尹弁護士が解説!中国法務速報 Vol.65

2022/06/15

競業避止義務に起因する経済的補償

Q.労使双方間で締結した競業避止条項において経済的補償について明確に約定していない場合、当該条項は有効と認定されますか? 経済的補償の支払基準があれば教えてください。
A.労使双方間で経済的補償の支払基準を明確に定めていないことのみをもって、直ちに競業避止条項を無効と認定することはできません。経済的補償については、地方によってその支給基準が異なりますので、労使双方間で約定する際は注意が必要です。

経済的補償の支給基準
労働紛争審理解釈(四→失効)が公布されるまでは、競業避止義務 に起因する経済的補償に関し、全国一律の支払基準はなく、地方によって異なる規定が実施されていました。
労働紛争審理解釈(2020)第36条第1項によれば、当事者が労働契約または秘密保持契約において競業避止義務を約定したが、労働契約の解除または終了後の労働者に対する経済的補償を約定せず、労働者が競業避止義務を履行し、使用者に対し労働者の労働契約の解除または終了前の12ヶ月の月額平均賃金の30%を基準に月毎に経済的補償を支払うよう要求した場合、人民法院はこれを支持しなけ ればなりません。
また、前記の月額平均賃金の30%が、労働契約の履行地における最低賃金基準を下回る場合は、労働契約の履行地の最低賃金基準に従い支払う必要があります(同2項)。

経済的補償の支給基準を明確に約定していない場合の競業避止条項の有効性
労使双方間の労働契約または秘密保持協議などにおいて競業避止条項を約定したが、経済的補償の支給あるいは具体的な支給基準について約定していない場合、労使双方は労働関係の存続期間中または労働契約を解除、終了する際に、経済的補償の支給基準について協議を行うことができます。
労使双方間で協議を経ても合意に達することができない場合は、使用者所在地の関連規定及び/または労働紛争審理解釈の関連規定により経済的補償の支給基準を確定することが可能です。
つまり、労使双方間の競業避止についての意思が一致しているため、競業避止条項は労使双方に対して依然として拘束力を有すると認定すべきであり、労使双方間で締結した競業避止条項において、経済的補償の支払基準を明確に定めていないことのみをもって、直ちに当該競業避止条項を無効と認定することはできません。

在職期間中の月額賃金に経済的補償が含まれるという約定の有効性
実務上、労使双方間で「労働者の在職期間中の月額賃金に競業避止の経済的補償が含まれる」という約定をすることがみられますが、当該約定は労働契約法第23条第2項に定める「労働契約の解除または終了後(すなわち離職後)、競業避止期間内において月毎に労働者に対し経済的補償を支払う」という規定に違反するとして、無効とさ れる可能性が高いので、このような約定を労使間で交わすことはお 勧めできません。
前記の約定が無効と判断された場合、使用者は労働者が離職した後の競業避止期間において、依然として競業避止の経済的補償を支払う義務があります。
安全なやり方としては、労使双方間で競業避止条項を締結する際、関連規定の最低支払基準を下回らない限度で、競業避止期間中の補償金の計算と支払方法、競業避止の期間、中途解約条項等について具体的かつ明確に約定することが望まれます。


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尹秀鍾 Yin Xiuzhong尹秀鍾 Yin Xiuzhong
卓建律師事務所深圳本部 パートナー弁護士、法学博士 (慶應義塾大学)

【主な業務領域】
外商投資、移転/撤退、知財侵害、紛争解決

 

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