尹弁護士が解説!中国法務速報 Vol.61

2022/04/20

コロナ防疫関連の労働法律問題Q&A②

Q11:操業を中断した期間中に労働者が確定診断を受けて隔離治療を受けていますが、賃金はどのように支払いますか?
A:労働者が防疫規定に違反して確定診断を受けた場合を除き、使用者は通常の勤務時間に従い隔離治療期間または医学的観察期間と政府による隔離治療実施期間の給与を支給しなければなりません。

Q12:防疫保障任務を担当する使用者で、労働者に合理的に労働時間を延長するよう要求することはできますか?労働者はかかる要求を拒否できますか?
A:労働者は企業の要求を拒否することはできません。企業は、労働者が拒否し、かつ解雇の条件を満たした場合、その労働者を解雇することができます。広東省高級人民法院、広東省人力資源社会保障庁が発表した「コロナ関連の労働人事争議事件に関する問題の解答」第8条の規定に基づき、防疫保障任務を引き受けた企業が労働者に対し合理的に勤務時間を延長するよう通知したが、労働者が正当な理由なく企業の要求通りに勤務時間を延長しない場合、これは労働契約を解除できる事由に該当します。企業は法律、労働契約の約定または社則に基づき労働契約を解除することができ、労働者が使用者に対し労働契約の解除による経済補償又は違法解約の賠償金を要求した場合、これは支持されません。

Q13:新型コロナウイルス感染症の影響で、企業は労働者の賃金支給を延期することができますか? 労働者は賃金の支給延期を理由に労働契約の解除及び経済補償を主張することができますか?
A:広東省高級人民法院、広東省人力資源社会保障庁が発表した「コロナ関連の労働人事争議事件に関する問題の解答」第12条によると、使用者が新型コロナウイルス感染症の影響で賃金支給を延期しなければならない場合、支給を延期することができますが、遅くとも30日を超えてはなりません。そうでなければ、労働者は賃金の支給延期を理由に労働契約を解除し、かつ経済補償金を主張することができます。

Q14:労働者が新型コロナウイルス感染症の確診判定を受けたり、密接接触者として隔離治療期間または医学的観察期間にある場合、医療期間として計上されますか?
A:医療期間に計上されません。新型コロナウイルス感染症は一般疾病とは異なり、隔離治療または医学的観察期間は政府による強制的な緊急措置期間に該当し、労働者が正常な労働を提供できないのは完全に健康上の理由によるものではありません。しかし、隔離治療期間が終わった後も、業務を停止して治療を続けなければならない場合は、医療期間に該当します。

Q15:新型コロナウイルス感染症の影響で、労働者が正常出勤できない場合、これを「業務不適任」評価の根拠にすることができますか?
A:「業務不適任」評価の根拠にすることができません。新型コロナウイルス感染症の影響で正常な出勤ができないのは、労働者の都合によるものではありません。しかし、労働者が防疫規定に違反したため隔離されたり、その他の強制措置を受けた場合、企業は社内規則制度や労働規律への違反として処理することができます。

Q16:職場への復帰条件を満たした後、労働者が在宅勤務を堅持または習慣化した場合、または職場で感染の危険があることを恐れて復帰を拒否した場合、企業はどのように対処すべきですか?これを理由に解雇することはできますか?
A:企業は雇用自主権を有しており、労働者は正当な理由なく企業の合理的な業務手配を拒否することができません。労働者が企業から復職通知を受けても職場復帰を拒む場合、企業は無断欠勤として処理することができます。労働者が社則や労働規律に重大な違反を犯した場合、企業は解雇措置を講じることができます。

Q17:労働者が職場の派遣を受けて防疫業務に従事して新型コロナウイルス感染症の確定診断を受けましたが、これは労働災害に該当しますか? 労働者がボランティアとして志願して前述の業務に従事し確定診断を受けた場合は?
A:労働者が職場から派遣されて新型コロナウイルス感染症の防疫業務に従事した場合、「労災保険条例」第14条に定める「勤務時間、勤務場所で業務上の原因により傷害を受けた場合」として労災認定事由に該当します。
「業務遂行により新型コロナウイルス感染症に感染した医療及び関係者の保障問題に関する通知」にも新型コロナウイルス感染症の予防及び治療業務において、医療及び関係者が業務遂行により新型コロナウイルス感染症に感染したり、新型コロナウイルス感染症により死亡した場合、労災として認定し、法により労災処遇を受けると規定されています。
労働者が自発的にボランティアとして活動に参加し確定診断を受けた場合は、「労災保険条例」第15条(2)の「緊急災害救助など国家利益、公共利益を守るための活動中に傷害を受けた」と認定され、法律により労災保険の待遇を受ける可能性があります。

