内装業者が語る「撤退・縮小移転」時の留意点

2023/01/11

Space4

Vol.2
今日は、原状回復工事について、皆様から良く頂くご質問についてご説明したいと思います。

原状回復とは、入居時に設置したお部屋の壁撤去、壁紙、カーペット、タイルなどの表面仕上げの撤去、天井やライティングの原状回復、看板の撤去など、お客様が入られた時に施された内装の状態を、元々あった改装前の状態に戻すことです。

この内装撤去以外に、ビルの指定業者による工事があり、空調設備、消防設備、上下水工事などの原状回復があります。(消防設備工事の指定業者はほとんどのビルにありますが、空調や上下水工事の指定会社がビルになく、お客様ご自身で手配された場合は、内装会社に依頼し原状回復します。)

入居時に何もいじっていない、物件の引き渡しを受けた時と全く同じ状態という事であれば、工事は不要かと思いますが、ビルによってはエアコンのクリーニングをして返却するという条件がある所もあります。
原状回復の条件は、それぞれ大きく異なりますので、全ての詳細をきちんと確認してみて下さい。
また、個人の大家さんが所有している物件は上記に当てはまらず、居抜きで入居したい次のテナントが居れば、家具や内装も含めそのままの状態で退去できる物件もあります。いずれにしても、ご契約内容を良く確認してみてください。

次に、多く寄せられる質問をいくつか抜粋してご説明します。

1.消防設備(スプリンクラー)について
質問:内装をした際に、レイアウトに合わせてスプリンクラーを増設したのですが、撤去時になぜまた原状回復しなければならないのですか?
回答:スプリンクラーは、各スプリンクラーヘッドから撥水される水が、全エリアをカバーできるよう、天井からの高さ、壁からの位置、スプリンクラー同士の距離など、全てが綿密に計算され位置が決められています。Photo 1 原状回復でお部屋の壁を撤去した後は、スプリンクラーはその何も部屋のない状態に合わせた数量と位置に戻さなければなりません。
また、オープンシーリングと吊天井の場合も、天井高が変わりますので、その高さにあった位置と数量にしなければなりません。

2.エントランスドアの原状回復について
質問:新しくガラスの耐火ドアに交換したのですが、元々あった木製ドアを再設置しなければならないのですか?
回答:こちらもご契約内容、管理会社の規定や交渉次第で色々なケースがありますが、もし、管理会社の規定にあれば、そこに定められたサイズ、色、耐火条件のドアを再設置しなければなりません。
過去にあった例で、両開きの耐火ガラスドアを設置されたお客様が退去時に、ガラスドアを撤去し、木製の1時間耐火ドアを再設置しなければなりませんでした。
そのビル規定の木製ドアは、木目パターンや色味が大変特殊な物でした。
木目パターンは自然のものですので、一つたりとも同じ物はありません。工場からサンプルをいくつも取り寄せ、パターンも色味も一番近い物を選んでも、実際には全く同じ物は作れません。管理会社規定のその色味と若干違っているだけで認めてもらえず、再度作り直しという事もありました。
入口ドアに関しては、ほとんどのビルに規定があり、それに忠実に従わなければなりません。
耐火ドアは、きちんとテスト合格し、サティフィケートも発行されるので、費用も大変かかります。
もし、倉庫やオフィス内などにスペースを確保できるのであれば、元々あった木製ドアを傷がつかないようにカバーし、退去の日まで保管しておき、再設置するというのも一つの手です。Photo 2

3.空調設備について
質問:入居時に新たにエアコンを設置したのに、これも撤去しなければならないのですか?
回答:内装の原状回復に伴い、この空調設備も元に戻すケースがほとんどです。
スケルトン状態では、ファンコイルユニット、吹き出し口、吸い込み口、サーモスタットなど、最低限の数量しか付いていませんので、その状態で受け渡しを受けていれば、退去時にはその状態に戻し返却する事が多いです。これも契約条件やオーナーさん、大家さん次第で大きく変わりますので、きちんと条件を確認してください。
Aグレードのビルでは、原状回復にかかる費用も大変高額になります。
オフィスのお引越しをお考えの場合、新規にかかる内装費用、引越費用に加えて、何年後かに来る退去時の原状回復費用の概算も出しておけば、いざという時に準備がしやすいかもしれません。Photo 3 内装会社は、その辺りも含めて色々とお答えできるかと思いますので、一度ご相談されるとよろしいかと思います。その他、ご質問等ございましたら、どうぞお気軽にご連絡くださいませ。


Vol.1
今日は、オフィスや店舗の賃貸契約終了時や移転時に発生する「原状回復工事」についてお話します。
香港の賃貸物件は、ほとんどの場合、その契約終了日までに原状回復を完了してオーナーへ返却します。
では、原状回復工事について、どのような準備や確認が必要でしょうか?

