目から鱗の中国法律事情 Vol.68

2022/06/08

中国の法律を解り易く解説。

法律を知れば見えて来るこの国のコト。

 

中国で新制定された「先物およびデリバティブ法」 その1

中国では、2022年4月20日に「先物およびデリバティブ法」(中国語原文は「期貨和衍生品法」)が制定され公布されました(主席令第111号。今年8月1日施行予定)。「先物およびデリバティブ」とは、金融商品のことで、日本では「先物取引」、「デリバティブ取引」、「スワップ取引」などと呼ばれるものです。

数年連続世界一の中国市場
先物およびデリバティブ法制定時には、以下のように言われました。
中国では30年にわたる経済発展により、すでに世界でも重要なデリバティブ市場となっている。2021年には取引件数は75億1,400万件、取引額581兆2,000億人民元に到達し、中国のデリバティブ取引の規模はここ数年連続して世界一となっている。しかし、先物市場は、リスク管理が必要な市場でもあり、取引システム上のリスクを発生させないことが重要である。このようなこれまでの法システムの欠陥を補完するために「先物およびデリバティブ法」を制定する。
中国のデリバティブ取引が数年連続で世界一になっているにもかかわらず、やっとその市場を管理する法律ができたというのは制定がかなり遅いようにも感じます。しかし、いずれにしても、世界一のデリバティブ市場を規制する法律が新たに制定されたのですから、世界中の投資家が注目している法律と言えます。今回のシリーズでは、中国の「先物およびデリバティブ法」を見ていきましょう。

先物およびデリバティブとは?スクリーンショット (1303)
「先物およびデリバティブ法」は、当然に先物取引やデリバティブ取引を規制するための法律です。それでは、先物取引やデリバティブ取引とはどのようなものを言うのでしょうか? まずは、規制の対象となる取引の形態を見ていきましょう。
「先物およびデリバティブ法」第3条には、この法律で用いる用語の定義規定が置かれています。それによれば、「先物取引」とは、先物契約または標準オプション契約を主として行う取引をいいます(第3条第1項)。そして、「デリバティブ取引」とは、スワップ契約、先渡契約、非標準オプション契約およびこれらの組み合わせた取引で先物取引以外の取引をいいます。これだけ読んでもよく分からないので、解説が必要ですが、残念ながら今回はもう残り文字数がないようです。この用語の解説は次回に続きます。


高橋孝治〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学 アジア地域研究所 特任研究員
中国政法大学博士課程修了(法学博士)。中国法の研究をしつつ、執筆や講演も行っている。行政書士有資格者、特定社労士有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』(労働調査会)、中国ビジネス法務にも言及した『中国社会の法社会学』(明石書店)他 多数。詳しくは「高橋孝治 中国」でネットを検索!

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