中環の「PILLARIWINE」利き酒師・小川真理子さんインタビュー

2015/10/27

香港で利き酒師として日本酒の魅力を発信
小川真理子さん
中環(セントラル)にお酒好きの間で名が知られた店がある。
その名は「PILLARIWINE」。
ワインは300種類、日本酒は80種類以上、手造りの本物だけを扱う専門店だ。
小川真理子さんは、この店で利き酒師として日々お客さんに日本酒の奥深さを伝えている。
彼女はなぜ香港で利き酒師として働くことになったのか。お話を伺った。
日本酒の利き師として香港で活躍する小川さん
「これからは陶器なども積極的に扱っていきたい」と語る小川さん

PILLARIWINE勤務・利き酒師
小川真理子さん
インタビュー

 

「これからは陶器なども積極的に扱っていきたい」と語る小川さん

いつ頃、どういうきっかけで香港にいらしたのですか。
7年前に、主人が香港の日本料理店で働くことになり移住してきました。そのきっかけとなったのは1人の方との出会いでした。
私は大学院を卒業後すぐに、日本料亭「京都吉兆」で働く機会を得ました。主人も同じ職場で料理人として働いていました。後に主人が転職した先のレストランに五月女さんという方がお客様としていらっしゃいました。その方は香港・上環にあるレストラン「WAGYU KAISEKI DEN」の料理長で、主人は五月女さんのお話を聞いているうちに香港の日本料理店で働きたくなったようです。主人が渡港を決め、私もついていくことにしました。

ご両親などの反対はありませんでしたか。
両親からは特に何も言われませんでした。もともと転勤族でいろいろな場所を転々としていたので、私達の香港移住にも抵抗はなかったようです。小さい頃から私の好きなことは何でもでもやらせてくれる両親でした。大学を卒業後、もっと勉強したくて修士課程に進学したときも応援してくれたんですよ。
今両親は実家で無農薬野菜を栽培しています。私達夫婦がいつか独立して日本料理店を立ち上げたときに、そこへ野菜を届けたいという思いで始めたそうです。

小川さんの日本酒好きもご両親の影響だそうですね。
はい、両親が日本酒好きで、日本各地からいいものを集めて楽しんでいました。小さいころから日本酒に囲まれた生活でしたので、若い頃から日本酒に対する知識は人一倍あったと思います。料亭での仕事でも、その知識を深めることができました。

香港にいらしてからの生活について教えてください。
香港にきた当初、主人に同伴してきた専業主婦の私は、働いてはいけないのでは、と考えていました。そんなある日、DENのサプライヤーさんから、新しくオープンする日本料理店で働かないかと声をかけていただいたのです。しゃぶしゃぶやすき焼きを扱うお店で、着物で接客をする仕事でした。香港での就労条件を調べてもらったところ私のような立場の女性も働くことができ、働いている方もたくさんいるとのこと。ちょうど香港での暮らしに慣れてきて手持ち無沙汰になっていた頃だったので、仕事をスタート。吉兆の経験もあったので、すぐに新しい仕事になじむことができました。

その後、現在の会社「PILLARIWINE」へ。
そんな折、友人に連れられて行ってみたのが「PILLARIWINE」。香港をはじめ中国、台湾、日本の愛好家の間ではけっこう有名なワイン専門店なのですが、そこの社長が実は日本酒も大好きで、世界中の人が集まる香港を起点に日本酒の生産者と世界の愛好家の方々を繋げられる仕事ができたらいいね、という話になり、じゃあ日本酒の輸入販売事業をはじめようということになったのです。

その会社に入社し利き酒師に。どのような仕事なのですか。
まずは日本酒の商品選定。慎重にテイスティングを行って何を仕入れるか決めます。コンテナ到着後、販売開始前にも試飲を行ってコンディションチェックを行います。ここがもっとも気を遣うところですね。そしてご来店いただいたお客様に日本酒の説明や管理の仕方などをお伝えするのが仕事です。科学では完全に解明されていないのですが、日本酒は、温める方法やお猪口の形によって味が変わったりするんですよ。
例えば、飲食店でラーメンがガラスの透明な容器に入って出てきたら、どう思いますか。それと一緒で日本酒も器や温め方、周りの雰囲気で飲む人が感じる味は変わってくるのです。そういったところから日本酒に対する理解を深めていって欲しいと考えています。
日本酒の利き師として香港で活躍する小川さん日本料理店では、料理に力を入れ、お酒はその脇役という考えているところも少なくありません。そうした環境では、私の知識と経験をお客様にお伝えすることができないでしょう。でも現在の会社はお酒がメインです。多彩なラインナップを揃えた店で、日本酒の良さをお客様にご紹介できるのが嬉しいですね。これからはお酒だけでなく陶器の販売も頑張っていきたいと考えています。