Q18:労働者のコロナ感染が確定された場合、企業はこれを理由に職場復帰を拒否したり解雇できますか?
A:労働法第3条、伝染病防治法第16条の規定によると、労働者は平等に就業する権利を有し、如何なる職場又は個人も感染患者、病原保有者、感染疑いのある者を差別してはなりません。「人力資源社会保障部弁公庁の新型コロナ感染によるコロナ防疫措置期間における労働関係の適切な処理に関する通知」第1条にも、新種コロナウイルス感染患者、疑いのある患者、密接接触者は隔離治療期間または医学的観察期間および政府の隔離措置またはその他緊急措置により正常な労働を提供できない労働者に対しては企業がその期間中の賃金を支給しなければならず、労働契約法第40条、第41条に基づき労働契約を解除してはならないと規定されています。
したがって、労働者が完治したり(感染の)危険性が取り除かれた場合、企業は職場復帰を受け入れなければならず、労働契約を解除することができません。

Q19:企業はコロナの影響で生産経営が困難に陥った場合、全員の賃金を削減できますか?
A:可能ですが、労働者と合意を得る必要があります。労働契約法第35条によると、使用者は労働者と合意の上、労働契約に約定した内容を変更することができます。労働契約の変更は書面形式を取らなければなりません。労働報酬は労働契約の基本条項に該当するため、その変更は双方が合意の上、書面で行う必要があります。
「人力資源社会保障部弁公庁の新型コロナ感染によるコロナ防疫措置期間における労働関係の適切な処理に関する通知」第2条には、企業がコロナの影響により生産経営が困難な場合、労働者と合意の上、賃金調整、交代勤務、労働時間短縮などの方法で雇用を安定させ、できるだけ人員削減を実施しなかったり、人員削減の規模を最小化するよう規定されています。条件を満たしている企業は、規定に基づき雇用保障手当を受給することができます。
要するに、企業はコロナの影響で生産経営が困難に陥った場合、労働者と書面により変更合意をし、賃金を削減できます。

Q20:労働者が防疫規定に違反し、政府関連部署から罰せられましたが、企業はこれを理由に労働者を解雇できますか?
A:労働契約法第39条では、労働者が次の各号のいずれかに該当する場合、使用者が労働契約を解除することができると定めています。…(2)使用者の規則に重大な違反があった場合、(3)重大な職務怠慢、自己の利益のための不正行為により、使用者の利益に重大な損害をもたらした場合、…(6)法により刑事責任を問われた場合。
広東省高級人民法院、広東省人力資源社会保障庁が発表した「コロナ関連の労働人事争議事件に関する問題の解答」第11条は、労働者が政府の防疫規定に違反し、治療、医学的観察、医学的検査、隔離を拒否し、使用者の生産経営に影響を及ぼしたり、労働規律、使用者の規則制度に深刻に違反した場合、使用者が労働法第25条、または労働契約法第39条に基づき、労働契約を解除することができると規定しています。そのため、労働者がコロナ防疫規定に違反した場合、次のような可能性があります。
(1)労働者が防疫規定に違反して法により刑事責任を追及された場合、企業はこれを理由に労働者を解雇することができる。
(2)労働者が防疫規定に違反して治安拘留処分を受けて企業の労働規律又は社則に深刻に違反した場合、企業はこれを理由に労働者を解雇することができる。
(3)労働者が防疫規定に違反し、法に基づいて行政責任を追及され、企業の生産経営に影響を及ぼし、企業に重大な損害を及ぼした場合、企業はこれを理由に労働者を解雇することができる。
(4)その他の場合、企業による労働者解雇は法的根拠を欠き違法解除に該当する。


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尹秀鍾 Yin Xiuzhong尹秀鍾 Yin Xiuzhong
卓建律師事務所深圳本部 パートナー弁護士、法学博士 (慶應義塾大学)

【主な業務領域】
外商投資、移転/撤退、知財侵害、紛争解決

 

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