国にも訪問した。自国に石油以外の産業を新興するために日本にも中国にも様々な技術協力を求めたはずだ。今手元にある資金を用いて自国の長期バブルの収束の前に新たな稼ぎの柱を立ち上げようと奔走する国王の姿は今調子の良いのビジネスが衰退する前に別の事業を育てようとする奮闘する会社経営者に重なって見えた。

玉利将彦 (タマリ マサヒコ)
上海と香港を拠点に活動し、中国在住歴は20年に渡る。香港の証券取扱免許(SFC)と保険取扱免許(PIBA)を保有する資産運用アドバイザーとして、顧客のライフプランに即した投資計画の立案及び積立ファンド・保険の仲介、HSBC香港BOOM証券・中国銀行など海外の有名金融機関の口座開設・運営サポートをおこなっている。

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