目から鱗の中国法律事情 Vol.71

2022/09/07

中国の法律を解り易く解説。

法律を知れば見えて来るこの国のコト。

 

中国で新制定された「先物およびデリバティブ法」 その4

前回までで、今年8月1日に施行された中国の「先物およびデリバティブ法」(中国語原文は「期貨和衍生品法」)の定義を見終わって、その規制内容の一部を見ました。今回もその続きです。

「先物およびデリバティブ法」上の規制(続き)
先物取引などはうまい使い方をすれば、マネーロンダリングの手段となります。そのため、「先物およびデリバティブ法」第18条第1項では、先物契約は実名で行わなければならず、身分証明書をもって口座を開設しなければならないと規定しています。さらに、「先物およびデリバティブ法」上の「先物契約」は、「あらかじめ決められた日に、決められた価格で特定の商品を売買する契約」のうち、先物取引所で行われるものをいうと、前回説明しました。これを反映して「先物およびデリバティブ法」第19条は、「先物取引所で先物取引を行う場合、国務院の先物規制当局の規定に従った先物取引所の会員またはその他の参加者でなければならない」という規制もあります。先物取引を行うには、まず先物取引所の会員や参加者にならなければならないということですね。もっとも、先物取引に参加するには、保証金を拠出することも必要なので(第22条)、金銭の拠出なく簡単に参加できるわけではありません。
続いて「オプション契約」については、法律により設立された場所で、国務院によって授権されたもしくは国務院の先物監督管理機構の承認を経て、デリバティブ取引を行うことができると規定されています(第30条第1項)。このように、先物契約のように「先物取引所」と限定はされていませんが、「オプション契約」も、定められた場所でのみ行うことができるということになっています。人の利害に大きな影響を与えるため、誰でもどこでも自由に「オプション取引」を締結できるわけではないということです。

スクリーンショット (1782)「先物およびデリバティブ法」上の期間満了時の取扱い
「先物契約」とは、先物取引所で締結される、あらかじめ決められた日に、決められた価格で特定の商品を売買する契約のことをいうと本シリーズ第2回でも説明しました。これを反映して「先物およびデリバティブ法」第44条第1項は「先物契約に規定する時期が到来した場合、取引者は現物の引き渡しまたは現金の交付をしなければならず、そのときに契約は終了するものとする」と規定されています。これに対して、「期限到来時に売買をする権利を有する」に過ぎないオプション契約の場合は、「規定する時期に、買い手は約定した価格で目的物を購入もしくは売却する、または約定に従い現金で差額を決済する権利を有し、契約の売り手は約定により対応する義務を負うものとする。標準オプション契約の行使は、オプション決算機構により行うものとする」と規定されています(第44条第2項)。(続く)


高橋孝治〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学 アジア地域研究所 特任研究員
北京にある中国政法大学博士課程修了(法学博士)、国会議員政策担当秘書有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格者)。中国法研究の傍ら講演活動などもしている。韓国・檀国大学校日本研究所 海外研究諮問委員や非認可の市民大学「御祓川大学」の教授でもある。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』、『中国社会の法社会学』他多数。FM西東京 84.2MHz日曜20時~の「Future×Link Radio Access」で毎月1、2週目にラジオパーソナリティもしている。Twitterは@koji_xiaozhi

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