お店ではどういったお酒を取り扱っているのですか。
常にワインは300種、日本酒は80種以上取り揃え、マニアやコレクターを唸らせるような商品も扱っています。一般の小売店で販売しているお酒では、満足できないお客様は是非いらしてください。日本酒は季節商品を取り揃えていて希少な商品や、日本国内では完売している商品もあります。お酒の品質を保つために、店内
は常に20℃以下にキープ。私達の店は、香港の酒の小売店では2店舗しか持っていない、お酒の品質が保たれていることを保証する証明書も持っているのですよ。
店ではお酒をその場でテイスティングすることも可能です。その場で買って開封していただける軽いおつまみも用意していますので食べながら自分に合うお酒を探すことができます。

 

日本酒の利き師として香港で活躍する小川さん

 

お仕事で苦労されていることはありますか。
日本語から広東語や英語に訳すとき、対応する言葉がない場合どう伝えるか…。これにはいつも頭を悩ませています。例えば「まろやか」「柔らかい」「切れのある」といった表現が難しいですね。また日本料理店で働いていた時とは明らかに客層が違い、お酒のマニアといった感じのお客様が多いので、日々勉強です。そうしないとお酒に詳しいお客様の鋭い質問に答えられなくなります。でも、そういった方々が、好きになってくれそうなお酒や求めているお酒を読み取ってご案内するのも、この仕事の醍醐味です。

最近は日本酒が海外のメディアでも取り上げられることが多いですね。
これをブームで終わらせたくないですよね。日本酒の奥深さを理解してもらえば世界中の方にもっと日本酒を愛してもらえると日々感じています。私達は日本酒の歴史や製造方法、味を知っているプロフェッショナルです。日本酒の海外での認知度と地位を底上げするための情報発信や活動を展開していきいですね。

休日はどのように過ごしているのですか。
主人も私も飲食関係の仕事についているせいか、飲むのも食べるのも大好き。特に2人で時間が取れる日曜日の夜などは、美味しい料理が食べられる「植原」、「鮨魯山」、「WAGYU TAKUMI」などのレストランに行くことが多いですね。天気の良い日は散歩に出かけてリフレッシュ。ただ香港はビルが林立していて、太陽も十分に見えない場所なので気が滅入ることもあります。そんな時は少し遠出して空が広
がる島へ。気分転換になります。
候補5 小川様 お写真(ご主人と①)
休日においしい食事は欠かせない

候補6 小川様 お写真(ご主人と②)
主人とは大の仲良し。休日はいつも一緒に過ごす

候補4 小川様 Private pic
休日は友人とリフレッシュ

香港で働く女性たちにメッセージをお願いいたします。
私がアドバイスできる立場ではないのですが、折角の機会なので一言…。正直どこへ行っても何をやっても大変な時は大変。大変の種類が違うだけです。せっかく香港というエキサイティングな場所にいるのですから、大変なことに向き合いつつも、楽しい部分に目を向けて香港生活を満喫してくださいね。そんな中で、お酒が必要になったら是非私達のお店を訪れてください。きっと素敵な出会いがあると思います。

小川真理子(おがわまりこ)さん
PILLARIWINE勤務・利き酒師
香港在住7年。セントラル(中環)にあるワインと日本酒の専門店「PILLARIWINE」
に勤務。利き酒師として日々日本酒の魅力を伝えている。両親が日本酒好きで、幼い頃から日本酒に囲まれた生活を送っていた。小川さんも日本酒好きで、日本酒への造詣も深い。大学院を卒業しており文学も嗜む。

PILLARIWINE
住所:Unit A, 2/F., Pottinger House, 26 Pottinger St., Central
電話:(852)2851-7880
ウェブ:http://www.pillariwine.com

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