⒈ 原状回復工事の内容確認
賃貸契約の内容を確認する。
ビル管理会社の規定を確認する。

⒉ 指定業者による工事と、それ以外の業者による工事の範囲を確認
空調設備、消防設備、パントリーやトイレなどの設置に伴う上下水工事などは、ほとんどの場合、ビルの指定業者が担いますが、既存内装の撤去は外部内装業者を手配するなど、そのビルによってそれぞれの規定があります。space3

⒊ 原状回復工事に必要な期間の確認
内装会社に工事期間を確認すれば、大体の工期がわかります。ビル指定業者による作業期間も含め、余裕を持って見ておくと良いでしょう。

⒋ 退去日に合わせたスケジュール計画
事務所移転をする場合は、既存事務所の退去日から逆算して、原状回復工事に要する期間、引越、新規事務所の新規内装工事に要する期間を考え、新しい事務所探しの開始日や家賃交渉期間などを考慮し計画をたてると良いでしょう。

⒌ ビル工事規定書(Fitting-out Guide)の確認
指定業者の有無、工事可能な時間帯、曜日等、そのビルの工事規定の詳細が確認できます。(騒音、振動、臭いの発生する作業などは、就業時間外は禁止というビルも多い)

⒍ 現場調査の実施
既存内装の撤去を外部内装会社に依頼しなければならない場合は、内装会社に一度現場を見てもらい、工事期間や見積依頼をします。

⒎ 管理会社、指定業者との詳細打ち合わせと見積依頼
管理会社(もしくはオーナー)との原状回復の詳細確認
指定業者へ見積作成依頼

既存内装撤去を内装業者に相談・依頼する際には、管理会社、指定業者との現場打ち合わせや見積依頼など、上記2番~7番を一括してやってもらえるでしょう。

では、既存内装の撤去、原状回復工事には、どのような作業が含まれるのでしょうか?
◆入居時に設置した部屋の壁の撤去
◆天井の原状回復
◆床の原状回復
◆パントリーやトイレの撤去
◆造作家具の撤去
◆ルースファーニチャーの撤去
◆電話電気ケーブル、導管撤去
◆看板の撤去
◆ライティングの原状回復(元々ついているライトボックスの位置、数量に戻す)
◆壁の再塗装   などspace2

設備の原状回復とはどのようなものでしょうか?
◆エアコンのパイプや吹き出し口などの原状回復
◆消防設備(スプリンクラーの位置など)の原状回復
◆上下水道の原状回復など

その他
◆エントランスドアの原状回復
◆ロゴボードの撤去
◆電気分電盤の位置やメインケーブルの撤去(などがある場合もあります)

注意する点
賃貸契約途中で、管理会社が変わるということも香港ではよくあります。管理会社が変われば、当然、規定書の内容も変わり、今まで謳われていなかった項目が突如できたりします。
基本的には、契約書が一番効力のあるものですので、先ずは契約内容を確認しましょう。

以前借りていたテナントが作った傷や釘穴も、今現在契約しているテナントの責任ということで、お客様の費用で原状回復をさせられたケースもありました。

そのようなことが起きない為にも、賃貸物件の引き受け時には、内装業者に同席してもらい、窓ガラス、窓枠、窓台の傷をはじめ、その時の現場の状態を細かくチェックし記録を残し、全者で共有することをお勧めします。

次期家賃交渉の段階では、まだ退去をふせておきたいというお客様も多くいらっしゃいます。
その時点では、管理会社へ詳細確認や、指定業者へ見積依頼等が難しいでしょう。その場合は、内装会社へ相談してみてください。ビルグレード、面積、内装状態、入居時の状態から、大体の数字を出してもらうことが可能かと思います。

新しいオフィスの賃貸契約開始をギリギリにしてしまったが為に、原状回復工事が間に合わず、結局、既存のオフィスの賃貸を延長し、追加費用を払わなければならなくなったケースもあります。

今後の移転計画を立てるには、早めの準備と確認をされるのがよろしいかと思います。まずは、内装会社に相談してみはいかがしょうか?

Space1竹野浩子 自己紹介
2005年より、現在のスペースクリエーションを経営。香港内の移転や、進出に伴う総合プランニング、デザイン&レイアウト作成、内装工事、引越、家具の販売等をお手伝いしています。
大好きな香港生活も早や20年を超え、公私共々エンジョイしています。どんなことでも構いませんので、先ずはお気軽にご相談下さい!


Space Creation Co., Ltd.
Unit B6, 12/F., Block B, Hong Kong Industrial Ctr.,
489-491 Castle Peak Rd., Lai Chi Kok, Kln., Hong Kong
Tel:(852)3102-1250 / (852)3187-7138
www.spacecreation-hk.com

Pocket
LINEで送る