中国人事労務「解雇シナリオの策定」インテリジェンス

2013/12/23

中国人事労務のエッセンス

第44回「労働関係処理のポイント(2)」

前回は「労働関係処理のポイント(1)」と称し、解雇を検討・実行する際に必要な基本プロセス、およびそのファーストステップである会社方針の確定についてご説明しました。今回は具体的な解雇シナリオの策定など、それ以降のプロセスについてご案内します。

■解雇シナリオの策定

会社方針が定まれば、次に具体的な解雇シナリオを策定していきます。
1.基本ストーリーの作成、具体的に解雇をどのように進めるのかなどの解雇プロセスを確定し、従業員に対しどのような話を展開するのかについてストーリーを描いていく必要があります。対象となる従業員の特性を十分に把握することにより、従業員の反応を事前に予測することなどがポイントとなります。
2.役割分担の明確化、説明者の選定など、誰が何をどのように行うのかを明確にします。
3.通知場所・日時の確定、いつどこでどのタイミングで説明を行うかなどを確定します。
4.想定される質問の予測、想定問答の作成、説明後に想定される従業員からの質問や、それらに対する回答例を事前作成します。
5.緊急事態発生時の対応想定、ケースによっては暴力行為、情報遺棄・漏えい行為、中傷メールの送付なども想定されます。その際にどのような対応を採るのかについて、事前に思考を通しておくことも重要です。

以上のように、考え得るあらゆる事態について事前にシミュレーションを行い、後手に回らないよう、十分な準備を行うことが肝要です。

■必要書類の準備

次に、解雇スキームに沿った書類を事前準備します。
<労働契約解除>
●協議解除→労働契約解除協議書、労働契約解除証明書、費用精算書、など
●即時解除、会社都合解除、整理解雇→労働契約解除通知書、労働契約解除証明書、費用精算書、など
<労働契約終了>
●労働契約終了通知書、労働契約終了証明書、費用精算書などこのほか、経済補償金の支払いが必要なケースでは、法律に従い、事前に経済補償金を計算しておきます。また、当月賃金や賞与、未消化の年次有給休暇賃金などの費用精算についても法律に従い、事前に計算しておきます。

■解雇の実行

日頃のマネジメント・信頼関係が問われますが、ゼロトラブルはほぼないと認識して望むべきと言えます。ここでは事前に取り決めたシナリオに沿って説明を進めていき、一旦決定した方針・軸をブラさないことがポイントです。感情的な話になり、あるいは悪態をつかれたり、高圧的な態度を取られたりするなど、非常に厳しい場面も想定されますが、基準をブラしてしまうと、そこに隙が生まれ、結果言いなりにならざるを得ない状況も想定されます。また、感情を注入しすぎることも良くないケースがあります。一旦決定した以上、認められないものは認められないといった毅然とした態度を示し、粛々と進めていくことがポイントになります。緊急事態が発生した際も、事前決定しておいた対応策を確実に実行に移すことが重要です。

■他の社員へのフォロー

解雇が終わった後、残る社員へのフォローも重要です。同僚を失うことでモチベーションが一時的に低下することも予想されますが、一同を集めて今後のビジョンや方針を示したりすることは非常に大きな意味を持ちます。

そして解雇に至った経緯を振り返り、会社側の新たな取り組みなどを検討することが必要と言えます。整理解雇や会社閉鎖などは、その原因についてコントロールできないにせよ、後からその場面を振り返り、うまくいった点やうまく行かなかった点について検証を行い、グループ内にそのノウハウを蓄積させていくことが重要です。また、個別の解雇の場合も、なぜ解雇しなければならない状況に至ったのか、なぜうまくいかなかったのかを振り返り、今後のノウハウにすると同時に、管理者の評価フィードバックの頻度やレベル、日常のマネジメント、そもそも採用などのエントリーマネジメントに問題は無かったかどうかなどの検証を行うことも必要と言えます。次回からは具体的な解雇事例についてご案内します。

北尾直樹総経理

北尾直樹 インテリジェンスアンカーコンサルティング深セン 総経理
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