「最近の中国法改正③」ワイズコンサルティング

2014/07/15

最近の中国法改正③

 

《商務部 外資審査管理業務の改善に関する通達》

商務部は、2014月6月17日付けで『外資審査管理業務の改善に関する通達』、以下『通達』)を公布しました。

中国の資本金制度改革に関しては、全国人民代表大会常務委員会が2013年12月28日付けで公布した『改正会社法』により、最低資本金額・資本金の初回出資額・現金出資比率・出資期限等の規定が廃止され、また、国務院が2013年2月19日付けで公布した『一部の行政法規の廃止および修正に関する決定』による『会社登記管理条例』『外資企業法実施細則』等の改正及び『中外合資企業の合弁双方による出資に係る若干規定』等の廃止により、外資企業における最低資本金額・資本金の初回出資額・現金出資比率・出資期限等の規定も一部を除き廃止されておりましたが、実務上の運用に関しては不明確な部分が多く残っておりました。

当該『通達』は、外資企業の設立に関し改正後の上記規定を遵守するように、外資企業の設立審査・認可部門である商務部が各級の主管商務部門に対して求めているものであり、今後は外資企業の設立も上記規定に基づき運用されることが期待されます。

1.内容

(1)最低資本金の撤廃(『通達』第2条)

特定業界以外の会社における最低登録資本金の制限が取り消される。

(2)設立時出資に係る規制の撤廃(『通達』第1条、第3条)

初回出資比率、現物出資比率および出資期限に対する制限が取り消され、会社は定款に登録資本金・出資方法・出資期限等を記載し、投資者は当該定款規定に基づき出資を履行すれば良い。

(3)資本金払込状況の検査(『通達』第3条、第8条、第9条)一部制限業種(商業銀行、金融リース会社、外資保険会社等)以外の会社において、登録資本金の払込状況が審査されない。

実際の出資後、会社は『会社法』等の要求に基き投資家に出資証明書を発行し、出資証明書を発行した後、30日以内に公章を捺印した出資証明書の副本写しを所在地の商務主管部門に報告し、合わせて出資内容と関連する証明資料(現金出資の場合は、銀行の入金リスト及び通知書等等)を提出しなければならない。

(4)投資総額(『通達』第5条)

会社の登録資本金および投資総額の比率は、『中外合資経営企業の登録資本金と投資総額の比率に関する暫定規定』およびその他の現行有効規定に合致する必要がある。

(5)2014年3月1日以前に批准した外商投資事項に係る取扱い(『通達』第4条)

2014年3月以前に批准した外商投資事項について、投資家は引き続き元の契約、定款の約定に基づき出資義務を履行しなければならないが、変更する必要がある場合、投資家は商務主管部門に申請を提出することができる。

なお、『会社登記管理条例』の改正により、払込資本金は工商行政管理局の登記事項ではなくなったものの、今後会社は登録資本金の実際の払込状況について企業信用情報システムを通じて開示が求められる見通しとなっております(企業情報開示条例(公開草案)第11条)。

2.総括

この度の『通達』の公布により、外資企業の設立に関し、今後は設立時における出資について下記のような柔軟な運用が可能となることが期待されます。(1)会社の経営規模や事業内容等実情に応じて、従来認められていなかった登録資本金により会社を設立する。

(2)会社の将来的な資金繰りの観点から、登録資本金を高めに設定し、実際の払込みについては長期(設立後2年長)に設定する。

ワイズコンサルティング 山本圭一郎

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