Le’coeur Hair Salon(ル・クール)長野真純さんにインタビュー

2014/12/02

自由が一番!こころという名の美容室で育む笑顔と幸せの連鎖

ほどよく肩の力が抜けていて自然体――
今回紹介する“KEY WOMAN”は、そんな言葉がしっくりとくる魅力的な女性。
コーズウェイベイ(銅鑼湾)にヘアサロン「ル・クール」を構える長野真純さんは、香港人の夫と1歳の息子・頌弘(おとひろ)君の育児真っ最中!

Le’coeur Hair Salon オーナー
長野真純さん
インタビュー

長野真純さん

2003年12月、大阪のヘアサロン勤務時代に旅行で訪れた香港。新旧入り乱れた建物が林立する町並みを行き交う、エネルギーに満ち溢れた人々。ビルの肌に揺らめく洗濯物。大阪にも似たパワフルな街に魅せられ、それから1年半の間に6回も香港を訪れた。

「6回目に来た時には面接のためです。大阪の美容室には辞めると伝えていました。」

好奇心旺盛でお調子者だったという長野さんは三重県出身。幼い頃から母が営む美容室で過ごし、その働く姿に憧れて自然と自分も美容師になろうと考えるようになった。そして地元の高校を卒業後、かつて母の通った大阪の美容専門学校へ進んだ。

お調子者な少女ですか。何かエピソードはありますか?

――当時はまだレザーカット(かみそりによる調髪)の時代で「絶対に触ったらダメ」と言われていたのに触っちゃうんですよね。それで指を切っちゃって(笑)。あの時の青ざめた母の顔は今でも覚えています(笑)。その他にも、どうしても自分の髪を切ってもらいたくて泣いてお願いして予約のお客さんの順番を取っちゃったりとか(笑)。

ははは(笑)。思い立ったら必ず実行しちゃうわけですね。

――そうですね。マイペースなんです。縛られるのが嫌いで(笑)。30歳の時に以前旅行したフランスで働きたいと思ったことがあって、ワーキングホリデーのビザを申請したんですよ。30歳までという年齢制限があることも知らずに(笑)。結局フランス行きは諦めて、香港旅行に変更したんです。

すごい!まさに運命の分かれ道ですね。やはり海外で働きたいという気持ちが強かったんですね。

――若干ですけどね(笑)。「(海外で)挑戦したいなあ」とは思っていました。

それから1年半後に香港の日系サロンの面接を受けるわけですね。ご両親は心配されたんじゃないですか?

―父はいつも私のやることをお遠目からそっと見ていてくれる人なんですけど、母は反対していましたね。「言葉もできないのに、病気でもしたらどうするの!?」と言われて、「私、もう面接に行くって決めたから!」と言って押し切りました。それでも面接に向かうその日には「行くんだったら応援するから面接が通ったらしっかりとやりなさい。」と賛成してくれました。最後の最後で(笑)。

お母さんは、自分で独立してお店をやっているだけあってドッシリとしていますね。

――そうですね。日本でのアシスタント時代に仕事を辞めたくて、仮病を使って休んだことがありました。「今から帰るから実家の最寄り駅まで迎えに来てほしい」と電話したら何も聞かずに「わかった。」と一言だけ言って母は、電話を切りました。迎えに来てくれた時に「実は仕事を辞めようかと思っているんだよねえ。」と言ったんです。それを聞いた母は、「今日は家には連れて帰られへん。ご飯食べる?」と言って近くの喫茶店に連れて行ってくれました。

「辞めたい時にはすぐに辞められるから、とりあえず限界ギリギリまで頑張りなさい。1回逃げたら人生何にでも逃げ続けることになる。」辛いことがあるといつもその言葉が浮かんできます。

すごい言葉ですね。説得力があるというか。パワーがありますね。

――“逃げたら負け”という言葉はいつでも頭の中にあります。香港に来たばかりの時もよく思い返していました。
2005年12月から香港の日系サロンで働き、2011年8月に長野さんは独立した。幼い頃から美容院を経営していた母の背中を見てきたこともあり「いつかは独立できたらいいな」と思っていた彼女の肩を押してくれたのは、母と香港人の夫だった。「もし独立する気があるのなら1日でも早いほうが良い。」と母は言ってくれ、店舗の内装から電気水道工事まで友人を集めて全面的にサポートしてくれたのは夫だった。

頼もしいですね。やはり香港人ならではの独立志向があるのでしょうね。

――そうかも知れません。日本人みたいにダラダラやらずにダメだと思ったらスパッとやめるフットワークの良さがありますね。彼もビジネスをしているんです。出会いも面白いんですよ。彼は、両親が香港に来るときにアテンドをしてくれていた1人で、その時に母親が気に入って口説いたんです。「うちの娘はどう?」って。それでお付き合いすることになったんです(笑)。

参りました(笑)。「ル・クール」というお店の名前ですが、「こころ」という意味ですよね。何か思い入れがあるのですか?

――実家の母の美容室からもらったんです。自分が美容師を志したきっかけでもありましたし、今は妹夫婦と母でやっているので一緒の名前にしたら素敵だなと思って(笑)。初めはアシスタントや香港人スタッフを探すのに苦労しました。仕事に対する気持ちなど食い違う部分が多くて、人間不信になるくらいに大変でしたね。今は、皆を信頼しています。息子が生まれてからは、3ヶ月の産休も取りましたし、今でも育児であまりお店に出られないのにサポートしてくれてものすごく感謝しています。

良いスタッフに恵まれるために何か工夫している事はありましたか?

――オープン当初は、「自分が経営者なんだから」という気負いもありましたし、周りからも「あなたはオーナーなんだから」というプレッシャーもあって態度だけで“中身”がついていっていなかったと思います。今は、“皆と同じ目線でいること”を心がけています。オーナーである前にひとりのスタイリストだという気持ちを大切にしていますね。

店内で行っていたインタビューの間も、明るく活き活きとしたスタッフたちの姿が印象的だった。長野さんを始め一人ひとりが自然体で、居心地の良い空間がそこにある。“こころ”と名付けられたそのサロンには、繋がりの連鎖のようなものを感じた。

長野真純の仕事の様子

最後に質問させてください。仕事と育児の両立は大変だと思いますが、息子さんにはどんな大人になって欲しいですか?
――人の立場に立って物事を考えられる人間になって欲しいですね。海外に出たいと言ったら賛成します。中学生くらいになって、行けるのならバックパックを背負って世界中を歩いて今の自分の幸せや、困っている人たちの境遇を見て、早いうちから色んな世界を知って欲しいなと思っています。とか言って全然私が子離れできなかったりして(笑)。

長野真純と子供  長野真純とお子様

長野真純(ながのますみ)さんプロフィール
Le’coeur Hair Salon オーナー。三重県出身。2005年から香港の日系サロンに勤務。2011年に「ル・クール」をオープン。現在、1歳になる息子・頌弘(おとひろ)君の育児の真っ最中。休日は、公園やプレイルームで息子と過ごす。誰とでも仲良くなれる好奇心旺盛な頌弘君に「もう親離れ!?」と少し寂しくなることもあるのだとか。

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